推測と経験不足と
YOH同窓会TIPS
ピッチャーとして上がった瑞樹は趣味でたまにキャッチボールをするくらいだが、ピッチャーも経験はない。
2035年1月17日 8回の表 2-2 ノーアウト満塁
第三小学校 校庭
□山田 百合
百合がベンチに戻ってきた。
その表情には何かを成し遂げたという満足感とまだまだやれたはずという2つの感情が混ざっていた。
「お疲れ。」
「うん…」
運動音痴の私は何と迎えていいかわからなかったから、そのまま蒼を迎え入れる。
私の隣にに座った蒼が力なく私の肩に頭を乗っけてくる。
「よく頑張った。靑井にもそれがとどいてるよ。」
「うん…」
私たちの様子は見ることが出来るのだろうが、実際に見られたかどうかは確かめる由がない。
でも、1つだけ私が確かめられたことがある。
「あの子、配信で元気そうだったよ。蒼のプレーすごかったって言ってた。」
そう、私は体力がある程度回復した後に靑井の配信に遊びに行っていた。
そうしたら、あの子は蒼のプレーがすごかった、とひたすらに連呼していた。
それをしった百合が私の左肩でくすっと笑ったのが分かった。
「それだったらよかった。」
そのあとに続く言葉を待っていたら、蒼は寝てしまったようだ。
本当にお疲れ様。
何が何でもマウンドに食らいつく様、靑井に勇気を与えたと思うし、何しろ自分が人間らしいっていうことを教えるいい機会だった思うよ。
◇
私はほかにも配信者側の情報収集を行っていた。
如何せん暇だったからそれくらいしかやることがなかったのだ。
まず、昨日の投票直前、向こうの動きによって人間が何人か明らかになっている。
「愛聖、アリス、ゆい、花菜、茶兎くん、靑井は配信者に割り当てられている」
つまり、この6人はこちらでは人狼(AI)であるということだ。
この事実は隠蔽されていないため、ほかのクラスメイトも知っている可能性があるが、野球の試合が終わった後にでも再告知しておこう。
…勇気が出ればの話だけど。
この6人の野球のプレーを見ていて何か違和感のあるところはあっただろうか。
強いて言うなら、初回の愛聖のファインプレーが気になる。愛聖はスポーツができるほうではあるけど、ゲームみたいな常人離れしていた動きをしていた、とかかな。
彼女の筋力とか考えればできなくもないけど、まったくもって練習していないのにあの動きができるかと言われたら微妙だ。
そう考えるとゆいも茶兎くんもバットにボールが当たりすぎだ。
2人とも野球は知っているけど、実際にやることは少ないはずだ。
そう考えると、、、
(AI側はその筋力の人がある程度野球をやっていたらこれくらい打つだろうという風に計算している…?)
ただ、ここまでは憶測にすぎない。
意外とみんな野球をやっていてそれを私とかがSNSで見逃しているだけの可能性もある。
というか意外とそういうのはできる、という意見もあるかもしれない。
私が違和感感じているだけで、意外とああいうプレーが簡単という意見があるかもしれない。
(そこは蒼が起きたら聞いてみようか…)
すぐにでも聞き出したい衝動と戦いつつ、今は蒼に休んでもらうことを優先する。
それくらい蒼は頑張った。自分と、もしかしたら自分よりも大切に感じているかもしれない靑井を守るために。




