メンブレ
YOH同窓会TIPS
宇都宮 愛聖配信予告
17:00~「春色 ヒカリ」デビュー!あなたの心に春風を!どうも!新人アイドルVTuberです!
2035年1月17日 16:15
茶兎の自室
□山口 茶兎
僕は割と今まで冷静に人生を過ごしてきたと思う。
なるべく感情に流されず、置かれた選択肢を十分に吟味する。
それは僕が志望校を決めた時も。
それは僕がアルバイト先を決めた時も。
それは僕が大学での部活を決めた時も。
常に自分にとってプラスかマイナスかっていうのを判断しながらやってきたつもりだった。
そこに感情が不随するということはあまりなかったように思える。
だから、今。
感情に支配されている状態は人生で初めてだった。
論理的に考えたら、配信をするべきだ。なぜなら、トップ層と100万以上の投げ銭の差があるのだから。
そして、国からの援助が止まっているのだから。
このままでは、僕に待ち受けるのは死あるのみ。
だから、配信しなくても何かしらの策を考えるべきだろう。
ただ、僕が現状できているのは、ベッドの上で毛布にくるまることだけだった。
時々外から花菜が声をかけてくるけど僕はうんとかそういう曖昧な答えしか返せない。
怖い。すごく怖かった。
人から応援されること、期待されることがこれほどまでに怖いものだとは思わなかった。
今回の配信イベントでは如実に表れている。
僕は誰からも選ばれていない。
人間であるから、政府からの予算はついている。
だけど、それ以上のものがない。ただ、それだけ。
クラスメイトは何かしらで自分のできることをやっている。
同室の花菜は推しのモノマネがすごくうまいらしくそれなりにやっている。
上位を見るとゆいは何かしらの方法でスコアを伸ばしている。
この特殊な環境に食ってかかっている証拠だ。
アリスと靑井のようなこの分野が仕事だ、ということがあればわかりやすかった。
そして、極めつけは愛聖のヴァーチャルアイドルデビュー。
どうしてみんなチャレンジできるんだ。
どうしてみんな一歩踏み出せるんだ。
「そうやってみんな僕を置いていくんだ。」
思えば、僕は先人が用意した優等生をずっと演じていた。
クラスリーダーをやれば大人たちがすごいと言ってくれた。
いい成績を残すとほめてくれた。そこに運動が重なるとなおさらだ。
だけど、その『優等生』がなくなってしまうと僕には何も残らない。
チャレンジする勇気さえ。
「誰か、僕を救ってくれないか。」
また花菜が扉をたたく音が聞こえる。
もう、許してくれ。
◇
□村上 花菜
サトっちに伝えなきゃいけないことがある。
多分だけど、彼が引きこもったのはお昼に配信を一時間半弱やって投げ銭を得られなかったから。
だけど、聞いてほしい。国以外にもウチらを助けてくれそうな人たちが現れた。
だから配信をつけてもらわないと。
サトっちは今までしっかり者だったからその人たちからの支援ってのを受けてこなかったのかもしれない。
でも、サトっちはあの人達にとって、特別だから。
「だから、扉を開けて。」
話を聞いて。
この残酷なルールでも助けてくれる人たちはいるから。
ようやく動いてくれたから──
この小説は、葉月 みそのさんに応援されています。




