メンタルケア
YOH同窓会TIPS
白い部屋のインテリアは、各配信者によって基本的に同じだ。
監禁された後、インテリアにこだわる人は花などでコーディネートしている。
2035年1月17日 時は戻り13:30
白い部屋
□山田 靑井
植物を見ていると精神的に癒される。
これって医学的に証明されていることなのかな。
わからないけど、とりあえず私にとってはいい気晴らしになりそうだ。
愛聖が私に休むように提言してくれた。
特にインターネットから離れるように。
普段インターネットばっかりの私には何をやればよいかわからなくてボーっとしていたら彼女が白い机にお花を頼んだ。
どうせ電脳世界だったら、ということで季節はガン無視して真っ赤なハイビスカスを一株。
この部屋の温度だったら適切に手入れをしていれば枯れないはず、と言い残して自分はゆいの一件を調べるといっていた。
お水を上げて、葉っぱから滴る水を吸い付くように凝視してしまう。
正直、もう私には事態がよくわからない。
もっとまともに勉強していたら、頭の回転も速くなって今回の一件もわかるようになったのかもしれない。
ただ、私は愛聖に話した通り、全然勉強してこなかった身だ。
難しいことは何もわからない。
今、何が起きているのか。何をするべきなのか。
私は生き残れるのか。
昨日までだったら生き残れそうな気がした。
だけど、今日になって川本さんやゆいに抜かれた。
配信が一番得意なはずの私は、まさかの事態に自信を無くしている。
メンブレってやつかな。
そんな風に時間を過ごしていると後ろからドアを動かす音が聞こえた。
「元気になった?」
「…多少は。」
「本当は運動してほしいんだけどね。私みたいに?」
なーんてねって笑う愛聖。
頭はいいんだけど筋肉は世界を救うとか普通に言いそうなのがギャップだ。
「それでゆいは…」
「樹里を使ったコネだね。国には極秘のコネ。YOHにもバレない、そんなコネ。」
どこかから仕入れてきたらしい情報教えてくれる。
いや、愛聖のことだ。推測なのかもしれない。
「樹里…?」
私たちのことを現実世界の政府に人間だと証明してくれた樹里を使ったってこと?
「でもなんでゆいのこと…それに私たちのことも人間だって言ってくれていいはず…だよね?」
「憶測でしかないけどね。だけど、ゆいは何らかの方法で樹里を味方につけた。
あのお金持ちの樹里をね。」
「そんなの…裏切りじゃん。なんでゆいは自分だけ助かろうとしてるの?」
事実、ゆいは大金を手に入れてる。
私はもしかしたら国の予算なしで、配信で十分な投げ銭を得ることができるかもしれない。
でも、目の前の愛聖はそんなことないんじゃない?
怒りで震える私、いつの間にか目の前がぼやけてきた。
「大丈夫。私なら。いつも通りに靑井は配信してもらって構わない。」
「でも、何もしないと愛聖が…」
ふと身体が温かいものに包まれる感覚。
気づくと愛聖に抱きしめられていた。
私はそのぬくもりに我慢していたものがあふれてくる。
自分だけが生き残ろうとしていた1日目。
周りには敵しかいないと思っていた。
だけど、今はこうやって守ってくれる人がいる。
たった1日。されど1日。
私の中で大きな変化だった。
私は大切なものを人を得られたのに、もしかしたらその大切な人を失うかもしれない。
でも、その人は私なんかよりずっと強い人で…
私は泣いていた。いや、そんな悠長な言葉ではすまされないかもしれない。
泣きじゃくっていた。
そんな私を愛聖は抱きかかえるようにずっと嫌がらずにいてくれた。
「大丈夫。人間なんてどこかエゴがあるんだから。
自分勝手じゃない潔白な人間なんていないよ。」
ヨシヨシとしてくれる愛聖。
いつの間にか私の意識は遠くの彼方へ飛んで行った。
◇
宇都宮 愛聖
私は、泣いて疲れた靑井をそのまま床に寝かせてあげた。
毛布を掛けることも忘れない。
靑井を守るためにも私は生き残らなければならない。
無策ではいられない。どうしようか。
この小説は、葉月 みそのさんに応援されています。




