鈴木兄妹
YOH同窓会TIPS
いい意味で今まで目立つことが少なかったゆい。
誰も注目していなかったので、該当の配信を見ていたクラスメイトはいなかった。
2035年1月17日 12:10
白い部屋
□関 ゆい
「多くのあなたのクラスメイト達は昼休み需要を狙って配信をしているみたい。
だけど、私が接触したあなた以外の1組のみんなは配信をしない。」
お昼ご飯の野菜サラダをフォークを使って食べていたら隣で樹里が自分の端末を見ながらそう呟いてくる。
まるで、それが面白いかのように。
「私にはその必要がない。私が本当に狙っているのは現役世代じゃない。」
「ふぅん。じゃあどの世代なの?」
興味深そうにしゃがんで机の上に腕を組んでくる樹里。
兄の桜澪と違って若干性格が曲がってるんだよな。
「言う必要ない。すぐにわかることだから。」
一心に野菜サラダを食べる私に興味を失くしたのか樹里は立ちあがってその辺を歩き出す。
「…ほかのクラスメイト達とあなたの投げ銭は100万以上離れてる。政府が介入をやめたんでしょうね。あなたのせいで。」
キン!
気が付いたら私はお皿にフォークを刺していた。
特有の不快な音が部屋に響き渡る。
「…ごめんなさいね。ちょっと言い過ぎた。」
「…大丈夫」
幸いにも私には最初の作戦が生きたことによる心の余裕がある。
ある程度の覚悟は持っていたとしても、やはり家に帰れないというのは不安の種なのだろう。
ただ、私にとってもう一つ好都合なのはルームメイトができたこと。
昨日まで見たいにソロ型だったら今頃メンタルが持っていたかどうか。
私以外にもソロ型っているはずなんだけど、みんな大丈夫かな。
「ねえ、ねえってば。」
物思いにふけっていて私は樹里に呼ばれていたことに気が付かなかった。
「ごめん。何?」
「あなたは、お兄ちゃんがどっちに配属されたと思う?」
お兄ちゃん──桜澪のことか。そして、どっちに──投票者と配信者のことか。
「私はどちらともいえない。自分のことで精いっぱいだったから。」
「……そうだったよね。」
「あなたは、双子だったらわかる。っていうのはあるんじゃないの?」
「お兄ちゃんはね──投票者だよ。」
確信に満ちた表情を見せる樹里。双子だからっていう理由が通じるかどうかはわからないけど、理論を超越した何かがあるんだろう。
「だから、ゆい。あなたに約束してほしいことがある。あなたの作戦に乗った見返りとして。」
「…いいよ。どちらにせよ何かしらお返しはしたいと思っていたから。」
「あなたは今日のイベントで上位3人を取ることがあったとしたら──いや、取るだろうからお兄ちゃんを占って。
それから、」
樹里は思いつめたように下を向く。今にも泣いてしまいそうだ。
「それから、あなたが3日間の投げ銭で1位を取ってお兄ちゃんが人間だって伝えに行って!」
「…わかった、約束する。」
表向きには極秘で来ている樹里。もちろん、秘密を守る範囲には投票者も入っているだろう。
だから、3日間の1位の特典。実際に投票者のみんながいる仮想世界に行く権限を取った場合。
いや、仮に樹里が来ていてその本人が桜澪が投票者に振り分けられてるって主張しているから──そんな感情論が伝わるわけもない。
◇
□鈴木 樹里
私は、キャッチャーマスクをかぶって投手をリードしているお兄ちゃんの姿を見てお願い事をする。
「お兄ちゃん、、、私はできる限りのことをするから。どうか、今日と明日処刑されないで。。。」
ゆいが仮想世界に行く権利を持てるのは最短でも明後日の午前0時。
それまでこちら側は何も向こう側に干渉できない。
だから、お兄ちゃんには自力で生き残ってもらわないと。
昨日吊られたのは、目立っていたアイドルの佐藤さん。
お兄ちゃんのことだから変に目立つってことはないと思うんだけどね。
仮想世界から仮想世界へ。
物理を超えた何かが届くことを祈って。
この小説は、葉月 みそのさんに応援されています。




