見えてきた犯行の可能性
YOH同窓会TIPS
陽国民はモバイルYOHの所持を事実上義務づけられている。
公的なサービスを受けるのに必要となるからだ。
また、決済端末としても広く普及している。
2035年1月17日 13:15
陽国首都
□跡部 陽子【首相】
不参加になっていたクラスメイトが発見された──それ自体をどうとらえればいいのか。
私には皆目見当がつかない。
同級生である協力者の2人、草野さんと鈴木さんとは連絡が取れていない。
果たして無事なのかどうか。
それすらもわからない状態だ。
今回の対策チームに入っている官僚にはそれぞれ担当のクラスメイトの配信を人力で見るように指示している。ただ、どこからも二人の名前を聞いたという報告は上がってきていない。
もっぱら、<極秘任務である>ということを伝えてあるゆえに2人をかくまっていえる配信者が配信で一切言及をしていないという可能性もある。
一人長机の一番ドアから離れた席で深く息を吐く。
相手は人間を超越した存在、どこにも隙がない。
もしかして、唯一の不参加が確認されているクラスメイトももしかしたらYOHの計算範囲内?
その時私の端末に一通の通知。
被害者とされているクラスメイト他29名は全員警察宛に捜索願が出されていると所轄が確認を取ることに成功したらしい。
どうすれば──
そう思い悩んでいた時、衛生省大臣の田村が駆け込んできた。
若かったが、適切な危機対応ができることを私が買った女性大臣だ。
「総理!大変です!」
田村は全力疾走をしてきたらしく息が絶え絶えだ。
普段運動と一切関連のない政治家にとって全力疾走は身体にかなり答えるはずだ。
「危険違法薬物No.10051が梅山国際空港にて発見されました。」
「な──」
危険違法薬物No.10051──それは通称<哲学ゾンビ薬>。
『その薬を飲むと一定の時間、現実から逃避できる』がうたい文句で現在全世界にて普及が進んでいるものだ。
従来の麻薬などと同じ効果──異様にテンションを上げる作用を持つが、副作用として確認されているのは『効果が持続している間、社会的に問題ない素振りを見せる』という点だ。
つまり、本人がハイになっている間、誰かの命令を聞いたとしても本人は覚えていない。
世界ではこれが新しい形のスパイ行為に使われる可能性としてかなり危険な薬物として指定して売買グループの摘発に取り組んでいる。
「田村大臣、落ち着いて。どこの空港で摘発されたかもう一度報告して。」
「梅山国際空港です。」
「首都国際空港、池田国際空港、西部国際空港でもなく?」
「梅山国際空港です。」
「保安省。現在、該当薬物の国内流通は確認されている?」
たまたまそこにいた保安省の上官に確認する。
確か、違法薬物担当でもあったはずだ。
「されていません。先ほど総理がおっしゃった3空港で密輸があればすぐに機械が探知します。」
それを聞いて田村衛生大臣が続ける。
「西部地域と梅山は高速鉄道によってつながれています。梅山を経由して西部地域に持ち込む算段があったのでは──」
その説もあるかもしれない。だが、それだったら梅山を選ぶ必要がない。
地方空港を狙ったのだとしたら隣接県の高梅国際空港でも問題なかったはずだ。
そこから導かれる答えは──
「もしかしたら、今回の集団誘拐にはこの薬物が使用されている──?」
私の独り言にその場にいる全員が黙り込んだ。
様々な仮説が机上を飛んでいた。
モバイルYOHを装着している陽国民に異常は行動は見られていない。
我々が管理できていないヒューマノイドロボットであれば可能。ただ、民間の協力の基異常な動きをした、もしくは失踪した個体は存在しない。
何らかの理由でYOHの管理下を抜けた外国人グループによる犯行。
ただ、もしかしてこれは。
「衛生省の田村大臣に指示します。国民に注意を促すこと。国民に正しい情報を得るように促すこと。……危険違法薬物No,10051を服用した状態でモバイルYOHが正常に作動するかチェックすること
ただし、3つ目の指示は今回の担当チーム内での秘密事項。
新たに人材が必要なのであれば、田村大臣。あなたに人選を任せます。くれぐれもメディアに情報が漏れないように。」
「かしこまりました。」
まだ、息が整っていない状態ではあるが田村は急ぎ足で部屋を出ていった。
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