閑話休題④~水際対策~
YOH同窓会TIPS
…。
2035年1月17日 13:00
梅山空港国際線ターミナル
□高橋 如月【6年2組】
世間とは狭いもので梅山国際空港の入国審査官で私の同期は同じ小学校で同学年で1組の瑞樹のみ。
まあ、地方の空港に就職したい、というのは当然の願望だろう。
AIがそれを可能にさせてくれた。
私から見た伊藤 瑞樹という人間は非常に優秀だ。優れた洞察力を持っている。
私みたいなどこにでもいるような人間ではなく、ちゃんとしたタイミングでヒューマノイドロボットを起動させる。上司へ連絡する。それが私よりもちゃんとできていて羨ましいと思う。
その瑞樹だったら、この状況をどう見ただろうか。
目の前には大量の薬物。
犯人はヒューマノイドロボットが取り押さえている。
「え、えっと」
落ち着こう。上司への報連相だ。
上司の馬場さんを呼ばないと。
瑞樹。君がいないときに限って、うちは大変なところになっているぞ。
◇
「Do you speak our language?(私たちの言語話せますか?)」
馬場さんが取り調べを行っているが、犯人は黙秘を貫いている。
その姿を業務用のYOHで見ながらもう一つのホログラムの中でマニュアルを読み上げる。
「えっと───」
私は白衣を着た状態でゴム手袋をはめて試験用として押収した試験体を専用の容器に入れる作業に取り掛かる。
マニュアル人間が多い、と言われていること陽国。
今のマニュアル人間はホログラムに書いてあるステップを踏むごとにクリアの表示が出てくるまるでRPGゲームのToDoリストをやっていく感じとなっている。
薬物の開封処置が終わったら『クリア』の文字とともに次のステップが表示される。
「よし──」
初めての作業なのでやや緊張する。
この手の薬物は吸ってなんか気分が高揚するもののはずなので、触れても人体に影響はないはずだ。
ただ、万が一のこともある。
「これをこうして──」
このボタンを押すと薬物検知機械が動き出す。
首都国際空港のような大きな空港であれば専門の資格を持った人間が常駐していて細かい薬物名がわかる。
ただ、うちの空港のような小さなところはAIによって自動化されたロボットに任せるしかない。
最低限の措置として採取したデータは本局に行くようにはなっている。
私も瑞樹と同じく高卒なので難しいことはわからない。薬物を検査する権限も与えられていない。なので、試験管などに薬物を注入するという作業をやることはできない。
ただ、私たちにできることは、ゴム手袋をつけてあとはガラス画面越しの化学機械ロボット任せることだけだ。
マニュアル通りに薬物を入れ終わった私は、これもまたマニュアル通りにゴム手袋を外して手を洗う作業へと移行する。
裏で機械が動いている音を聞きながら念入りに手を洗っていく。
「まさかだけど、あの薬物じゃないよね…」
世界の薬物機構でここ数か月騒がれている薬物。
まだ陽国で確認された事実は存在しないが、これが第一例という可能性だって排除できない。
手を洗い終えて白衣も外した私は別の部屋に移る。
マニュアル通りに行動できたことを確認してから私はマニュアルのホログラム画面を閉じた。
うちの国の機械は優秀なので、<例の薬物>であればすぐに結果がわかるはずだ。
ホログラム画面では取り調べが続いている。
相変わらず犯人は黙秘だ。
数分もしないうちに結果が出た。
<危険違法薬物 No.10051>
──!?
最悪だ。
私が記憶している以上、わが国で初めての持ち込み例だ。
いや、検挙できたのがこれが最初でもしかしてすでに陽国で出回っている薬物なのか?大好きな梅山の人たちにも出回っているのだろうか。
私は急いで本局への通報と馬場さんへの連絡を取ろうとする。
ちょっと待って。
こういう違法薬物は過去の例を見ると規模の大きい都市で見つかる傾向がある。
なんで、うちのような人口45万人くらいの都市に?
この小説は 葉月 みそのさんに応援されています




