閑話休題③
YOH同窓会TIPS
…。
2035年1月17日 13:00
陽国首都
□跡部 陽子【首相】
「ゲームに不参加のクラスメイトがいる?」
今回の政府対策チーム長に任命させたIT担当大臣飯島から受けた衝撃の速報に私は右手のボールペンを落とした。
今は私の仕事場。なので、難しい公式用語なんて使わなくてもいい。
「そうです。名前は────。おそらくYOHは、該当クラスメイトが────なので拉致し損ねたんでしょう。」
「その情報は確かなの?」
「梅山市の市民から通報がありました。」
YOHがどのようにして被害者を拉致したかについては情報が足りない。
官僚がいくつかの仮説を上げてくれてはいるが、どれもしっくりとこない。
だけど、
「なぜ、今になって…」
「そりゃあ、総理。働いていて小学校なんて気にしないからですよ。」
子の飯島。普段記者会見の場ではビシッとしているが、こういう公になっていない場ではラフに話しかけてくる。
首相というのは何かと息詰まる職業なので、ちゃんと仕事をやってくれるこういう存在がありがたい。
「総理。私の小学校なんて聞いたことありますか?そこの官僚もそうだけれど。」
飯島の問いをしばし考える。
確かに。
民間かどうかにかかわらず、気にするのは高校までだ。飯島は名門公立高校を出ていたという記憶はあるが、小学校まで気にしない。
「YOHに捕まっていないクラスメイトがいる、これは貴重な存在だがこの弾をどう使う?総理。」
飯島の問いに言葉が詰まる。
今、同意をもとにYOHが支配する仮想世界へと送り込んだ国民は二名。
どちらも公には極秘とされている。
情報とはそのうち漏れる可能性がある。
それこそYOHがその気になればいつでもこちらの情報など公にできるのだから。
「大至急、防衛隊のシークレットチームでそのクラスメイトを保護して。絶対にYOHにかかわらせちゃいけない。」
「承知しました。」
そう言いつつ、関係閣僚、官僚が大急ぎで部屋を出ていく。
両手には旧式のパソコンで印刷された紙が握られている。
今回、信頼できる中堅以上の官僚しか担当させていない。
加えて、全員からモバイルYOHを没収している。
しかし、紙のほうがしっくりくるというものも中にはいるだろう。
その様子を見ていた飯島がまた話しかけてくる。
「保護対象は女性。もしかしたら、総理のほうが私なんかよりもマンツーマンで話せるんじゃないか?」
「…私が話すことなんてあるのかしら。」
「総理。」
そう言って、飯島が距離を詰めてくる。
「これが人間同士の信頼で動くっていうのは、仮想世界にいる被害者だけじゃない。
我々救出チーム側もだ。」
それだけ言って距離をぐっと話して飯島去っていこうとする。
「総理。あんたも仕事ができる人間だ。だけど、人間はGDPみたいに数字じゃないってことを忘れちゃあいけないぞ。」
部屋を出る際に飯島は立ち止まり。
こちらを向いてウインクした。
そこから、大臣モードに切り替え部屋を出ていく。
やれやれ。
確かに飯島が言うことは正しそうだ。
私はフッと息を吐いて仕事モードになる。
「対象を保護したら、どれくらいでここまで連れてこれるか計算して。」
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