純粋な疑問
YOH同窓会TIPS
もちろん、この日も投票者は配信者の動きを見ることができる。
逆もまたしかりだ。
2035年1月17日 11:55
白い部屋
□山田 靑井
「確かに、この伸びは異常だよね。」
私が掲示したホログラム画面をのぞき込むようにして愛聖がうなずく。
今見せているのは最新の投げ銭ランキングだ。
1位に輝いているのは「関 ゆい」
昨日まではあまり伸びていなかったのに、ここにきて急に割り込んできた。
「樹里が言ってた国家予算の充填じゃない?」
「…そのアカウントだったらさっき見たよ。3,4人のアカウントがあまりコメントしない状態で投げ銭してくれた。
だけど、関さんが伸びてからは来てない。」
「流石は本職アカウントの動きをよく見ているんだね──と言いたいところだけど、事態は国の想定を上回っているということ?」
もし私が国の人だったとして。
樹里のほぼ捨て身と呼べる判定で<人間>だと確定させた人間に投げ銭をするのはわかる。
多分、複数人に分けているのは国民に秘密裏で行われているプロジェクトだから。
「国は確か、私たちが脱落しないことを保証してくれるはず。だから、ここまでの伸びをしないと思う。」
というよりかは、関さんのせいで私たちが受ける保証のための予算がかなり増えたと見ていい。
◇
□村上 花菜
「サトっち、それって何かウチらに影響があることなの?」
関さんの話をし始めてから目の前のサトっちの顔色は暗い。
ウチが馬鹿なだけなのだろうか。
国からは助けてもらえるという保証を得ることができたんだよね?
それで関さんが頑張るのはすごくいいことだと思うんだけど。。。
懐かしさあふれるABCスープを右手のスプーンで掬いながら彼は答える。
「国からの援助に期待しないほうがいいのかもしれない。」
「…どういうこと?だってウチらにはいくらかお金は国から入ってきてるよね?」
さっきウチの枠でもあまりコメントしないアカウントから大量の投げ銭を受け取ることができた。
「僕だって信じたくない。これは可能性の話だ。」
◇
□川本 アリス
「つまり、国が方針転換をする可能性があるってこと?」
椅子にやや浅く座って腕と足を組んでいる状態の樹里に尋ねる。
「私だって万能じゃないし、根っから政府の人間じゃない。だけど、可能性としてはある。
確かに私によって関さんは<人間>だということが判明してる。
だからといってほかの5人を平等に救えるわけじゃない」
「…どういうこと?」
「昨日の山田 靑井がやった相互投げ銭企画は良いものだった。
だけど、あの作戦は作戦内容がゆえに致命的な欠点がある。」
そこまで言って何を言いたいかがわかる。
国がここまで来て予算を出し渋る要因、それは──
「残り4人の人間がわからないと一定額以上の予算は出せない。」
「…私は唯一のマスメディアとして広く深く投げ銭の動向を見ているつもりではある。確かに関さんが抜け出してからは私を含めて他5人への投げ銭ってのがガクッと勢いを失ったように思えたんだよね。」
「つまり私の話を鼻で笑ってくれない、ってことでいいのね?」
「…論理には欠けてるし、すべて推測で話されてるとは思う。だけど可能性は排除できない。」
目の前の樹里は組んでいた足をほどいて身を乗り出してくる。
「その状態で、あなたはどう立ち振る舞うの?国を頼る?それとも自力で何とかする?」
「…無謀な賭けかもしれないけど、どっちもやるよ。」
一息ついて私は覚悟を決める。
「あと4人を特定して国に予算をつけて救ってもらう。」
「…思った以上にクラスメイト思いなんだね。」
「私にとって1組はそれだけ思い出深いクラスだから…」
ヤレヤレと言わんばかりの表情を見せる樹里。
だけど、これは1組の戦いだ。
「わかったよ。お邪魔だろうからこれ以上は話しかけないでおく。
おとなしく、投票者の野球の試合でも見とくよ。」
その姿勢が今の私にとって応援になることは明白だ。




