信頼
YOH同窓会TIPS
蒼が助っ人で出た部活:野球、ソフトボール、バスケ、ソフトテニス、剣道その他多数
2035年1月17日 11:45
白い部屋
□山田 靑井
一旦私は配信を終えて、大きく伸びをしていく。
ついでに屈伸とかをして、長い間動かしていなかった体中に血液がめぐるようにする。
しばらく身体を動かすストレッチをしてから、自室から白い部屋へと入る。
すると椅子の上で愛聖がモバイルYOHを操作しているのがわかった。
「愛聖──」
何度か呼びかけるも応答がない。仕方なく愛聖の後ろに回り込む。
──他人でも可視化できるモードになっていないと見えないんだけど、、、
あ、よかった見える。
目に映ったのは私たちが卒業した第三小学校の校庭。
見慣れない建物が正方形の校庭の2辺に見られる。
目を凝らしてみるとみんな野球のユニフォームのようなものを着ている。
(これは、投票者のみんな?今日は、野球をしているの?)
そこでカメラがピッチャーにズームインされる。
(蒼──⁉)
運動だったらある程度難なくこなせる蒼がピッチャーをやっている。
右下の画面を見る限り、何かしらのポジションの移動があったようだ。
蒼はどのスポーツをやらせてもいい意味で目立たない。
それは洗練された動きと言うか。
たとえ、ヒューマノイドロボットが完璧にプログラムされたとしても蒼のような洗練された動きは出来ないだろう。昔からそうだった。
蒼の動きには言葉では表せない美しさがあった。
ピッチングの際、グローブは首元の辺りから。
脚は上げすぎでも低い位置からでもない無駄のない位置まで上げる。
だけど足は大きく踏み込んで、真上から投げる。
野球アニメってみたことがないけど、きっとどんなキャラよりも美しい投球フォームがそこにあった。
暫く無言でホログラム画面を見つめる。
試合がどうやら再開するらしい。
そこで、愛聖が無言だった理由が分かった。
バッターが立つところに入ってきたのは愛聖。
左下の選手紹介画面で「1番ショート 宇都宮 愛聖 前の打席:四球」と書いてある。
そこでカットインが入って、愛聖──正確に言えば愛聖のAIの守備の時の映像が出てくる。すごい勢いで前進して前に倒れながら一塁へ送球。
ここまで来て愛聖が立ち上がって後ろを向く。
急な出来事に私は驚いて尻餅をついてしまった。
「あ、ごめん!いつからそこに?」
「えっと蒼が映っている辺りから。」
「ああ、ピッチャーが変わったあたりからか...」
そう言いつつも愛聖は心ここにあらずという感じだ。
それはそうだ。
自分のドッペルゲンガーが現れて周りと仲良くしているようなものだ。
その姿を見て歓迎するものなんていないだろう。
大丈夫だよ、のその一言が出てくる正確であればよいのだが、その勇気が出てこない。
そんなことを思う気まずい沈黙の中。
「ねえ、あなたはもう一人の蒼──幼馴染のほう。人間だと思った?AIだと思った?」
「人間だよ。だから配信者ではAIだね。」
私の躊躇無き返答に愛聖が驚いた顔を見せる。
「動きで分かる。それに蒼はそんなに目立ちたがりじゃない。だから自分がスポーツしているところをSNSにアップしないよ。」
さっききた樹里の言葉。
主犯はYOHで、YOHは人格のコピーをSNSにあがっているものによって構成している可能性が高い。
そう言っていた。
その言葉に乗っ取れば、蒼の投球フォームなんてコピーしようがないはずだ。
「…そうだよね。だけど、理屈じゃなくて、二人のやまあおの間にはすごい厚い信頼があるんだね。」
「伊達に読み方が同姓同名なわけじゃないんだよ」
そう言いつつ、ふーんと両手を腰のあたりでグーにして右に向けてみる。
フフフっと二人で笑いあったあとご飯後食べることにした。
ちょうど、私から振りたい話題もあるし、この後聞いてしまおう。




