下位打線
YOH同窓会TIPS
西園寺家は梅山付近でかなりの土地を持っている富豪の家だ!
2035年1月17日 2回の表
第三小学校 校庭
□木村 陽花里
水色に染めた髪は、それだけでスポーツ飲料を彷彿とさせる。
「何って、なんで追い込まれてからもバントしたの?」
「生憎、バントは永遠に出来るものだと思っていたのさ、プロの選手が追い込まれたらヒッティングに帰る理由がよくわかったよ。」
そう言いながら飲むスポーツドリンクは一気飲みではなくあくまでも少量に分けながら。
確かにこっちの方が品のいいのがわかる。
また、愛聖に嫁にいけない何たら言われるかな。
「…それって西園寺君の作戦だったりする?」
いきなり話すと思っていなかった凛が話始めたのでビクッとする。
「それはどういうことだい?」
「…いや、なんでもない」
怪訝な表情を浮かべる西園寺。
何か言いたそうな顔をしていたが、ベンチ裏まで下がっていった。
ちょうどその時、ベンチから歓声が上がる。
グラウンドを見ると3塁ベース上に桜澪。
ホームベース付近には空振りをした姿勢で固まっている兵頭がいるので、2ストライクの時点で、桜澪は三盗をしたのだろう。
『9番ライト 落合 有栖
バッターは 落合
背番号 6』
次の打席は9番の落合。左利きなので左バッターボックスに向かう。
何かを考える素振りを見せてから打席へ。
有栖は小学校の時には、勉強系で全て5段階評価の5を貰っていた。
体育も中の下くらいだったと思う。図工も出来ていたから、天才的センスを持っているだろな、って当時から思ってた。
正直に言うと兵頭や西園寺の方が運動が苦手なので下位打線は有栖から始めてもよかった気がする。
今はなんだっけ、国立の研究機関の研究員に大抜擢されてたんだっけか。
『ストライク』
譲司の一球目はインハイギリギリに決まる。
「ねえ、木村さん。」
また話しかけてきた凛、どうしたの、と問い返すとまた違う方向を見てしまう。
「…私バカだからあんまりわかってないんだけど、このゲームにはAI(人狼)が混じってる。そうなんだよね?」
「そうだね」
「ゼッタイに、だよね?」
その言葉に並々ならぬ覚悟のようなものを感じる。
もしかして──誰がAIなのか、感づいたのか。
縦に頷くと、凛は左手をギュッと握りしめた。
「私、あの子がAIだと思うの。あの──」
「ワァァァァ」
その言葉は最後まで聞こえなかった。歓声にかき消されたからだ。
有栖が譲司のアウトローの球を三遊間に転がしたからだ。
流石の悠斗も追いつけずにレフト前タイムリー。
悠々とホームベースを踏んでベンチに帰ってくる桜澪をほかのチームメイトがみんなで迎え入れている。
バッターランナーの有栖は一塁上で明後日の方向を見てる。
「ねえ、もう1回言ってくれる…?誰のことをAIだと思ったの?」
「…ごめん、忘れて。」
そう言って凛もベンチ裏へと下がっていった。




