意外性
YOH同窓会TIPS
百合は一日目の時から京磨のことを『AI(人狼)ではない』とみている
2035年1月17日 1回の裏
第三小学校 校庭
□山田 百合
右利きの茶兎くんは右バッターボックスに入る。
一球目真ん中に来たストレートを見逃す茶兎くん。
彼はAIなのだが、その仕草だけでは人間かどうか見分けることは困難だ。
「彼の打席、どう見てる?」
左隣りに立っている京磨くんに声をかける。
「今のところ何とも言えないな。」
「さっき言ってた、人間臭くないプレーっていうのはどういうことなの…?」
「2つある。」
ようやく腰を掛けて私の左隣に座る。そして、顔だけをこちらに近づける。
まるで聞かれたらまずいことを言うかのように。
ただ、目線はバッターボックスの茶兎くんとピッチャーの平木くんに見据えたまま京磨くんが続ける。
「1つ目は1回表の木村がアウトになったときだ。」
なるほど。チームメイトに聞かれたくないわけだ。
幸い、ゆいはかなり遠い位置で茶兎くんの応援をしている。
「木村がアウトになった理由は分かるか?」
首を横に振ると京磨くんは続ける。
「専門的に言うと、『守備妨害』を取られたんだ。あの時は意図的かどうかは関係なくランナーに打球が当たった時点で守備側のプレーを妨害したこととなる。」
へぇ、そんなルールが。
ってあれ?
納得のいった顔を見たのだろう京磨くんが続ける。
「そう、これは相当野球をやってるやつしか知らないルールだ。だけど、関はどうだ?」
私だったら、もし身体が機敏に動くので会ったら2塁ランナーの木村さんをタッチ、そのあとに一塁に投げていた。
「ゆいは『ピッチャーに返球』していた」
カキンという音が聞こえる。
グラウンドを見ると打球がホームベース付近に上がっている。
キャッチャーの桜澪くんがキャッチャーマスクを外し捕球する。
『アウト』
このゲームは意外と単純なのかもしれない。
もう少し昨日の鬼ごっこの結果を深く観察していれば。
正しい方向にクラスメイトが動いていたかもしれない。
正直言って昨日のアイドルの佐藤さんが吊られたのはその場の雰囲気でしかなかった。
それが正しい選択だったのかはわからない。
悔しくて唇を嚙んでいると、ゴツンと鈍い衝撃が頭を走る。
見上げると京磨くんが軽くゲンコツをしたようだ。
「スリーアウトだぞ攻守交替だ。話の続きはまた後で。」
えーちょっと待ってくださいまた私レフトまで行くんですか。
◇
守備練習中、レフトの私は所等くんとキャッチボールをする。
「おいおい、集中力を切らさないでくれよー?プロゲーマーさん」
所等くんのボールは私の胸元にくる。
それができたら、苦労しないんすよ。
「普段使ってる脳の領域が多分違うんだよ。」
エイっと思いっきり投げたボールは所等くんがいる位置とはだいぶ前でバウンドする。
一応正面ではあったので所等くんは腰を落として捕球をする。
「ところで、京磨とはどんな話をしていたんだ?」
今度のボールは顔面付近に来た。
反射でグラブを顔面を覆うようにして何とかキャッチ。
ゆいが怪しいんじゃないかって思うんだ。
という言葉をグッと呑み込む。
なぜなら、目の前にいる所等くんは人間かAIかはわからない。
昨日の相互投げ銭企画に参加していないからだ。
ここは話を逸らす方向でいいだろう。
「野球のルール教えてもらってたの。なんでさっき木村さんがアウトになってたのかって。」
そう遠からず近からずの返答をしておく。
今度の私が投げた球は勢いが良すぎて所等くんの頭上に行く。
彼はジャンプして捕球。
「そうか、そういえばなんであれはアウトだったんだ?」
今度は所等くんはゴロを投げてくれた。
さっきの彼の見よう見まねで腰を落として捕球してみる。
「なんか、守備妨害って言うらしいよ」
今度は彼の構えたところにうまく投げられた。
「へぇ」
そう所等くんが答えたら
内野から
「おーい!ボールバックだ!」
という声が聞こえる。
さあ、2回表のスタートだ。
もう走りたくないけど。




