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幕間3

再び、

ボクはこの場に戻ってくる。

ボクの中に無い、けれど、ボク自身の記憶。

誰かの、遠く離れた誰かの夢。


……



『いやぁ〜面白かったねえ〜! まさかあんな所で、助けに来るなんてねぇ〜』


───倖せな日々。

彼女の笑う顔が好きだ。彼女が楽しんでいると、ボクは自分まで心地がよくなる。


『え? ボクには予想出来た。だって? 本当かな〜? あれは誰にも予測できないと思うよ?』


───ボクはきっと嬉しいんだ。

夢の中で、ボクの知らないカノジョが、笑顔でいられる事が。


『えぇ〜!? どうしたの? って、柚希! これ続編決定だって! やったぁ! 来年も一緒に見に来ようよ!』


───ずっとそうしていてほしい。

───ずっとこうしていたい。


『じゃあ───約束だよ』


───うん。いつか、きっと。








「あ────あ────────────────────ああぁあ─────あ」




誰の声だ。自分の声か。いや違う。そんな抑揚、そんな悲鳴、自分の中にあっただろうか。

地の底で干乾びた蛇が、のたうち回りながら吐き出すような、途絶寸前のノイズ。


───視界が、ずるり、と滑った。

天地が、逆さまになっていないのに、上下が失われていく。

耳鳴りがする。

高周波の笛のような、それでいて生臭い音が、脳の奥を擦っていく。


どうしてだ。どうしてこんなものを、見せられなければならない。


(そこ)に映るのは、

───夥しいまでの(あか)

変わり果てる、其の姿。

ぐちゃぐちゃに潰された彼女の■■は、まるで真っ赤なトマトみたいだった。だけれどちょっと、色彩が豊か過ぎる。■■■はこんなにも、色んな色が混じってない。


頭の中に、ヒビが入ったような音が響く。

ミシ、ミシ、ミシ。

───五月蝿い。

五月蝿い、五月蝿い。

五月蝿い五月蝿■五月蝿い五月蝿い五月■い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五■蝿い五月蝿い五月蝿い。


思考がひび割れて、脳漿が言葉をこぼし始める。


どこかで、世界の隅で誰かがにやりと笑った気がした。

それは神か、悪魔か、それとも───もっと、醜悪な「■■■」か。


五月蝿い。黙れ。思考が、思考が崩れていく。

感情の底から、ぶくぶくと泡が上がってくる。

それは涙ではない。悲しみでも、怒りでもない。

もっと根源的な、存在の否定そのものだ。


───見たくなかった。

見たくなかった。見たくなかった。

なのに、見てしまった。

いや、見せられた。

この目が。この脳が。

この腐りかけの■■が。


───ぶくり。


ああ、吐きそうだ。

吐いたところで何も変わらないのに

でも、吐かずにはいられない。


映し出したバッドエンドが、黒く塗りつぶされていく。

黒く、黒く。


───気持ちが悪い、

───気分が悪い。


脳内を、蛆虫が這いずり廻るような感覚。ないし、腸にギトギトの■を捩じ込まれて、ぐるぐると掻き回されるような心地悪さ。


───寒気がする。

───暑いような気もする。

───目眩がする。

目が、目玉がどろりとずり落ちそうだ。



───何を悔いればいい?

───何を恨めばいい?

───何を蝕めばいい?

何を、───呪えば気がすむ?




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