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幕間1

───そうして、ボクは夢を見る。

ここの所、ずっと同じような夢を見る。



『じゃん! 見てよ柚希! これ! 100点だよ100点! どうだ凄いか!』


明るい教室の真ん中。

ガヤガヤと五月蝿い周囲の声を遮るように、──其の少女はボクの前に来る。


『さぁ聞こうか、チミは何点だったんだね? コラ隠すな!』


───判らない。


『え? 別にボクも見せるとは言ってない? 勝手に見せてきただけ?

知りませ〜ん! いいから見せなさいよ! このままあんただけ見せないのは不公平ってもんでしょ』


───誰だ。

一体誰だと言うんだ。


『93点? やったー! 勝った〜! 私柚希に勝ったの初めてかも。

え? 100点とった時点で勝ち確だって気づくだろ? そうかもしれないけどいーの!』



『ほらほらー! 元気だして。好きな人に振られたってだけで落ち込みすぎだよ?』


場面が変わった。

学校の屋上。

暮れた夕陽が射し込み、ちょっとだけ眩しい。


『え? 私だったら落ち込まないのかって? う〜ん。どうだろうねえ。まあ、落ち込むだろうね。ごめんって。謝るから裾引っ張らないでよ』


───夢の中なのに、口の中が気持ち悪い。


『よし分かった! じゃあこの私が、あんたにラーメンを奢ってあげよう。好きでしょ? ほら、行くよ』


……


───誰の夢であろうか。

或い、いつの夢で、何の夢だろうか。

何となく、自分の記憶なのだろうと思う節はある。

それでも、ボクにこんな記憶は無い。──そもそも、夢の中の彼女は、ボクの知る彼女とは遠くかけ離れている。

淡い色彩が、空虚な空間に押し広げられる。その中心にあった、訳の分からぬ情景。


───一体ボクは、何を見ていたのだろう。

目も、鼻も、口も。

耳も、眉も、頬も、前歯も、奥歯も、前髪も、肩にかかる寸前のショートヘアも、その黒髪も、瞳の中も、瞼も、華奢で小さな儚い躰も、右脚も、左脚も、膝も、その皿も、踵も、つま先も、右腕も、右手首も、右掌も、左腕も、左手首も、左掌も、指も、指一本一本にわたる指紋の細部まで。

その全てが、観柳斎(かんりゅうさい)ミラ其の人。

それなのに。

それだって言うのに、彼女は、

ボクの知らないカノジョでしかない。





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