中学生
この思い出したくもない出来事は簡単に終わらせよう。
結論から言うと僕はひどい目にあった。
ぶつかったのはまぎれもない、絵に書いたような不良だったんだ。
僕は急いでいたし、恐かったので何もいわずに逃げようとした。
だけど不良は喚きながら追いかけてくる。ちょっとぶつかっただけなのに。
この時、舌打ちしちゃったのが悪かった。すぐ舌打ちするのは僕の悪いクセだ。
そう、僕は彼に「歯向かって」しまったんだ。
「てめぇっ!!!今舌打ちしやがったな!!!」
やっぱり怒ってる。
でも僕は逃げ足には自信がある。不良にだって負けないさ。
…ほら、もう見えない。僕の完全勝利。やっぱり僕って素晴らしい。保険証を落としてなければもっと完璧だったんだけど。
―こうして保険証を拾った不良の彼は僕の個人情報をいとも簡単に入手し、僕をヒドイ目にあわせた。
具体的に言うと、僕の悪いウワサを学校中にバラまくと言うなんとも陰険な嫌がらせをし、僕の家に友達のふりして押しかけて慰謝料を請求した上に無理矢理万引きをさせ、さらに原付きレースに参加させられ負ければ殴られる始末。喧嘩もたくさんさせられたし毎日毎日暇つぶしに付き合わされた。
あの舌打ちがいけなかったんだ。あれがヤツの気を逆なでしてしまった。
とはいえ僕はそれなりにうまくやった。
不良のグループ内でおちょけてみたり、万引きをもっと効率的にするアドバイスをしてみたり。
僕自信もバイクの腕を磨き、筋トレにはげみ、レースや喧嘩にあけくれた。
おかげで中学を卒業する頃には前科だらけ。少年院に入った事もあった。
頭は良かったのに勉強ができなくて高校に入る事もかなわなかった。
そして18才になった今でもバイトを転々とするフリーター生活…
あの時舌打ちさえしなければこんな事にならなかったのに。