帰還
室外 - 航空戦艦タウロス艦橋 - 昼
艦長オッサン、艦橋から輸送艦をみる。
艦長オッサンにオルナから通信が入り、両目が光る。
オルナ
艦長。私も出るわ。
発艦許可を。
艦長オッサン、目を伏せる。
艦長オッサン
R系フレーム03、
およびXR系フレームの発艦を許可する。
…落ちるなよ。オルナ。
オルナ
了解。
航空艦タウロスから、2機が射出される。
室内 - 航空艦タウロス一室 - 昼
スローは、点滴を受け、ベッドに横たわっている。手錠がベッドの格子に繋がれている。
艦内が激しく揺れる。スローは、この艦が戦闘に入ったことを体感する。
上体を起こして、点滴を抜く。
スロー
誰かいるか?
静まりかえっている。監視役がいなくなっている。部屋を出ようとするが、手錠がひっかかる。ベッドごと移動させ、扉の前へ。
扉は施錠されていて、開かない。艦内がさらに激しく揺れる。
スロー
おい! どうなってるんだ!
艦内アラートが鳴る。しばらくして、立ち上がれないほどの強い衝撃。スローは、室内を転がる。
スロー
被弾したのか?
スローは慌てて、手錠を引っ張る。格子から引き抜けない。
手錠を外そうと暴れていると、巨弾が部屋の近くに命中して、崩れる。
耳鳴りの中、灰と瓦礫の山から這い上がる。ベッドも破壊され、自由に動ける。
部屋に大穴ができていて、そこから脱出する。
室内 - 航空艦タウロス艦橋 - 昼
灰をかぶったままのスローが、艦橋に現れる。
艦長オッサン
おいおいおい!
勝手に出てくるんじゃねぇ!
スロー
そんなこと言っている場合じゃないだろ。
艦に攻撃受けているぞ。
艦長オッサン
やれやれ。困ったもんだ。
外の様子をモニターから察知するスロー。
スロー
撤退しているのか?
艦長オッサン
…罠だったよ。
航空戦艦3隻に睨まれちゃ、
どうしようもない。
スロー
どうして速度を上げないんだ?
艦長オッサン
離脱したいのはやまやまなんだがな。
オルナを置いていくわけにはいかない。
艦長オッサンの視線の先を追う。オルナの機体が、連邦のxフレームと交戦している。
スロー
あのxフレームは…!
艦長オッサン
振り払って帰艦できれば、
全速力で逃げるんだがなぁ。
どうも…、あのxフレームが強敵でな。
オルナが振りほどけない。
連邦の航空艦からの砲撃。オルナの援護ができない。
スロー
俺が出る。
xフレームの発艦準備を急がせてくれ。
艦長オッサン
なにッ!
おい! 待て!
スローは、艦橋から飛び出し、xフレームに乗り込む。
機体を起動させ、発艦準備を整える。
艦長オッサンから通信が入る。
艦長オッサン
おい! 勝手なことをするな!
今すぐ降りろ!
スロー
俺が出れば、彼女を助けられるぞ?
艦長オッサン
何をする気だ?
スロー
時間がないんだ。艦長。
彼女を助けるか、見捨てて逃げるか。
選ぶのはあんただ。
艦長オッサンの舌打ち。
艦長オッサン
xフレームを発艦させろ!
艦長の号令で、整備班たちが動き出し、発艦。
室外 - 連邦領空 - 昼
連邦xフレームの攻撃で、機体から部品が舞う。
連邦のxフレームが、オルナの機体のコックピットめがけて、ブレードを振り下ろす。
その瞬間、青いジェット噴射を背後に、スローのxフレームが、オルナの機体へ接近し、ブレードを突き刺した。
航空艦タウロスの艦橋内がざわめく。艦長オッサンは、じっと見つめている。
スローは、オルナのフレーム機を突き刺したまま、航空艦タウロスへ押しやる。
スロー
このまま艦に張り付いて逃げろ。
オルナ
どうして!
スローからの返答はない。
オルナの機体は、航空艦タウロスに組み付く。
航空艦タウロスは、最大戦速で、この戦域を離脱する。
スローの機体に通信が入る。
連邦xフレーム
何やってるんだ!
そこのxフレーム! 所属をいえ!
スロー
俺だ! スウェン!
スウェン
何? スロー?
生きていたのか!
スロー
ああ。どうにかな。
それにしても、今の戦闘は危なかったぞ。
俺が攻撃しなきゃ、お前落とされていたぞ。
スウェンの高笑いが、通信から聞こえる。
スウェン
(高笑い)
馬鹿をいうな。
ポイントを横取りしやがって。
貸し一つだぜ。
スローは、航空艦タウロスへ視線をおくる。連邦の航空艦に追われているが、速力で逃げ切っている。
スウェン
そうだ、あの艦を落とさないとな。
スロー
それは、奴らに任せておけよ。
それより、負傷兵を置いておくのか?
スウェン
しょーがないな。
案内してやるよ。
2機のxフレームが、連邦の基地へ帰還する。
スローの視線は、タウロスへ向けられている。