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夜明け

屋外 - 連邦領空 - 夜


夜明けの空。白を基調とした3隻の大型輸送艦が、地上から数十メートル浮き上がって航行している。3隻の輸送航空艦は、艦首を宇宙へ向けて、出力を上げる。


その後方を、護衛の航空戦艦プロメテウスが追行する。艦色は黒。輸送艦より一回り大きく、主砲2門やその他武装を有している。


屋内 - 航空戦艦内ハンガー - 夜


整備班が行き交う。全高10メートルほどの人型戦闘機(エックス)フレームが、2機格納されている。

機体の色はグレーで、空対空ミサイル、装弾数500の固定武装などを搭載。


スロー(男、24)は、xフレームのコックピット内で、キーボードを叩いている。

くすんだブロンドの髪で、中肉中背。左目は機械で造られた義眼で、AIのサポートを受けられる視覚デバイス。精巧に造られているが、瞳の色が違う。

コックピット内部は、狭く、ロボットケーブルで溢れている。パイロットが装着するタクティカルヘッドセットやマスクなどもコックピット内と一体化している。


機体にかけられた、はしごを登ってナルミヤ(女、20)が顔をのぞかせる。黒髪ショートヘア。細身で、フライトスーツを着用している。スローの後輩で、xフレームの2番機。

ナルミヤは、じっとスローを見つめている。


          スロー

    (出力モニターから目をそらさず)

     なんだよ。


          ナルミヤ

     機体調整ですか?


          スロー

     一応、な。

     何があるか、わかんないだろ。


          ナルミヤ

     そういうの、

     事前に完了しているはずですけど。


ナルミヤ、コンソール画面を覗き見る。


          スロー

     (キーボードをたたく指が止まる)

     …なんだよ。

     そんなことをわざわざ言いに来たのか?


          ナルミヤ

     いいえ、そういうつもりじゃなくて。

     すみません。

     …ただ、少し、不安で。


戦艦プロメテウスも宇宙へ向けて出力を上げる。艦が振動する。


ナルミヤは、はしごにつかまって、眼だけを動かす。


しばらくして、揺れがおさまる。


          スロー

     気にしていると、身体が持たないぞ。

     命令どおりに動いていれば、

     問題なんておこらないさ。


          ナルミヤ

     そうですね。


ナルミヤ、小刻みに頷く。


          ナルミヤ

     先輩は、戦闘実績ありますか?


          スロー

     ガラド紛争に参加した時、

     エースの称号をもらったことがある。


          ナルミヤ

     へぇ。エース、ですか。

     その時から有人機ですか?


          スロー

     …まぁ、そうだな。


          ナルミヤ

     どうして、有人機に?


スロー、返答に窮する。


視線をコックピットの外へやる。2階通路から、こちらへ手をあげる女の姿。シトラ(女、22)長い白髪で細身。昔失った仲間の姿をしている。

スローは、目を伏せる。


艦内にアラートがなる。二人、顔を見合わせ、ナルミヤは滑るようにはしごを降りて、自機へ向かう。


スローもコックピット内におさまり、黒塗のタクティカルヘッドセットを装着すると、視界は機体を透過して、全方位目視できる。酸素マスクは口もとに垂らして、複数のケーブルとチューブが、背面へ伸びている。


機体を起動させる。コックピットの計器類に明かりがともる。xフレームのエンジンが待機状態になり、高音が反響する。


          シトラ

     いつでも発進できるよ。スロー。


機体の外に、シトラの姿がみえる。こちらを見つめている。彼女の声が、スローの隣から聞こえる。


          シトラ

     所属不明の航空艦が、接近しているみたい。

     火器制御とレーダーは、私がやるから、

     操縦とトリガーに集中してね。


スローは、彼女の声を無視して、機器の確認を進める。


          シトラ

     ねぇ。スロー。

     聞いているの?


スロー、外のシトラをみる。


          スロー

     …補助機能、オフ。


AIサポートを切ると、白髪の女の姿が消える。彼女の声も消える。


屋内 - 戦艦ブラスト艦橋 - 昼


オルナ・バーン・シェルディアナ(女、20)が、足早に艦橋へ入る。長髪で赤い髪色。色白で、細身。


古い機器に狭い艦橋。隊員の数も少ない。艦長オッサン(男、42)が、遠望している。白髪まじりの短髪で、左右を刈り上げて、髭を伸ばしている。褐色肌で、筋肉質な巨躯。顔の3分の1と左腕、脚が機械化している。


オルナ、艦長の背後に立つ。


          オルナ

     艦長。私も出るわ。


艦長オッサン、ゆっくりと振り返る。


          艦長オッサン

     ダメだ。お前は待機していろ。


          オルナ

     どうして!

     偽装がばれたのなら、

     全戦力でたたくしかないわ!


艦橋に、情報室から連絡音が響く。


艦長オッサンの両目が、薄っすらと光る。頭蓋に埋め込まれた受信機で応答する。


          艦長オッサン

     何だ。


          隊員

     カンチョぉ。

     また、連邦から警告送られてきたぞぉ?

     どうするんだよぉ。


前歯の欠けた男が、問い詰める。


          艦長オッサン

     少し待っていなさい。今考えているから。


          隊員

     考えてなかったのかよぉ!


艦長オッサンの両目の光が消える。通信が切れて、声も途絶える。


          オルナ

     艦長!


艦長オッサン、無言のまま、座席に腰を下ろす。あごひげをなでる。


          オルナ

     ここまで来たら、やるしかない。

     でしょ?

     私にやらせて。

     必ずあの輸送艦を落としてみせるわ。


艦長おっさん、あごひげをなでながら、眉間にしわを寄せている。


          艦長オッサン

     どうもおかしい。

     事前の話では、この艦の識別コードは、

     連邦のそれになっているはずだが。


          オルナ

     偽装が看破されたってことじゃないの?


艦長オッサン、険しい表情。


          艦長オッサン

     どうだろうねぇ…。

     これは…

     依頼主との信頼関係を揺るがす問題だ。

     戻り次第、責任の所在を追及しないとなぁ。


艦長オッサン、両目にうっすらと光りがともる。


          艦長オッサン

     艦内、戦闘配備。

     最大戦速。

     R系フレームをすべて発艦させろ。

     標的は輸送艦だ。あれを宇宙へ上げさせるな。


          オルナ

     艦長! 私も———。


          艦長オッサン

     お前はだめだ。

     艦内で待機していろ。


          オルナ

     どうして…!


          艦長オッサン

     オルナ!

     私の指示に従う約束だぞ。


オルナは、艦橋から飛び出す。


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