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不思議の森でつかまえたい!  作者: 倉本たかみ
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探偵と騎士と美容師と(5)

 ご、ごきょうだいだったのですね!

 私は思い切り心のなかで叫んでおりました。

 アリスさんとブライトさん、いえ、ツリーハイン子爵が姉弟だったなんて……全く似ていらっしゃらないので気が付きませんでした。

 私は何度もお2人を見比べます。

 アリスさんは少し申し訳なさそうに。ツリーハイン子爵は楽しそうに、私をみつめていました。

「驚きましたわ……」

 でもこれですこし謎が解けました。アリスさんの氷が溶けたのは、弟さんと接していたからなのですね。きっと本来は仲が良いお2人なのでしょう。

「とにかくアナスタシア様は早まった真似をなさいませんようお願いいたします」

 逆プロポーズの件でしょうか。良い案だと思ったのですけれど……。

 アリスさんがきっぱり言い切るので、私はおとなしく頷いておいた。

 リン様をチラリと見ると、彼は笑顔ひとつない真面目な顔で、私を見ていた。

「ご安心ください。あなたの醜聞になるようなことにはなりませんから」

「……それは……信じていますわ」

 なぜでしょう? 私は少し、残念に思っているようです。う〜ん……私ったらもしかして、この方のお顔が好みなのかしら?

「ま、とにかく聖騎士を探しに行こうかと思うんだけど」

 子爵がニコニコ笑いながら声をかけてきます。

 私はこちらに来た目的を思い出しました。

「そうですわ。すぐ探さなくては!」

 アリスさんが眉をひそめて

「あてがあるみたいじゃない」

 そんなわけがないのに。私の魔力を使ってさえ、みつからないのです。

 すると子爵は肩を竦めて、

「あるよ。もうどこにいるかもわかってる」

「はぁああああ?!」

 ア、アリスさん! 落ち着いてくださいまし!

 氷の美貌が溶けまくって崩壊しております!

 私もかなり驚いてはおりますが……。

「あの、どういうことでしょう?」

「細かいことは省くけど、聖騎士はブルーローズの森にいるんだよね。」

「ブルーローズといえば……不思議の森のことでしょうか?」

 国の北東にある、青い薔薇の咲き乱れる森。ただ、この森が不思議の森と言われるのには理由がある。

「そこで魔王と戦うつもりみたいだ」

「は⁈」

 魔王と? いるんですの?

「彼は自分がなぜ呼び出されたのか知っているみたいだね。この魔獣が魔王復活に合わせて増えていることもね。だから魔王をサクッとやっつけて、さっさと帰りたいみたい」

「魔王復活……」

 そう呟いた瞬間、私はまた思い出しました。そうだわ。悪女となった私は、闇堕ちした聖騎士と共に魔王を復活させ自分に取り込んで、我が力としようとしてもいました。

 今の私は、これっぽっちも魔王を復活させるつもりがないのですから、魔王がしびれを切らして出てきたのかしら? これは……ごめんなさい? なのかしら?

 もっと早く私が全てを思い出していれば、さっさと自ら魔王を倒して、力を奪いとり、オニキス様のお手を煩わせることもなかったのに!

「……アナスタシア嬢、何を考えているのかわかっちゃったけど、それはやめてね。取り込むのはダメだから」

 あら、そうなんですのね。

「聖騎士様は魔王を倒せるの?」

 アリスさんが言います。

「あ、それは多分大丈夫かと。私でも魔王を倒せますので、聖女様か聖騎士様なら余裕ですわ」

 アリスさんが苦虫を噛み潰したような表情になる。

「魔王……弱すぎない?」

 そこは、ほら、大きな声では言えませんけれど、乙女系の話なので、いつまでもグダグダ戦って挙句グロいシーンまであるなんてのを女子は嫌うんですのよ。

「それは、僕達の物語ではないからね。サクッと終わって良いんだよ」

 子爵は私ににっこり微笑んで言う。

 あら、もしかして……子爵、私の事情をものすごく詳しくご存知なのですね。

「こちらの物語も、さっさと終わらせたいよね?」

 子爵は相変わらず微笑んだまま、私にそう言いました。

 そうですわね。

 そのためには、彼と、彼女が出会うことが必要なのです。

 だから、私に、こちらへ行くように言われたのですね。ペリドット様。

 その時です。

「遅くなってごめん! お客様が遅れて来ちゃってさ〜」

 そう言って部屋に飛び込んできたのは、美しいストレートの金髪をポニーテールにした、でも、決して女性らしくはない、とても素敵な男性でした。


「……まぁ……」

 驚きのあまり、思わず声が漏れてしまいます。

 すると、男性は私に気がつき、にっこり微笑みました。

 そして、

「これは美しいお客様の前で大変失礼をいたしました。驚かせて申し訳ございません」

「私はアナスタシア・タンザナイトです。あなたは……」

「私はウインドと申します。平民ゆえ、名しかございませんが」

 ええ。そうね。あなたは最近王都で人気の、若い美容師。このサロンの所属……それともオーナーなのかしら? というのは知らなかったけれど、貴族から平民まで、彼のメイクとヘアデザインで、美しくなると大評判のウインド様。

 ここにいるミナの、運命の男性。

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