極悪美少女の真夏のバカンス ~興味は無いが手助けはしてやる~
綺羅は携帯を切ると隣でノンビリ寝ている父親の勇仁を見た。
勇仁は綺羅の視線に気付くと
「綺羅、どうかしたのか?」
と微笑んだ。
綺羅は不意に
「父は俺達を育てることを罰だと思っているか?」
と聞いた。
勇仁は笑みを深め
「お前たちを授かった事は俺にとって最大の幸福で奇跡だと思っている」
と言い綺羅を抱き締めると
「俺と悠里の愛の結晶だからな」
と頬にキスを落とした。
「マイラバーエンジェルズ」
綺羅は勇仁に笑顔を見せると
「俺も父がそう言ってくれるのは嬉しい」
と呟いた。
且つて結婚し子供をつくることは勝ち組で独身は負け組だと世間は叫び誰もが結婚や子供を作って勝ち組の家庭を夢見ていた。
そういう時代があったらしい。
それが昨今は価値観や経済の変化から子育てを罰ゲームのように叫び始めた。
綺羅はパラソルの向こうの空に視線を向けると
「色々理由はあるだろう」
だが罰ゲームの景品になった子供は不幸だな
「麻生敏子も…そう言う意味では不幸な罰ゲームの景品だったのかもしれない」
と小さく呟いた。
例え憂さ晴らしの言葉でも不満のはけ口の言葉でも罰の象徴となる子供は不幸だ。
綺羅は勇仁を見て微笑み
「親バカバカの親を持って俺は存外幸せなのかもしれないな」
と呟いた。
「母さんも俺を産んで…幸せだと思ってくれただろうか」
綺羅は目を閉じると
「あんたの記憶すら俺にはない」
と瞼に描く事すら出来ない母親の姿をそれでも懸命に描こうとした。
自分を抱いた母親が笑顔を浮かべている姿を。
その後、悠が現場から戻ると三人で海水浴を楽しみ、翌日には張り切る父勇仁と三人で探検ツアーへと出かけたのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。