極悪美少女探偵登場…本人はやる気なし…
桜の季節が終わると薄紅の花の代わりに緑の若葉が木を彩り、枝を伸ばし始める。
東都電鉄の四辻橋駅も4月は桜並木で一面薄紅色に染まるが、今は新緑が駅に交差した川沿いで広がっている。
近くに綺羅が通う東宮女子学院があり、小中学校部は男女共学になったが高校以上は未だ女子校ということで多くの女生徒が毎日利用しているので朝の7時から8時と昼過ぎの3時から5時くらいの間は賑やかであった。
皐月綺羅の家はその四辻橋駅から歩いて15分のマンションの最上階にあった。
駅を挟んだ反対側には東都製菓の工場もあって桜祭りの時は主力製品のチョコロビットというチョコレート菓子が出店などでよく販売され購入されていた。
特に綺羅の6歳年上の兄はそのチョコロビットを人生最後の日には食べたいというほど愛しているらしく家の中でチョコロビットが無い日はない。
その兄の皐月悠は父親である俳優・皐月勇仁に似た凛とした容貌の美形であった。
つまり女子学生にモテモテということだ。
しかも、優男に見える割に腕も立つ。
が、その悠が愛しているのは妹である綺羅とチョコロビットの二つであった。
綺羅が授業を終えて暫く校舎に残り、時間を見計らって小学校の門前で立っているといつものように兄の悠が姿を見せた。
東都大学付属高校に通う兄が授業を終えて迎えに来たのだ。
「綺羅!待ったか?」
そう悠に声を掛けられ綺羅は首を振ると
「大丈夫だ、悠の授業が3時に終わってホームルームに10分。掃除に15分。列車に乗ってここへ来るのが4時10分ごろというのは想像がついていた」
問題ない
と答えた。
悠と共にやってきた彼のクラスメイトで親友の飯島功一は
「…問題ない、か」
お前の妹はゲキカワなのに言う言葉は可愛くないな
「遅くて心細かった~とか、お兄さま遅かったじゃん、とか言えば可愛いのに」
と溜息を零しながらぼやいた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。