性格極悪少女と天球儀の在処
綺羅は最初に川瀬ひかりのリストを出し
「これは以前に他の事件で殺された川瀬ひかりが送ってきたリストだ」
と言い
「記事とリストをチェックしたらほぼほぼ一致した」
と告げて全員の中央に置いた。
神楽和則の部屋は広く大きかった。
本棚が両側にあり奥に机がある。
だが、7人でそこを共有することは出来ないということで中央にある広い空間に今は作業用のテーブルが置かれている。
弟の神楽各務が用意してくれたようである。
その上にそれぞれ調べた書類を置いた。
綺羅は日向を見ると
「それで記事の事件について先に教えてくれ」
と告げた。
「それから、そっちのまゆずみグループの」
正義がそれに
「関連の政財界の名簿だよね」
事件との関連を見る?だろ
と告げた。
綺羅は笑みを浮かべると
「そう言うことだ」
と答えた。
「功一とは雲泥の差だな」
ハフッと息をついて告げた。
功一は腕を組むと
「綺羅、お前本当に可愛くないな」
と睨んだ。
悠は困ったように
「綺羅」
と嗜めるように告げた。
綺羅はフンッと
「名探偵になりたいなら…そいつくらいの発想力を手に入れろということだ」
と告げた。
功一はハッハッハッと笑い
「るっせ」
とぼやいた。
正義は苦笑しつつ
「じゃあ、厚村さんお願いします」
と告げた。
日向は頷くと
「最初に言っておくが」
やはり事件は全てコールドケースになっている
「事故は初動捜査のみで終わっている」
調書を読んでおかしいと思えるものでもな
と告げた。
綺羅は「やはりな」と心で呟いた。
それは綺羅だけでなく聡も静音も正義も同じであった。
日向は続けて
「まゆずみグループの総裁と夫人は退けておいて」
次の『東海新聞社の杉浦周子の車の転落の記事だが彼女は社会派記者で桑名市の湾岸開発』について調べていたようだ
と調書の内容を読んだ。
その後、正義がリストを見ながら
「えーと、確か桑名市の湾岸開発の記述あったね」
と紙を捲り
「あー、これ。まゆずみグループに出資している桑名市の代議士の徳村和人がその用地に工場を建てた金田鉄筋製鋼に彼の息子を重役に付けてる」
と告げた。
静音は驚いて
「そうなんだ」
いやぁ、詳しく調べられたねぇー
と告げた。
それに正義はちらりと真理を見た。
真理はピースして
「ま、餅は餅屋」
と答えた。
「一応、俺の家は全国の政財界に精通しているからな」
聡は心で
「政財界でも大御所の白露家だからな」
と呟いた。
日向と静音はそれぞれの担当の記事の詳細を報告した。
その事件に関連した人物がいないかを正義と心理が調べたリストから探した。
事件や事故はかなりの数であったが、恐ろしいことに『まゆずみ夫妻』、『黒崎悠里』、『雫石の火事』以外全ての事件と事故でまゆずみグループと関連のある政財界の人々が不利になる関係の人間が死んでいたのである。
もちろん『神楽和則』もそれ以外の分類に入る。
蒼褪めながら白露真理がテーブルの上の書類を見た。
「まさかさぁ」
まゆずみグループ=JDW?
それに日向がリストを出した。
「これはかなり古い資料だが局長の助言で資料室から探し出したものだ」
黒崎零里が自首してきた時に旧JDWに関連したという人脈リストだ
綺羅も悠も功一も正義も真理も驚いてバサッと置かれたそれを見た。
綺羅は固唾の飲み込み
「これとそのリストを照合すれば」
と告げた。
聡は頷いた。
正義が自分たちのリストを広げた。
「言ってくれるかな?」
俺と真理でチェックしていくから
真理は頷いてペンを手にした。
綺羅は功一に渡し
「功一、読め」
と告げた。
功一は頷いて
「ああ、分った」
と言うと僅かに震える手で読み始めた。
これがもしも。
これがもしも。
一致したら…大事になる。
それこそ警察がかつての襲撃事件を起こして解体したJDWの後ろ盾になって事件をもみ消してきたということになる。
そして、そんなことをできる人間は一人だ。
かつての警察庁のトップ警察庁刑事局長・まゆずみグループの御曹司でもある『まゆずみ勲』しかいないのだ。
現警察庁刑事局長・まゆずみ聡の父だ。
聡と綺羅以外の誰もが固唾を飲み込んだ。
綺羅は腕を組み
「やはりな」
100%とはいかないがまゆずみグループの全てが旧JDWから流れている
と告げた。
「まゆずみ群司か妻の節子」
どちらかがJDWのリストを持っていたんだろ
聡は目を細めて
「そうだな」
と言い
「そしてそれを今の父が受け継いだということか」
と告げた。
「いや、もしかしたら両親を殺して」
静音は聡を見て
「局長は…どうされるおつもりですか?」
と真剣な表情で聞いた。
聡は息を吐き出すと
「勿論、法に触れる以上は一般も警察庁刑事局長も関係ないが…問題は証拠だ」
と告げた。
「これでは状況証拠だけでこれらの事故や事件に関連している者達を起訴することも今の父が揉み消したということも立証できない」
正義は冷静に
「そうだよね」
と答えた。
「証拠が必要だよね」
無ければ公判を維持できない
綺羅は頷き
「そうだな」
と告げた。
聡は彼らを見回し
「危険だが…やはり父の手にあるあの天球儀を手に入れるしかないか」
と呟いた。
綺羅は「天球儀…というと川瀬ひかりの暗号に書かれていたアレか」と呟いた。
聡は肯定の意味を頷くことで示し
「恐らく玲が作った暗号で解除するボックスだ」
見たことはあるんだが手に入れることはできなかった
「俺がその存在を知っていると知られたら間違いなく殺されただろう」
と言い
「父はそれを開けるために暗号を解くことのできる人間を探していた」
その政財界の人脈を頼ってな
と告げた。
「今はまだ解除できていないようだが」
綺羅はそれに
「どういうものか覚えているか?」
と言い、紙を出すと
「これに書いてくれ」
と告げた。
聡は驚きながら
「…絵は得意ではないが」
と言いつつ書いた。
正義がそれを見ると
「これは…6桁暗号解除型のボックスだよね」
普通のとは違うけど
と告げた。
「この両側の半球部分…一方は地球だけど」
もう一方はないね
綺羅は熊の縫いぐるみから球体を取り出すと
「恐らくこれが入る」
と告げた。
「叔父は俺にこれを託したんだ」
全員がそれを見た。
聡は息を吸い込み吐き出すと
「やはり玲のモノか」
玲は東都大学を出たあと2年くらいは玩具製造会社に勤めていたんだ
「その間にそういうものを作る技術を手にしてな」
その後に和則が殺され
「俺は玲と直にその真相を探ることを頼んだ」
と告げた。
「二人の出した答えはJDWの復活だった」
ただ誰が復活させたのかが分からなかった
「いや、玲と直は分かったんだろう」
綺羅は聡を見て
「お前の父を改心させようとして…反対に殺されたということか」
恐らく神楽和則も同じだったんだな
と告げた。
聡は頷いた。
「俺のことなど気にせずに告発してくれれば…俺は大切な親友を二人も失わずに済んだ」
だがもう今しかない
…父の天球儀を手に入れる…
「恐らくその天球儀の中に証拠となる何かがある」
玲はそれを父に言いこれ以上の犯罪を止めようとして殺されたんだろう
正義は視線を落として
「同じように一途さんのお兄さんも」
全てを知って親友である貴方の為にまゆずみ勲を止めようと動いたんですね
と告げた。
聡は頷き
「そうだ」
と答えた。
「あいつはそう云う奴だった」
一番大人で頼りがいがあって
「俺にとっても直にとっても玲にとっても大切な奴だった」
綺羅は暫く考え
「ならば俺も行く」
と告げた。
功一は慌てて
「けど、殺されるかも知らないんだぞ」
だったら俺が代わりに行く
「綺羅と悠は置いていく」
と告げた。
悠は驚いて
「功一だけ?それはダメだ」
と告げた。
功一は二人を見ると
「俺は二人を守ると約束した」
もちろん、俺も死ぬつもりはない
「だけど立花さん一人では万一の時に永遠に待ちぼうけになる」
と告げた。
「だから付き添いする」
日向はそれに「いや、俺が行くから君は残れ」と告げた。
「その殺された人のリストの中には俺の恋人の名前もある」
俺はその事を調べている時に局長と出会い二人で内々に調べ始めていた
「局長は薄々分かっていたが今言ったように証拠が無ければ起訴も出来ない」
この時を待っていた
静音もまた
「まあ、俺も付き合いますからね」
と笑みを見せた。
「警察官ですから」
綺羅はそれに
「お前の理由はあっさりしているな」
だが悪くない
「警察官を少しは信じようという気持ちになる」
と突っ込んだ。
静音はにっこり
「まあ、乗りかかった船と言うのが最大の理由ですけどね」
と笑った。
綺羅はハハと笑って
「…つまらん理由だな」
だがそれも悪くないな
と突っ込んだ。
正義もまた
「俺も行きます」
と告げた。
が、聡はそれに
「君は一途ちゃんの側にいてあげてもらいたい」
そして
「この事を伝えてもらいたい」
和則を殺した人物と理由をちゃんと伝えてもらいたい
「彼女の兄がどれほどいい奴だったかを」
と告げた。
「そして彼女を守って欲しい」
君と一途ちゃんの子供…心ちゃんも
真理は正義の肩を叩くと
「そうだ」
ここは任せた方が良い
「人には役割分担がある」
その役割に軽重はないもんさ
と告げた。
正義は真理を見て笑み、聡に
「わかりました」
と言うと
「その代わり結果を教えてください」
皆さんの口から必ず
と告げた。
それは生きて知らせに来て欲しいということだ。
聡も日向も静音も頷いた。
綺羅は彼らを見ると
「待っているから必ず叔父のそれを持ってきてくれ」
と告げた。
聡と日向と静音はまゆずみ邸へと向かった。
綺羅は悠と功一はその部屋で彼らを待つことにしたのである。
正義と真理は全ての報告をそれぞれの自宅で待機して待つことになったのだ。