性格極悪少女と天球儀の在処
そこは時を止めた部屋だ。
神楽和則が死んだ日からきっとずっと時間が止まっていたのだろう。
綺羅は悠と功一と共に部屋に入り
「あんたが見つけたものを見つけ」
止まっていた時間を動かす
と心で呟いた。
三人の後ろには神楽正義に白露真理、そして、立花聡に厚村日向に鮎原静音が続いていた。
それぞれが調べたものを手に持ち寄ったのである。
神楽和則が。
黒崎玲が。
見つけた真実を明らかにするためである。
パーフェクトクライムの資料集
最初に唇を開いたのは立花聡であった。
「その縫いぐるみは」
功一は慌てて
「あ、その綺羅も小学生の女の子なので大目に」
とフォローを入れた。
そう言う気遣いはあるのだ。
が、綺羅はそれをそっちのけで
「これが神楽一途が言っていた森の熊さんだ」
と言い
「叔父である黒崎玲から預かった恐らく最期の謎への橋渡しだと俺は思っている」
と告げた。
全員が綺羅を見つめた。
「叔父はこれをくれるときに『森で出会うくまさんだ…こいつがお嬢さんに渡す落としもので始まるんだ。君がいつか全ての謎を解いたら、そこにある全てをあげよう』と言った」
それに神楽正義は「森で出会う熊さんか」と呟いた。
綺羅は苦く笑って
「俺は当時三歳だ」
三歳の子供にする謎かけじゃないだろ
「だから解けないことが前提の謎かけだとずっと思っていた」
と告げた。
日向が息を吐き出し
「だが、そうではなかったということか」
そして解いたということだな
と告げた。
綺羅は頷いた。
「恐らく、この一連の事件を解決する先にこの謎が解明するモノがあると思っている」
功一は何処か辛そうな綺羅の空気に手を伸ばすと頭を撫で
「じゃ、お前の叔父さんがくれるものを取りに行くか」
俺のような名探偵が付いている
「大丈夫だ」
とニッと笑った。
綺羅は功一を見ると
「いや、もう解けてるから気にするな」
とビシッと告げた。
功一は「おい!」と怒りかけた。
が、綺羅は笑みを浮かべると
「だが、感謝している」
ありがとう、功一
と告げた。
功一はふっと笑うと
「ったくもー、本当に可愛くないな」
綺羅は
と笑みを浮かべた。
悠も微笑み
「さあ、作業を始めよう」
と呼びかけた。
真理はうるっとしながら
「なんか…俺、感動してる」
こういうのよえぇんだよな
と呟いた。
正義は苦笑しつつ
「ん、でも」
綺羅ちゃんはどこか一途さんに似ている気がするな
と呟いた。
一生懸命背伸びして。
一生懸命哀しみを飲み込んで。
自分の足で立とうとする。
少し悲しくて。
でも。
少し胸が温かくなる。
その手を握って一緒に立ってあげたくなる。
真理は優しい表情で誰かを思い出している正義に
「…おい、独り身には辛いから作業に心を入れ替えてくれ」
と告げた。
正義はハッとすると
「ごめん」
と笑った。
それにそこにいた全員が苦笑を零した。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。