性格極悪少女と水先案内人
静音は綺羅の横を歩き
「おや?」
ダイイングメッセージに興味はないの?
と問いかけた。
綺羅は入口から店内を歩きながら
「ダイイングメッセージは取り敢えず功一に任せる」
と言い
「それより、通報は何時だ?」
と聞いた。
静音は手帳を見ながら
「えー、9時8分ですねー」
9時出勤だから時間的にはおかしくないですね
と告げた。
綺羅は立ち止まると静音を見て
「お前も…功一のようなドラマ仕立ての迷か?」
と呆れたように見た。
静音は困ったように笑い
「あー、迷にはなりたくないんだけどねー」
とアハハと笑って答えた。
「でも、綺羅ちゃんを見てると俺は探偵より情報屋の方が向いてるかもとは」
綺羅はふっと笑うと
「なるほど、己を見極める目は持っているんだな」
と答えた。
その様子を悠はハラハラしながら見て
「綺羅…俺は兄として…いや、父に近い年齢の男性を…」
だがだが
「綺羅は大人びているところもあるし」
と自問自答を繰り返していた。
綺羅はふっと悠を見ると
「…悠は本当に心配性だな」
と心で呟いた。
功一はうんうん悩む悠を横目で
「悠も考えてくれているんだな」
と思い、日向に
「どんなネックレスですか?」
と聞いた。
日向は綺羅がウロウロしているのに
「興味が無いのか?名探偵は」
と心で言いつつ
「迷探偵がどれくらい頑張ってくれるか…だな」
と写真を見せると
「これだ。アマゾナイトという宝石のネックレスだ」
と告げた。
明るい水色の宝石で作られたネックレスであった。
そして手帳を出すと
「今周辺の防犯カメラで怪しい人物や車両が写っていないかを調べている」
店内のカメラには布が掛けられて写っていなかったのでな
と告げた。
功一はネックレスの写真を見て
「う~ん、別に特段特徴もないし」
もしかして盗みに入った宝石強盗と揉み合いになってその時に犯人が盗もうとしていたのがこのネックレスで偶々それを守ったとかいう可能性は?
と告げた。
日向はう~んと悩みながら
「確かにその可能性はあるか」
ダイイングメッセージではなかったということか?
と呟いた。
確かに盗もうとした犯人から守った宝石がそれということもあり得るのだ。
が、綺羅は一周して戻ってくると
「おい、迷探偵と迷刑事」
その写真と店員の情報と被害者である阿倍萌子の周辺の人間関係は調べているのか?
と聞いた。
功一はふっと笑むと
「綺羅は最近本当に素直になったな」
いま考察中だ
と答えた。
日向はヒターと汗を流すと
「迷…刑事…か」
チーンと心で何かが鳴る音を聞いた。
愛くるしい容貌の小学5年生の美少女に『迷刑事』だ。
静音はそんな日向を見つつ
「合掌」
と心で呟いた。
綺羅はふぅと息を吐き出すと
「おい、いま言った情報を寄こせ」
と告げた。
日向はショックから我を取り戻すと
「ああ、店員は通報してきた桜井美咲と店長の池尻律夫、それから市場暖という宝石鑑定をする店員と今回被害にあった阿倍萌子だ」
と告げた。
昨夜店が閉まってからのアリバイについては桜井美咲は帰宅し一人でいたということでアリバイは無し
「池尻律夫は閉店後に宝石の買い付けに九州へ行っていて今事件の連絡を受けて戻ってきている最中だ」
市場暖は閉店後は宝石鑑定協会で行われているセミナーに参加しその後は帰宅して一人だったということでアリバイはない
綺羅はフムフムと聞きながら
「なるほど」
と言い
「それで被害者の周辺で彼女と親密にしている人物はいないのか?」
と聞いた。
それに功一が首を傾げ
「綺羅、どうして被害者の周辺の人間を?」
と聞いた。
綺羅は功一を見て
「お前、この店内を一周してこい」
と睨んだ。
功一は「店内か?」と言い周囲を見ながら歩いて戻ってきた。
「いや、流石に高級宝石店で店内は綺麗だし整理されているな」
宝石は無いけど
綺羅はそれを聞き
「それで?」
と返した。
悠も首を傾げつつ
「綺羅?整理された店内だと何かおかしいのか?」
と聞いた。
綺羅は悠に笑みを見せて
「流石は悠だな」
と告げた。
功一は「おいおーい、悠には優しく俺には塩対応かーい!」とビシッと心で突っ込んだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




