性格極悪少女と水先案内人
聡以外の4人が綺羅を見た。
綺羅は彼らに
「神在月って苗字は殆ど聞く事がない」
出雲で10月を示す言葉だ
「他の地域では神無月」
つまり神在月直もまた母や叔父と同じように家族がいなかったんではないかと思う
「出雲地方の施設で秋の月…つまり10月に保護された子供」
と告げた。
「だから家族のことを考えずに二人の遺品も引き取れたのかも知れない」
聡は頷いて
「まあ、9割はそうだな」
と答え
「さて、リンゴと箱か」
玲の謎かけの答えを探さないと迷宮入りだ
と告げた。
綺羅は一瞬だけ聡を見たが
「…そうだな」
先ずはそこからだな
と本棚を見た。
「本棚から攻めていくか」
悠も頷くと
「そうだね」
と言い
「もし許されるなら」
お母さんの遺品とか持っていたら貰いたいかな
と呟いた。
功一は微笑み
「確かにそうだな」
と言い
「先ずは、ここの探索から一歩だ」
と告げた。
綺羅も頷いて
「ああ」
と答え、本棚の3段目からチェックを始めた。
日向も静音も反対側の本棚を探り始め、聡もまた机の中を探り始めた。
本棚は二重棚になっており、その蔵書は半端なものではなかった。
かなりの努力家だったのだろう。
2時間ほど調べ綺羅は小さく息をつくと
「しかし、性格もきっちりしているようだな」
分野別に分かれているし
「付箋の数も半端ない」
と呟いた。
聡は笑って
「和則は努力家だったからな」
直は感覚で小説を書くところがあって言葉の使い方とか浮かんだ言葉の意味とかを
「良く聞いていたな」
と告げた。
「玲と直は天才肌で和則と俺は努力型だったな」
…だから直は恐らく答えを持っている…
綺羅は聡の背中を見て
「だが彼自身は決着をつけようとはしていないんだな」
と告げた。
聡は笑んで
「それもあいつの思いやりだろう」
と呟いた。
そして、机の引き出しを締めると時計を見て
「取り敢えず食事にしようか」
食事をしてから再開だな
と言い、功一を見ると鍵を一つ出した。
「ここの合鍵だ」
君に託す
「俺も厚村も鮎原も仕事でそうそう動けないこともある」
もし探索の気持ちがあるなら頼む
功一は受け取り
「…俺を信用してもらえたんだ」
と呟いた。
聡は微笑み
「俺は人を見る目はあると思っている」
と笑った。
「君たちを信用している」
功一は慌てて自らのキーホルダーにつけて
「絶対に失くしません」
と敬礼した。
悠は笑顔で
「良かったな、功一」
と告げた。
綺羅も「ま、妥当なセレクトか」と心で呟いた。
「迷探偵だし口が軽いところもあるが…悪くはない」
一応、認めているところは認めている綺羅であった。
国立図書館にはランチが食べられるレストランがあり、ある一部の人たちは個室タイプになっている場所を使うことが出来るのだ。
聡はその場所を頼んでおり、レストランに姿を見せると案内係の男性に軽く会釈をした。
男性は「こちらへ」と言うと一般の人々が食べる場所へ向かう手前の角を曲がり幾つかある個室の一つに彼らを誘った。
テーブルがありメニューが既に置かれていた。
聡は「好きなモノを」と綺羅たちに勧めた。
綺羅はさっぱりと
「遠慮なく」
と言うと
「Aランチ」
と告げた。
「から揚げがある」
…。
…。
悠は小さく笑って
「綺羅はから揚げが大好きだな」
と告げた。
綺羅はそれに
「ここのから揚げがどうか試食だ」
と笑みを浮かべた。
悠はメニューを見て
「じゃあ俺はCランチで」
と極々普通のハンバーグランチを頼んだ。
功一は悩みながら
「俺もCで」
と答えた。
聡は普通に
「俺はカレーだが、厚村と鮎原は?」
と聞いた。
日向は「俺もカレーで」と短く答え、静音は「俺もカレーで」と答えた。
綺羅はそれに
「刑事の性だな」
と呟いた。
ウェイトレスにオーダーを通し全員が顔を見合わせた。
聡は息を吐き出し
「あの玲が…そう簡単に分かる場所には隠さないか」
と呟いた。
綺羅はそれに
「だが見つけなければならない」
と告げた。
それに反対する人間はいなかった。
その時、日向の携帯が震えた。
一課からである。
日向は立ち上がると
「すこし失礼いたします」
と言うと部屋の隅へ行き応対に出た。
そして、携帯を切って戻った。
聡は日向に
「事件か?」
と聞いた。
日向は頷いた。
「局長は」
聡は立ち上がると
「行かなければな」
と告げた。
「公用は公用」
私用は私用だ
聡は綺羅たちを見ると
「支払いは済ませておくので君たちはゆっくり食べて行きなさい」
鍵は渡しておいたし
「時間を見て探索をしておいてもらいたい」
俺も時間を見て探しておく
「目印をつけておいてくれると助かる」
と告げた。
綺羅も悠も功一も頷いた。
日向と静音と聡は部屋を出て事件へと向かった。
綺羅たちは運ばれてきた料理をゆっくり堪能し、再び神楽和則の部屋に戻ると続きを探し2時ごろになって鍵を閉めると後にした。
見つからなかったのだ。
暗号に示すものが。
功一は肩を動かしながら
「ま、まだ探す場所があるから希望はある」
と呟いた。
綺羅はふっと笑うと
「お前はツクヅクおめでたい人間だな」
と呟いた。
功一は目を細めて
「あのな」
と言いかけた。
が、綺羅は
「だが、その根性は探偵に向いている」
と告げた。
功一は目を見開くと
「…そ、そうか」
そうだな
「探偵は真実を見つけるまで粘る必要があるからな」
と笑顔を浮かべ
「綺羅も偶には良いことを言うな」
と告げた。
その瞬間に綺羅は功一の脛を蹴った。
…。
…。
悠は功一に
「功一さ、一言多いから」
偶には入らないだろ
「綺羅は優しいけど功一のそう言う言葉が綺羅を傷つけて意地悪にさせるんだぞ」
と注意した。
功一はハッとすると
「すまん、反省した」
と答えた。
三人が国立図書館を出たとき功一の携帯が震えた。
功一は相手の名前を見ると
「あ、厚村さんだ」
と呟いた。
それに綺羅も悠も同時に
「「依頼だな」」
と心で呟いた。
想像通り依頼であった。
図書館を出たところだと伝えると迎えに行くと返事があり、綺羅たちは図書館の前で待つことになったのである。
事件は図書館のある東京駅から少し離れた商業施設が立ち並ぶ一角で起きていた。
直ぐに日向と静音が車で戻り、三人を乗せて高級ブティックなどが並んでいる一か所で停まった。
宝石店である。
綺羅は車から降りながら
「宝石強盗か」
と呟いた。
功一は頷いて
「そうだよな」
と答えた。
既に立ち入り禁止の黄色のテープが張られ警察官が立っていた。
中では鑑識が既に指紋などを採取していた。
悠はそれを見ながら一か所に白いテープで人型が作られているのに
「…誰か怪我人が出たのか」
と小さく呟いた。
功一は横に立ち
「みたいだな」
と言い、日向に
「それで事件の解決に俺達を?」
と聞いた。
日向は頷いて
「今日の朝に店員の桜井美咲という女性が出勤して同じ店員の阿倍萌子という女性が倒れているのを発見して救急と警察に通報してきたんだが調べたら店の宝石が盗まれていて宝石強盗として調べている」
と告げた。
綺羅は腕を組み
「なるほど」
と答えた。
悠は心配そうに
「それでその女性は?」
と聞いた。
日向は彼を見て
「ああ、救急車で運ばれて現在手術中だが…意識不明の重体だ」
と答えた。
功一は頷いて
「助かったらいいけどな」
と告げた。
綺羅は二人を一瞥し
「それで呼んだ理由は?」
と聞いた。
「ただの宝石強盗だったら態々呼ばないだろ?」
静音がそれに
「そうそう」
と言うと
「実はその被害者の阿倍萌子さんがネックレスを握っていて」
ダイイングメッセージかもということなんだよねぇ
と告げた。
功一は「おお」と声を上げると
「良くドラマである犯人を示すメッセージか」
俺の名探偵としての活躍どころだな
とフンッと気合を入れた。
綺羅はそれに
「ドラマ…か」
流石、迷探偵だな
「ドラマとリアルをごったにしたらダメだろ」
と心で突っ込んだ。
「まあ、暫くは功一に任せておくか」
そう心で付け加えて店内を歩き始めた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。