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性格極悪少女と水先案内人

10月28日。

あの神在月直に国立図書館へ行くと約束した日である。


水先案内人と合流することになるのだ。

多少の緊張はある。


綺羅は準備を整えて部屋を出ると待っていた悠を見た。

父親の勇仁は昨日から泊まり込みの仕事でこの事は知らない。


悠は携帯で時間を見て

「今から出たら10時くらいに着くから丁度いいな」

と告げた。


綺羅は頷いて

「そうだな」

と言い

「それで金魚の糞は来るのか?」

と聞いた。


悠は溜息を零すと

「綺羅、もう少し功一に優しくしないとダメだろ」

功一はあれで俺や綺羅の事を大切にしてくれているんだからな

と嗜めるように言い

「功一なら駅で待ち合わせしてる」

と答えた。


綺羅は「…そうだな、わかった」と答え、二人揃って家を出た。


神在月直が力になってくれるといった人物がどんな人物なのか。

様々な憶測が脳内を駆け巡る綺羅であったが、結局のところ会うまでは分からないということだ。


二人の頭上には晴れ渡った秋の爽やかな青が一面広がっていた。


パーフェクトクライムの資料集


綺羅が称した金魚の糞は四辻橋駅の改札口で待っていた。

綺羅と悠は飯島功一と合流して東都電鉄に乗って鶯谷駅でJRに乗り換えると東京駅へと向かった。


国立図書館は東京の中心地かつて江戸城があった皇居の近くにある巨大な図書館でその蔵書は日本中の書籍を網羅し、且つ海外の本も多く保管されている。


その半分以上の本は既にデータ化されて図書館内のパソコンからアクセスできるようになっているのだ。


建物は本館も奥にある新館別棟も洋風建築で綺麗なシンメトリーの造りであった。


綺羅と悠と功一は国立図書館の本館に入ると内装を見回しながら本を読んだり勉強したりするフリースベースへと向かった。


功一は綺羅に

「今日、水先案内人になってくれる人が居るって言ってたよな」

と呼びかけた。

綺羅は頷くと

「ああ、そう言っていたな」

名前までは聞いていなかったが

と告げた。

「普通は待ち合わせなら目印を持ち合わせているべきなんだろうが」


そう言う話はなかったのだ。


悠はう~んと

「…でも俺達が今日来ることと目的をきっとその相手の人には言ってると思うんだが」

と呟いた。


綺羅はふぅと息を吐き出すと

「だが、俺達が会った事もない人物だったら…顔がわからん」

と告げた。


考えればせめて相手の名前や顔写真や…最悪でも互いにこういう格好で…というのが無くてはならなかったのだ。


綺羅は「俺のミスだな」と呟いた。

が、功一は

「そんなことはない」

と告げた。


綺羅は驚いて

「功一…お前」

と言いかけた。

それに被るように功一が

「名探偵の俺のミスだ」

と腕を組んだ。


…。

…。


綺羅は「思いやりがあるんだな」と言いかけた言葉を飲み込み

「ここで名探偵押しかよ」

と心で突っ込み

「そうだな、名探偵なら気付かないとな」

というにとどまった。


その背後から小さな笑い声が流れ

「…相手が君たちを知っているとパターンもある」

と立花聡と厚村日向と鮎原静音の三人が姿を見せた。


功一は驚いて

「え!?もしかして…厚村さん達が…」

と指をさした。


綺羅は目を細め

「まさか」

と呟いた。


立花聡は静かに笑むと

「そのまさかだよ」

と言い

「後で全ての話をしよう」

ここでは他の人の迷惑になる

と誘うように歩き出した。


まさか、警戒しなければならない…と思っていた相手が水先案内人とは。

神在月直を信じてきたが、本当に信じていいのか綺羅としては複雑な心境であった。


だが引き返すわけにもいかない。


綺羅は功一が先に歩くのに

「仕方ない、取り敢えず話だけは聞いてやるか」

と歩き出した。


悠はそれに横に並ぶように足を進めた。


立花聡は本館の二階に登り右手側にある扉の前に立つ警備員に敬礼すると前を通り抜けて扉を押し開けた。

その向こうに新館別当へと続く渡り廊下がある。


限られた人間だけしか入ることが許されない特別な建物であり空間であった。

廊下の反対側にも扉がありそこを開くと少し広い空間となっていた。


立花聡は廊下側の戸を閉めて振り返ると綺羅と悠と功一を見た。

「私の名前はまゆずみ聡と言い…警察庁刑事局長を務めている」


悠と功一は驚いて

「「刑事局長!?」」

とおうむ返しに告げた。


刑事の中でもトップである。


綺羅は黙って彼を見つめ

「それで立花聡というのは?」

火事で死んだお前の知り合いの人物の名前でも語っているのか?

と告げた。


立花聡は首を振ると

「岩手の雫石町で立花颯、聡一、黒崎零一、立花聡…いや、黒崎悠里と玲も死んだと聞いたかもしれない」

と言い

「話せば長くなるが…話しておくべきだと思ってこの機会を手にした」

と告げた。

「君たちが箱嶋飛鶴氏から君たちのルーツを遡るように言われたと思う」

恐らく黒崎茜、そして、その父である黒崎零里に辿り着いたのではないかと思うが


綺羅は頷いた。

「ああ、JDWの創始者である黒崎零里は俺達の母である黒崎悠里の曾祖父だった」


立花聡は頷いて

「俺の曾祖父も同じだ」

と告げた。


それには綺羅も悠も驚いて目を見開いた。


立花聡は二人を見て

「俺の父親は立花家の一人息子の立花聡一ではなく…彼が実家に帰る前に後継ぎがいなくなってはということで立花家へと養子に入った立花颯つまり黒崎颯だ」

悠里と玲は祖母である茜に似ていたが

「俺は祖父である一色一颯に似ていたから立花家の人間か黒崎家の人間か判別がつかなかったんだと思う」

俺は父と立花の伯父の二人に育てられたようなものだったからな

と一気に話すと息を吐き出した。

「あの夜のあの火事に俺はずっと疑念を抱いている」

父も叔父も立花の伯父も火事で死んだのではなく

「その前に死んでいたか動けなくなっていたのだと思っている」


功一と悠は同時に

「「それってまさか」」

と呟いた。


綺羅は冷静に

「三人は殺されたということだ」

と告げた。

「あんたは何故助かった?」

俺の母も叔父も


聡は腕を組むと

「俺は今の父であり、立花の伯父の義理の弟であるまゆずみ勲に助けられた」

眠っていて気付いたら彼に抱かれていた

と言い

「当時は三歳だ」

薄っすらとした記憶しかなかったが

「一枚だけ…何時も手にしてた写真を持っていたので記憶は残っていた」

と胸元から一枚の古い写真を綺羅と悠に渡した。


そこには母親である黒崎悠里と玲と、そして、父親たちと聡が笑顔で写っていた。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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