性格極悪少女とキーナンバー
悠は綺羅を見ると
「あの紙を写真で撮ってたけど、何かあるのか?」
と聞いた。
綺羅は「ん?ああ」と答えるとリビングの椅子に座って寛ぐ父の勇仁の視線を受けながら
「いや、階段から落ちて意識が朦朧とした状態でもメモを握りしめるって余程何か言いたいことがあったのかと思ってな」
と告げた。
「警察は余り気にしてないようだがな」
勇仁は身体を起こし
「どんな写真だ?」
と悠を見た。
悠は携帯を開けて写真を呼び出した。
綺羅と勇仁は携帯を見た。
勇仁はそれを見て
「…今日の日付けに芸術祭って書いているから見に来てくれた人かも知れないな」
だが一緒に書かれているこの言葉の意味が分からないが
と呟いた。
メモには今日の日付けと芸術祭と書かれ
『REND 1F63UA 東都B 022』
『23一二三』
と書かれていた。
綺羅は頷いて
「そうだな」
と言い
「だがこれを握りしめたのには理由がある」
と呟いた。
「無事ならその謎も解けるが」
しかし。
階段から落ちた人物は意識不明の重体のままであった。
翌日、綺羅は授業を終えると何時ものように校門のところで悠と落ち合った。
が、隣には綺羅曰く金魚の糞の飯島功一ともう一人鮎原静音が立っていた。
「金魚の糞は何時も通りだが…何故ここにお前がいる」
とギンッと綺羅は静音を睨んだ。
功一は「それって、俺が金魚の糞か??」と心で突っ込みながら二人を交互に見た。
静音はにっこり笑むと
「綺羅ちゃん、相変わらず手厳しい表情で見るね」
と言い
「綺羅ちゃんの予測通りに依頼なんだよね」
アハハと笑った。
綺羅は冷静に
「俺は予測などしていない」
と答え
「お前か、連れて来たのは」
と矛先を功一に向けた。
静音が自分の嫌味などを軽く交わすことを本能で理解しているからである。
功一はそれを受けて
「俺に白羽の矢かーい」
と心で突っ込み
「そこで厚村さんが車で待っているから」
乗ってから話をしてくれるってさ
と告げた。
「ったく、綺羅が居なくても良いと俺は思うんだけどな」
綺羅は心の中で
「お前一人だと事件は迷宮入りだがな」
と言い
「ったく」
とぼやいた。
悠は困ったように笑み
「厚村さんがお願いしたいって連絡を取って来てくれたんだ」
綺羅は一緒に行くのは嫌か?
と聞いた。
綺羅は悠を見て
「悠は行くんだろ?」
と告げた。
悠は頷くと
「ん、そのつもりだけど」
と答えた。
「功一一人だと寂しいと思うし」
綺羅は「わかった」と答え
「寂しいって…そう言う問題ではないと思うが悠は優しいな」
と心で突っ込んだ。
綺羅は悠と功一と共に静音に誘われるまま日向の車に乗りこんだ。
車は東都病院に向かって走り、病院内に入院している一人の男性の元へと案内されたのである。
現在ICUで治療を受けて意識不明の男性。
先日階段から落ちた男性であった。
綺羅と悠は同時に「「あ」」と声をあげて息を飲み込んだ。
功一は悠に
「悠、もしかしてこの人知っているのか?」
と聞いた。
悠は綺羅を一瞥し
「ああ、昨日の芸術祭の日に四辻橋駅の階段から落ちて救急車で運ばれた人」
その場にいたんだけど
と告げた。
日向はそれを聞くと
「やはりな」
君たちの名前が聴取の中にあったので来てもらった
と言い
「実はこの男性は二課がにらんでいた企業の経理を担当していた人物でガサ入れする寸前での、この事故だったんだ」
と告げた。
「それが気になってな」
綺羅はそれに
「タイミングだな」
と告げた。
日向は頷いて
「そうだ」
と告げた。
綺羅はフムッと息を吐き出し
「そのヒントになりそうなのは、あのメモだな」
転落した時に握りしめたメモ
と告げた。
日向は綺羅を見ると
「?…なんだソレは?」
と聞いた。
静音も目を見開き
「綺羅ちゃん、そのメモっていうのは?」
と聞いた。
悠は携帯を出すと
「これです」
落ちた人が握りしめたメモです
と告げた。
日向は驚いて
「いや、それは報告を受けていないが」
と言い
「状況を詳しく聞こうと思っていたが…依頼して良かったということだな」
と告げた。
「そのメモは警察に?」
悠は頷いて
「はい、綺羅がメモのことを駆けつけた警察官に言ってます」
と答えた。
綺羅は腕を組み
「だが、さして気にした様子もなかったな」
ただの転落事故と見ていたみたいだからな
と告げた。
日向は「わかった」と答え、携帯で連絡を入れると
「担当の隅田警察署へ寄ってから警察庁へ向かう」
と告げた。
5人が隅田警察署に着くと署長が待っており直ぐにメモを日向に渡した。
「申し訳ありません」
警察庁の方でそんな事案に関わっている者だとは思わなかったので
「ただの転落事故だと」
日向は「いや、メモをすぐに用意していただいただけで」と言い
「ただ転落事故と判断するのは少しお待ちください」
二、三日中にはご連絡を
と答えた。
綺羅はそれに
「おい、手帳とかはなかったか?」
と聞いた。
「手帳があればそれも貰いたい」
署長はそれに首を振ると
「いえ、手帳はなかったです」
私もメモが何か手帳をちぎったものだと思い手帳についても鑑識に聞きましたが
「男性の持ち物からも周りからも見つからなかったようです」
財布と定期だけでした
と答えた。
綺羅は「そうか」と答え目を細めた。
日向はフムッと
「わかった」
手数をかけた
と言い、踵を返すと車に乗り込んで警察庁へと向かった。
静音は車の助手席で
「しかし、よく写真に収めていたね」
悠君
と告げた。
悠は首を振ると
「いえ、写真を撮ったのは綺羅で」
と告げた。
静音は「なるほどー」と言い
「流石は綺羅ちゃんだ」
と告げた。
綺羅はフムッと息をつくと
「ただ単に落ちて意識が朦朧とした状態でもそのメモを握ったということに興味を持っただけだ」
と呟いた。
「だが、本体が無いということは…」
功一は綺羅に
「で?綺羅、そのメモには」
と聞いた。
綺羅は功一を見ると
「…俺は持ってない」
持ってても見せないけどな
とケッと応えた。
功一はハハッと乾いた笑いを零し
「おいおい」
と言い
「綺羅は本当に可愛くないガキだな」
と呟いた。
悠は慌てて
「功一、これだ」
と携帯を渡した。
功一は悠に笑みを見せると
「悪いな」
悠と綺羅が兄妹とは思えない…こともないけどな
「性格が違う兄妹は世の中にはたくさんいる」
と呟いた。
そして、携帯を見て
「日付は昨日かお前らの親父が劇をした芸術祭の日だな」
芸術祭って書いているから芸術祭に行ったってことか
「けど、おっさん一人で芸術祭って寂しいよな」
とぼやいた。
それに綺羅と日向は
「「あ」」
と同時に声を零した。
悠は二人を交互に見て
「厚村さんに…綺羅?」
と呼びかけた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




