極悪美少女探偵登場…本人はやる気なし…
瞬間に扉を開けて入ってきた悠は困ったように
「綺羅、そんなことを言ってはダメだ」
警察の人は町の安全のために頑張ってくれている
「嫌いだなんて言ってはダメだ」
と嗜めるように注意した。
綺羅は少しぷっと頬を膨らませたものの
「わかった」
けどこのおじさん怖い顔してるから
と視線を下に向けた。
厚村は心の中で
「絶対に違う理由だろ」
と突っ込んだ。
悠は優しく微笑んで抱きしめると
「確かに厳つく怖さを感じるかもしれないが皆の為に一生懸命頑張ってくれているんだ」
外見で人を判断してはダメだぞ、綺羅
と綺羅の髪を撫でた。
厚村は引き攣りながらハハッと乾いた笑いを零すしかなかった。
何だ?この兄妹は…である。
だが、少女の推論はかなり正確な上に裏付ける写真も撮っている。
「探偵なのはこの子の方じゃないのか?」
と彼は思いながら立ち上がると
「妹さんが思い出してくれたことは凄くためになった」
それから
「君の友人はサイトをちゃんと消したのかな?」
と聞いた。
悠は静かに「はい、消させました」と答え頷いた。
厚村は頷き
「よし、代わりにもし機会があれば俺からその探偵志願の親友に依頼をしよう」
妹さんと君も一緒に来てくれ
と告げた。
悠は目を見開くと
「え?」
功一たちは喜びますが俺達は別に
と答えた。
綺羅は隣でガンを飛ばしながら
「当然だ、ふざけんな!警察野郎!」
と目で訴えた。
厚村は笑いながら
「じゃぁ、また」
と敬礼をすると無理やり悠に渡されたチョコロビットを受け取りながら立ち去った。
翌日、寒山美津子の逮捕を知らせる記事が新聞に載った。
彼女は夫の保険金と遺産を狙って犯行に及んだと自供したのである。
凶器も庭の奥の木々の根元から出てきたと記載されていた。
悠は新聞を見て
「まさか、あの人が…人は分からないものだな」
と視線を伏せた。
綺羅はランドセルを背負いながら
「でも、犯人が捕まって良かったと思う。悠たちが言ったことが役に立ったんだ」
おじさんも浮かばれる
と言い
「夫を殺して金を手に入れたところでバレれば全てを失うどころか一生を棒に振る。それなら離婚訴訟や他の方法を選んだ方が良い。犯罪はどこまで行っても人を救ったりはしない。完全犯罪となっても必ずどこかで報いは受ける」
と心で呟いた。
悠は頷き
「そうだな、犯人が捕まったのは幸いだったよな」
と言い、鞄を持つと
「行こうか、綺羅」
と手をつないだ。
綺羅は手を掴み
「うん」
と握り返した。
そして、エレベーターで一階へ降りてマンションから出るとふと頭上に広がる空を見上げた。
ただ。
そう、ただ。
綺羅は心の中で
「そう言えば…あの人の言葉…」
と呟いた。




