性格極悪少女と神在月直
何かが割れる音がした。
「?」
目を擦って布団から出ると戸を開けて皓々と明かりの点いているリビングに足を踏み入れた。
「お父さん、音がしたよ。起きてるの?」
そう言って目を開けて逆光で見えない男性の姿を見上げた。
向こうでは父親と叔父と叔父さんがテーブルに突っ伏して眠っている。
男性は笑みを浮かべ
「…お父さんは寝ているから、君も寝なさい」
良い子だから
「おやすみ」
と告げた。
闇の中で両端が上がる口元だけがはっきりと見えた。
「…お父さんも眠ってるの?」
男性は笑みを深めて
「そうだよ」
だから
「起こさないようにね」
と告げた。
小さく頷いて
「うん…お父さん、おやすみなさい」
と後ろの父に声をかけて部屋へと戻った。
戸を閉めて、少し乱れた従弟の上布団を直して布団の中に入って目を閉じた。
何故かゾワゾワとした。
怖くて。
怖くて。
あの歪んだ笑みを作る口元が怖くて眠りについた。
だけど、気付いたら囂々と燃える炎が照らす中で男性に抱かれていた。
男性は弟の手を掴んで
「君たちだけしか助けられなかった」
そう呟いて立っていた。
「先のおじさん…?」
男性は悲し気にそれでも優しく笑みを浮かべた。
「?…違うよ、箱嶋というんだ…君のお爺さんの友達だよ」
優しく。
温かく。
包み込むような微笑みが『安心していいよ』と言っているようでフワリと眠りに落ちた。
そして…目覚めると記憶が失われていた。
パーフェクトクライムの資料集
9月の三連休で綺羅と悠は自分たちのルーツを遡った。
それが川瀬ひかりのリストの謎と同時に母親と叔父の死の謎を解くと言われたからである。
行きついた先に待っていたのは『JDW』という過激派組織。
その首謀者が自分たちの曾祖父だったということである。
曾祖父は既に他界していたが、その組織が今なお存在しているかもしれないことが分かったのだ。
綺羅は帰宅した後に『JDW』という組織をどう調べるのかを考えた。
「先ずは命を狙われている神在月直に会ってそれとなく聞くか…だな」
命を狙われる理由をな
綺羅は布団の中でゴロゴロしながら考え、起き上がると服を着替えて部屋を出た。
父親の皐月勇仁は心配そうに綺羅たちが帰ってきた三連休後の数日をオフにすると喚いていたが、パーフェクトクライムの資料集のドラマの公開撮影は無くなっても撮影はあるので御蔵宏司に引き摺られていつものように俳優業へと駆り出されていた。
他にもKEIGIの撮影も最近ではハートフルバディというアクションドラマのW主演のオファもあって売れっ子の忙しい悲哀を漂わせていたのである。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。