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第056話「第二と第三の事件 その一」

■05月18日 午後:レオン死亡から三日、ヴラドとグリューン死亡から一日経過


「お前が第二皇女と第四皇子にした外道な行為について、紐づかせてもらうわ」

「――――」


 フレイヤの言葉に対して、もう何も言う気力が無いのか、俯きながら黙る女帝たち。

 そんな彼女たちを無視しながらフレイヤは自身の推理を話し始めた。


「まず、この事件は第四皇子が部屋から居なくなったことから始まった。正確には日中に、女帝と第三皇子が騒ぎ始め、それを私たちが知ったことから始まった。

 と言うのも、帝国側は知っていると思うけど第四皇子は持病の都合で、日の元には長時間居られず、最悪死ぬ可能性があった。

 そんな人間が日中に居なくなったとあれば……私の言いたいことは分かるわよね?」


 フレイヤの言葉に部屋に居た全員が大きく頷く。


「そんな状況だったからでしょうね。

 第三皇子は途中で様子を見に来た敵国の私たちに頭を下げてまで必死に第四皇子を探していた。

 そうだったわよね。第三皇子のアレクセイ」

「ああ、その通りだ。

 あの時、俺は弟を……ヴラドが見つからず……必死に探していて。

 女帝も……母にもお願いして……ヴラドを探して……そうか、あの時、母がヴラドの捜索に協力的だったのは……ヴラドの死体を俺や他の人間に見つけさせないために……協力的なふりをしていたんだな……

 いや、母のことだ。必死に死んだ人間を探す俺たちを嘲笑うために……」


 フレイヤの質問に無気力ながらもしっかりと答える第三皇子。

 その様相はあまりにも見ていられず、私は思わず視線を彼から逸らしてしまった。

 しかし、そんな私とは正反対にフレイヤはしっかりと第三皇子の方を見て、話を続けた。


「ええ、その可能性は高いわ。

 何故なら、あの捜査をしている時、第四皇子は既に殺されていた可能性が高い。

 それも恐らく()()()()()()()で」

「はっ、そんなことあり得ないわ!!」


 フレイヤのその言葉を発した瞬間、先ほどまでの絶望的な表情は何処へやらまるで水を得た魚のように女帝は唇を歪に上げた。


「あの時、私たちは全員がありとあらゆる場所を、それこそ髪の毛一本すら見逃さないように注意しながらあの部屋を捜索した。

 でも、それでもあの子は見つからなかった!

 そんな状態でどうやって、あの子を隠したと言うの?

 まさか、外に放置しておいたとでも言うの?

 少しでも日差しを浴びれば体にそれが出てくるあの子に?」

「ええ、その通りよ。流石犯人。よく分かっているじゃない。

 私たち全員があの部屋を捜索していた時、()()()()()()()()()()()()()()

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に殺された」

「ッ!!」


 フレイヤの言葉に抵抗は無意味だと感じたのだろうか。

 フレイヤの言葉に一切反抗せずに女帝は静かに椅子に座った。

 そして、そんな彼女とは反対に第三皇子はその声を荒げた。


「ま、待て!

 あの時、俺たちは全員が捜索していて、殺すことなんて出来る隙なんて無かった。

 それも、あの子の死体は……」

「ええ、日差しを浴びたら出るはずの症状が見当たらないほど綺麗だった。

 そのことを考慮すれば、第四皇子は外では殺されていないと思うのが普通でしょうね。

 だけど、逆に言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事よ。

 そして、あの部屋はその条件が揃っていた。

 何故なら――――」

「あの部屋は、あの子の病気のために高い遮光のカーテンを使っていた……

 それを使えば……」

「ええ、ただでさえあの部屋は暗く、失踪とはほぼ関係ない部屋のカーテンが何枚無くなったかどうかなんてあの緊急事態の中で確認するなんて余裕はなかったし、その後もわざわざ確認する暇人も居ない。

 何より、あの事件が起きる前のカーテンが何枚あったかどうかなんて把握している人間なんてほぼいないから、女帝は第四皇子を日差しから避けるためにあの部屋の遮光カーテンを使った可能性が高い。

 もちろん、遮光カーテンの代わりになるものを事前に用意していたと言う可能性も0じゃないけど、どちらにしても日差しを浴びたらそれが体に出てしまう第四皇子を日の元に移動させる方法は存在すると言うことになるわ。

 しかし、ここで二つの大きな問題が出てしまう。

 一つは、生きていても死んでいても第四皇子を持って移動すれば嫌でも目立ってしまう事。

 もう一つは、第四皇子をどうやって殺して、好きなタイミングまでその遺体を隠すか。

 この二つを解かない限り、この事件は解決できなかった。

 何故なら、第四皇子の遺体を私たちが発見する前にある不可思議なことが起きたからよ」

「不可思議なこと?」


 第二皇子の言葉にフレイヤは大きく頷く。


「どれだけ探しても第四皇子を見つけられなかった私たちはまず、第二皇女の部屋に行き、第四皇子が居ないかどうか聞き、知らないとの返答を貰ったわ。

 その後、それぞれで手分けして探索範囲を広げた私たちは……そうね。第二皇女の部屋から出て約十分程度かしら、不意に第二皇女の部屋から叫び声が上がった。

 それを合図に第二皇女の部屋に行った私たちは、腰を抜かしてしまった第二皇女が指さす方向を見た。

 するとそこには、今まさに黒いローブに包まれた何かを吊ろうしている人物が居て、私たちがその人物を発見した数秒後、その人物は実際にその何かを吊ろうとした」

「何か……って、もしかして――――!!」

「私たちも最初は第四皇子が吊るされたのかと思っていた。

 だから、万が一のことを考えて急いでその現場へと向かった。

 しかし、約30分ほどかけて着いたその場所には木に吊るされた黒いローブだけがあり、第四皇子の遺体はなかった」

「では、その時にはヴラドの遺体は無かったと言う事か?

 なら、どうやってヴラドの遺体を発見したんだ?」

「そこについては、私が説明します」


 一歩前に出た私はそう言うと、ゆっくりと深呼吸した後、口を開いた。


「ここに居る多くの方はご存じだと思いますが、私は時の魔法。時間を操る魔法が使えます。

 その中には、未来に起きることを見ると言う魔法もあります」

「では、リリー嬢は未来を見て、二人の死を確認したと言う事か!?」

「は、はい。その通りです。

 国王」


 私の言葉に何故か前のめりになるほど、嬉しそうな表情を浮かべる国王と、そんな国王に反して苦虫を噛みしめるような表情を浮かべるフレイヤ。

 何か不味い事でも話したのだろうか。と、相反する二人の反応に少し困惑しながらも、私は話を続ける。


「もちろん、この魔法が使えたのは今回が初めてです。

 でなければ、今回の事件が起きることを予見し、事前に事件を止めることが出来ましたし、それを知って、見過ごすなんてことは出来ませんから」

「まあ、そうであろうな。

 タイム嬢ほどの善良な貴族が、今回のような事件を見過ごすなどのようなことはしないだろう」


 国王の異常なほどの持ち上げに私の心は一気に罪悪感に染まる。

 何故なら、私が見たあの幻視が本当に未来予知なのかどうかか分からず、またそれを私自身が認めた瞬間に、あの時に同時に見た公爵やフレイヤが私を殺すと言うあれも未来予知になってしまうからだ。

 だが、それでも……あの女帝に罪を償わせるためには、この情報(ウソ)は必ず必要になる。


「はい。なので、その予知を見た私たちは急いで第四皇子の部屋へと向かいました。

 時間的には木の場所へと着いてから数分も経っていなかったと思います。

 なので合計で約一時間で私たちは第二皇女の部屋から、吊るされていた場所、そして第四皇子へと行きました。

 そして、第四皇子の部屋に着いた私たちに待っていたのは――――」

「殺された第二皇女と第四皇子と言う事か」

「はい、このことから分かるように、その時に行動していた私、フレイヤ、ソウル公爵と夫人、マッドさん、そして王国の第一王子であるレイの五人には第二皇女と第四皇子の遺体を部屋に持ってくると言う方法は不可能であり、つまりアリバイがありました。

 アリバイがなかったのは、第二皇子の部屋に先に戻ってしまった女帝と……私たちと分断されてしまった帝国の第三皇子の二人です」

「第三皇子が居なかった……いや、アリバイが無かっただと!?

 おい、君! ヴラドの捜索時に皇配はいなかったのか!?」

「はい、居ませんでした。

 完全にそうだとは言えませんですが、少なくとも私たちが第三皇子を捜索していた際に参加していたのは先に上げた私たち5人と女帝と第三皇子の計7人だけでした。

 因みに同じ階に居た被害者である第二皇女はヴラド皇子が居なくなったこと。

 そのこと自体を知らない風でした」


 あんな言い方をした私も悪かったのだろうが、その一言を発した瞬間。

 私が言った言葉を誤認した第二皇子は隣に座り、今もなお悲壮感を漂わせる第三皇子の胸倉を掴んだ。


「と言うことは……おい、アレクセイ!!

 お前もヴラドの殺人に加担していたと言う事か!?」

「は? え?」

「とぼけるな! 女帝の部屋はアレクセイからもヴラドからも遠い位置にある。

 なのに何故近くに居るグリューンではなく、女帝に声をかけたんだ!!

 そんなのお前が女帝に協力したと言う何よりの証拠だろ!!」


 顔を真っ赤にしながら今にも殴りそうな勢いで第二皇子はまくし立てた。


「ちょ、ちょっと何を言っているんだ!

 俺は確かにグリューン……()()()()()()()()()()()

 そしたらあいつは体調が悪いって言っていて……それで……」

「嘘を吐け! この――――」


 そう言って、拳を上げようとした第二皇子の手首を私は優しく掴み、振り下げるのを止める。


「すいません。

 私の言い方が悪かったです。

 確かに第二皇女のグリューン皇女はヴラド皇子が居なくなったことを知らないとのことを言っていました。

 しかし、それは()()()()()()()()()()()()です」

「嘘……だと?」


 茫然とした顔で私を見つめる第二皇子と第三皇子。

 そんな二人へ向けて私は大きく頷いた。


「ええ、グリューン皇女は意図的に私たちにヴラド皇子が行方不明になったことを知らないと嘘を言いました。

 何故なら――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 そして、私は全員の目が点になる言葉を告げるのだった。

第二事件と第三事件は地続きの事件のため、前後編にいたしました。


楽しんでいただけたら、幸いです。

あと四話で終わる予定のため、最後までよかったら付き合ってください。

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