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第051話「少しずつ近づいていく真実」

今回は2話同時に掲載いたしました。もし50話を見ていなかったらそちらから見てください。

■05月18日 深夜:レオン死亡から三日、ヴラドとグリューン死亡から半日経過

「……眠れない」


 自分のせいで他人が死んだと言う事実のせいだろうか。

 あの後すぐに床に着いたにも関わらず私は未だに眠れず体を起こした。


「どうしたリリー。眠れないのか?」

「はい。

 もしかして、起こしてしまいましたか?」

「まあ、ずっとごそごそやっていたからね。

 気になってはいたよ」

「それは申し訳ございませんでした」


 そう言って、私は万が一のための護衛のために同室してもらったレイにお礼を言う。


「謝らなくて良いよ。

 俺たちは確かにまだ婚約候補者の間柄でしかないが、それでも俺はリリー、君のことを……その……」


 照れながらも私に愛の言葉を告げようとするレイ。

 そんな彼に今まで以上の愛情を感じた私は彼に向けて頭を下げる。


「ありがとうございます。

 その言葉と表情だけでもとても嬉しいです。

 ですが、私はまだ死に戻り前と同じで完全に安全とは言えない身です。

 なので、万が一のことが起きて死んだ時は私のことは忘れて幸せになってください。

 貴方を縛り、王族の血を絶やしかけるなんてことはしたくないですから」

「……ああ、分かった。

 本当に君が無くなった時はそうするから、だからお願いだから生きている間は万が一のことなんて言わないでくれ。

 例えその可能性があるとはいえ、好きな子からそんなことは言われたくないんだ」


 そう言って、私に近寄ったレイはその手を震わせながら、私の手を強く握る。

 そんな彼への愛おしさと嬉しさを感じながら、私は笑顔を浮かべながら、口を開いた。


「あははは、そうですね。申し訳ありません。以後は気を付けます。

 私も今度こそはちゃんとフレイヤやレイたちと一緒に生きたいですから」

「……リリー」

「……レイ」


 互いの目を見つめ続けていたせいだろうか。それともこの甘い雰囲気のせいだろうか。

 私はこの体がフレイヤの体だと言うことも忘れて、レイとの唇を重ねてしまった。

 子供のようなキスだが、好きな相手としたせいだからだろうか、私の体はどんどん力が抜けていき、押し倒される形でベッドに横たわった。


「な……イヤ……のか……このまま」

「今……ーアウ……、次……」

(? 今誰かの声がしたような)


 不意に耳に届いた何かの音に一瞬、思考が元に戻るが、レイのキスと体をまさぐられる快感にその全てがどうでもよくなる。

 そして、レイが自身の上着を脱ぎ、私の胸のボタンを手にかけた瞬間。


「はいはい、ソウル警察でーす。

 不純異性交遊はありませんかー?」

「ありませんかー!?」

「フレイヤ!?」

「ジーク!?」


 何故か青色の軍服のようなものを着たフレイヤとジーク……いや、オズルが扉を蹴破って私たちの前に現れた。


「フレイヤ所長。

 目の前に不純異性交遊の痕跡があります!!」

「おお、ほんとうですね。

 しかもこれは……

 キス、ワンストライク。

 押し倒し、ツーストライク。

 上半身裸、スリーアウト!! ルームチェンジ!! ジーク巡査」

「イエッサー。ほらルームチェンジだ。ロリコン変態兄貴」

「なっ、じ、ジーク。

 俺はロリコンでも、変態でもや、やめろ」


 まるで嵐のように現れたオズルによってあっという間に部屋から退出されたレイに私は思わず呆然とする。

 そんな私のことなど意に介さないと言うかのように手に持ったロープをぐるぐると巻きながらフレイヤは私の隣に腰掛ける。


「全くもう、何度も言っているけどその体は私の体なんだからキスまでは良いけど取り扱いには気を付けてよね。

 公爵家と王族の血を継いだ子供なんて権力厄災なんだから」

「それは本当にごめんなさい。

 思わず場に流されてしまって……」

「前から思っていたことなんだけど、もしかしてリリーって結構スケベ?」

「――――ッ、何を言っているんですか!?

 死に戻り前だって私はレイ以外には肌も触れさせてないですよ」

「くくく、意外とそんな子ほどスケベって話あるよ」

「だとしても私は違いますよ」

「どうだかな~」


 そう言って、ニヤニヤと私を見るフレイヤ。

 そんな彼女をこれ以上楽しませる必要は無いと判断した私は話を変えた。


「それで、フレイヤはもう大丈夫なんですか?」

「うん。今回の事件が起きた原因はその可能性が高いって、分かってたからね。

 受け入れること自体は普段よりも早めに出来たよ」

「そうですか。

 なら良かったです。

 ところでどうやってこの部屋に入ったんですか?」

「え? ああ、簡単だよ。この部屋はお父さんとお母さんが使用していたところだからね。

 だから、鍵を借りてそれで入っただけだよ」

「そうだったんですか。

 因みにさっきから巻いているロープは何ですか?」

「これ? これは単純に今朝の吊り下げの時に使っていたものだよ。

 回収はオズルに頼んでいたんだけど巻くまではしてくれなかったから私がしているの」

「まあ、オズル……と言うよりジーク様は王族ですからね。

 ロープの巻き方なんて知らないと思いますよ。

 むしろ、公爵令嬢なので簡単に出来るフレイヤの方が珍しいですよ」

「そうかな? 別に普通だと思うんだけど」

「フレイヤの普通は普通の公爵令嬢の常識ではないと気付いてくださいよ」

「えー、そうなの~?」


 そんなことを思いながら私はあの時のフレイヤの言動を思い出す。

 屋上から吊るされ……て……


「……フレイヤ。一つ聞いても良いですか?」

「うん。良いよ」

「フレイヤは調査のために自ら吊るされていたと言っていましたよね」

「うん」

「調査する以上は上下移動は自分の意思で出来ないと調査出来ないと思うのですが、どうやったんですか?」

「それは、オズルに協力してもらって私の合図に合わせてロープを緩めてもらって――――」


 私が言わんとしていることが分かったのだろう。

 フレイヤの顔はどんどん驚愕に変わっていく。


「そうですか。ありがとうございます。じゃあ、次の質問です。

 確か女帝の部屋は第一皇子の部屋の真上にありましたよね」

「うん。確かそうだったはず」

「ありがとうございます。では、最後の質問です。

 柵にロープを使った痕跡は無いと言いましたが、第一皇子の――――と犯人たちの部屋の――――に――――の痕跡はありませんでしたか?」

「そこは……見ていない。

 もしかして!!」

「はい、私は第一皇子の――――を確認します。

 フレイヤは女帝の――――を確認してください!!

 私の憶測が正しければこれで第一皇子のトリックは解けます!!」

「分かった!!」


 そう言って、私たちは互いに凄い勢いで扉を開き、それぞれの目的地へと向かった。


「第一皇子の遺体は確か……ここッ!!」


 周りの迷惑など関係なく力強く扉を開くとその瞬間、鼻孔に入り込む腐敗臭。

 そのあまりにも強い不快感に思わず顔をしかめる私だが、その不快感を飲み込みながら彼が死の直前まで着ていた――――を確認する。


「何処かに……痕が……何処かに……あった!!

 とするとやはり犯人はこうやってこの部屋から脱出したんだ。だとすると……待って。

 このトリックを使うと1()8()()3()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 第一屋上の一か所にあったロープの痕跡の意味が分から……もしかしてロープは痕跡じゃなく――――時間のコントロールのために使った!?

 そんなこと出来――――」


 延々と繰り返す思考の中、私は第一皇子の殺人が起きた顔合わせの時のことを思いだしていた。

 確か、フレイヤはあの衝突音がした時、女帝を弾き飛ばして第一皇子の救助に向かった。

 つまり、あの時第一皇子の近くに居たのは女帝と――――で、時間帯的に考えれば足元なんて見える時間じゃ……

 つまり……


「出来る。あの人たちだったら全部条件が揃う」


 そして、私の頭の中で第一皇子の事件の全ピースが揃うと同時に部屋にノック音がし、フレイヤが現れた。


「フレイヤ、どうでした?」

「うん、こっそり潜むのは大変だったけどどうやら別のことに集中していたみたいで気づかれなかった。

 因みに痕跡はバッチリ残っていた。

 リリーは?」

「こっちも証拠は見つかりました。

 では、後は第二皇女と第四皇子の事件ですが――――」

「それも分かったわ」

「本当ですか!?」

「うん。実は――――の部屋に入る時に少しピッキングに手間取っていたんだけどその時にあのバサナイトさんが助けてくれて、その時に彼女が一緒に重要な証拠を見つけてくれた」

「そうだったんですか。

 バサナイトさんのことは少し気になりますが、それよりもその重要な証拠って何ですか?」

「それは――――」


 そうして、語られるフレイヤの見つけた重要な証拠とそれを元に解かれるトリックの数々を聞くのだった。

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