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第028話「帝国の悪夢(帝国兵視点)」

この作品では珍しいバトルシーンです。

頑張って書いたので楽しんでくれたら嬉しいです!

■04月31日 夜明け前:帝国第一大戦当日


 帝国と王国の仲は一言いえば最悪の一言に尽きる。

 と言うのも、王国の土地は元々帝国の領土であり、王国の初代国王は帝国から莫大な領土を奪ったことで、成立した国だ。

 無論、帝国も自国の領土を奪われたことに、ただ指を加えていたわけではなく、誰の手も加えられていない土地を渡すからそちらで国を作れや、属国として扱うからあくまで帝国の一部としろなど様々な妥協案を出した。

 しかし、王国はその提案を全て却下し、初代国王とその家族、そして後にソウル家と呼ばれる人物とその家族の立った二人で国を作った。

 ゆえに、帝国は略奪者として、王国を潰そうと決め、実行した。

 帝国十万に対して、王国二名と言う圧倒的な兵力差を前に、誰もが帝国の勝利を確信し、柵と家しかない王国へ、必勝と言う結果を背負って向かって行った。

 しかし、現実は全くの逆であり、たった二人の人物によって帝国十万の兵は虐殺され、生き残った者は全て王国の平民へと落ちた。


 そのたった二人で帝国十万の兵を虐殺したと言う事実は、瞬く間に世界中に広がり、以降同じように王国に牙を剥いた国は万を満たない兵士によって、全滅されていく。

 結果、王国が建国してから十年と言う短い時間で、王国に牙を剥く国は無くなり、あっても初代国王と同じ時の魔法の使い手が居ない期間だけ行うと言う形式が常識となり、帝国も国を取り戻したい気持ちを押し殺しながら、その期を狙っていた。

 ゆえに、リリー・タイムと言う時の魔法の使い手が居る現在では、帝国は戦争する予定はなかった。


 しかし、一年前、帝国の王である女帝から、現代の時の魔法の使い手はまだ初代国王レベルではないことが伝えられ、戦争するなら彼女が覚醒する数年間だけだと言うことが知られ、一年の期間を使って戦争の準備を始めた。

 そして準備が完了すると同時にまるで狙ったかのように、第二王子のジーク・ブラッドの暗殺と言う国が混乱する出来事が起き、千載一遇と判断した帝国は徴兵した平民、農奴、犯罪奴隷を含めた、計三十万の兵は王国へとその歩を進めた。


 拠点となる王国の村々を内密で襲い(なぜか村はもぬけの殻だったが)、拠点を作り、適度に武器や兵糧が整った今日、私は戦場へと向かう。

 作戦としては、東西北の三つのグループに分かれて、私は北の強襲する予定だ。

 無論、時の魔法使いが居なくても強い王国との戦争だ。もしかしたら私はこの戦争で死ぬかもしれない。

 だが、幼い子のために私たちは最期までこの正義を胸に進もうと思う。

 だからもし私が死んでも悲しまないで欲しい。悲しまずに生きて、何時か私たちの子が大きくなった時に、王国から取り返したあの地を子供たちに見せて、君たちの父親はこれほど素晴らしかったのだと伝えて――――


「隊長! もうすぐ時間です」

「ああ、分かった。今行く」


 部下の言葉に、返事をした私は近くに置いてあった剣を手にすると、日記に締めの言葉を書く。

 そして、鎧を着ると愛馬の元へ向かい、愛馬を数度撫でた後、背中に乗り、愛馬と共に集合していた兵士たちの元へと向かう。

 兵士たちの瞳は全員がやる気に満ちており、早く戦いたいと叫んでいた。

 ならば、そんな彼らに向けて隊長である自分がすることは一つだろう。


「皆の者! 聞け!

 我ら帝国は数百年もの長い間、王国と戦い、敗れ、苦汁を飲んできた!

 その全ては王国が我らの土地を奪い、そしてその上で国を作ったのが全ての始まりだ!

 皆の者見よ! あの王国の肥えた土地を、あふれんばかりの豪華な家を、周辺国家一と呼ばれる名誉を!

 あれらは本来は我らが手に入れるはずだったものだ!

 あの栄光も、金も、名誉も、我らは王国と言う敵によって奪われたものだ!

 だが、そんな苦汁も今日までだ!

 我らは今日、王国と戦い、勝ち、そして我らのものだったものを全て奪い返すのだ!

 ゆえに、この聖戦に負けは認めない。最後の一人になるまで、我らは戦うのだ!

 みなのもの、その覚悟はあるか!?」

「お―!!」

「よし、ならば、全軍、前に進め!!」

「お―!!」


 俺の言葉に連鎖するかのように、士気が上がった兵士たちの地面が震えるほどの掛け声に心地よさと荒ぶる心の熱を感じながら、俺たちは北門へと歩を進めた。

 歩を進めること半時間。

 ついに北門まであと少しと言うところで、俺たちはあることに気づいた。


「なんだ? あの少女は……」


 北門から少し離れた先の何もない道の真ん中に不自然においてある机と椅子に座りながら本を読み、紅茶を啜る一人の少女が居た。

 染めているのだろうと思うほどの黒色の髪の毛と黒いドレスと言う黒に染まった少女は、こちらに気付くや否や、その年相応の笑顔を振りまきながら、手を振ってきた。

 そんな悪意のない少女の行動に思わず反射的にこちらも手を振って返そうとするが、何かの合図になりかねないと感じた俺はその手を無理矢理止めた。


「どうします? ここからでも弓は届きますが……射殺しますか?」

「いや、それでは強襲の意味が無い。

 ここは武装解除した兵士を一人送り、彼女を安全な――――」

『あー、テステス。テスト中、テスト中』


 彼女をどうするかと言う話を部下としている途中で、口元に何かを置いた少女の声が数キロメートル先のこちらもまで届いた。

 恐らく、声を拡声させる魔法を使える道具――――魔道具と呼ばれているものを使ったのだろうその声は鮮明にこちらの耳まで届いていた。

 そして、そんな俺たちの様子を見て、確実に声が届いていることを確認した少女はこちらを一切無視して、話を始めた。


『帝国の皆様。初めまして、私は王国の公爵家であるソウル家の人間で、名前はフレイヤ・ソウルと言います。ここの防衛を任せられた人間です』


 ソウル家! 帝国から国を奪った人間の一族の名前が聞こえた瞬間に、周辺の空気が一気に変わり、全員から殺気が漏れていく。


『防衛期間は三日で私はその間、毎日深夜までここで帝国が来るかを確認して、近づくの場合は私が対処します。

 なので、もし皆さんが北門を襲うなら皆様を殺さなきゃいけないのですが、それは流石に困るので、皆さんに提案したくて、今日はここで皆様が来るのを待っていました』


 提案だと? まさか自分の命を見逃す代わりに北門を開くのか? などと思っていたが、その次に告げられた提案は完全にこちらをなめていたものだった。


『みなさん、ここを襲わなければ見逃してあげるので、他の門に行ってくれませんか?

 ぶっちゃけ、帝国兵の対応なんて面倒くさいし、あなたたちがどんな目的で王国で何をしようと、私には関係ないし、どうでも良いので、そうしてくれるとありがたいのですが……』

「全軍、突撃!! 眼前の女を殺せ!!」

「うお―!!」


 何が面倒くさいだ! 何がどうでも良いだ! そのような言葉は我が国から土地を奪った張本人の子孫が言っていい言葉ではない!!

 もう、少女であろうと公爵令嬢だろうが、強襲などどうでも良い。

 この眼前の女は一秒たりとも生かしてはならない。

 一秒でも早く殺し、その首と体を槍に刺し、王国に我が兵たちの恐ろしさと恨みの強さを示す旗代わりにしてやる!

 そんな俺の気持ちに呼応したのか全ての帝国兵は漏れ出す殺気を隠しもせず、すぐさま剣を抜き、少女、いや眼前の敵の首を跳ね飛ばさんと駆け出した。


『分かりました。あなたたちがそう言うのなら、こちらも全身全霊を以て対応させていただきます。

 あと交渉も出来ないみたいなので、会話はここまでにさせてもらいますね。

 それでは皆さん、さようなら』


 しかし、そんな帝国兵を見てもにこやかな表情は一切崩さず、敵は魔道具の装置を切ると、先ほどまで使っていた椅子と机を門の近くに置くと、どんな手品か一瞬で小刀を両手にした敵は瞳を閉じて、数度深呼吸をする。


「その首置いていけ! ソウル家の人間が!!」

「我ら帝国を舐めるな!!」


 そして、そんな悠長なことをしていたせいだろう。

 馬を使っていて、かつ前線に兵士たちの数人は既に敵を殺せる間合いに入っており、特に距離の近かった二人の兵士は、死の宣告をすると同時に二人同時に剣を敵の元へ向けて放った。

 加速度的に首へと近づいていく切っ先。

 その剣が敵の長い髪の毛の一本を切った瞬間に目を開くと――――


「――――ふっ」


 十程度の子供がするとは思えないほど空虚のような瞳を浮かべた敵は手のひらほどしかないほどの小刀で剣を弾いた。

 小さな子供の細腕では想定できないほどの轟音と共に、弾かれた剣。

 無論、それだけなら剣を受け流すと言う剣術では当たり前の技術であり、おかしなところは何もない。

 だがしかし、眼前の敵の受け流し(パリィ)はそれらの技術をはるかに凌駕していた。


「――――」


 機械のような言葉と同時に呟いた敵は一切の負傷も無く、二人とすれ違い、数歩進むと同時に、背後に居た二人の兵士は死体となり、そのままその体を馬から落とした。

 恐らく、弾かれた後の刀の軌道を双方の首に移したせいだろう。

 地べたに落ちた兵士の死体の首は互いに半分まで切られており、その手に握られている剣の先には互いの血が赤く染まっていた。

 奇跡か、偶然か、それとも狙ったものかは分からないが、その細腕で攻撃を受け流すだけでもかなりの腕なのは確かだろう。


「全軍、気をつけろ!

 眼前の少女の姿に惑わされるな! この敵は相当なやり手だ」


 ゆえに、俺は喉を壊さんほどの大声で全軍に向けて、警告の声を発し、それに合わせるように先ほどまで怒気と殺意で溢れていた兵士たちの雰囲気が少しだけ落ち着き、全員がそれぞれの構えを取り、こちらに向けて駆け出していく少女へその刃を振るって行ったのだった。


…………

……


「あがっ!」

「ぐがっ」


 一体もう何人倒れたのだろうか。

 少しずつ、だが確実にこちらへと近づいて行きながら、少女は放たれた剣を弾いては同士討ちと言う形で兵士たちを殺し、かと言って攻撃を止めればこれ幸いにと手に持った小刀で首を落とされ、防御しても小刀と言う小回りの利く武具のせいで完全に防御できずに致命傷を負わされる。

 ならばと、体を拘束してから止めを刺そうと腕を掴むと残された手で手甲の隙間に刀を捻じ込み、腕から力が入らなくなったのを知ると同時に拘束を解かれ、その上で止めを刺されて殺され、武器破壊を成功させてもすぐさま新しい刀を何処からか取り出し無意味になる。


 何をしても何もせずとも殺され続ける兵士たちと止まらず進み続ける少女。

 その黒い服装と髪の毛に合わさって、俺たちはもう眼前の子供をただの小さい死神としか見えなくなっていた。


「あ、ああ、うわぁぁああああああ!!」


 そして、そのような光景が続けば士気が完全に無になるのは明白で、彼らの剣を振る掛け声はもはや叫び声に近い者であり、その声に呼応するかのように即座に死神に殺される。


「いや、いや、いやだああああああ!!」


 加えて、徴兵された兵士たちは、元々忠誠心が低いせいもあるのだろう。

 自分が殺されるかもしれないと言う恐怖を感じるや否や、恐怖に飲まれたものから順番に敵前逃亡による厳罰すら忘れた彼らは少し先にある森に入り、完全に戦線から離脱していった。


「あがっ、うぐっ」

「うわぁあああ!! がっ!」

「――――」


 足を何度も串刺しにし、バランスが崩れ、倒れた際の重力の力を借りて小刀で頭を両断し、刀を抜く反動を利用して別の人間の喉を切る。

 まるで作業のように淡々と殺されていく兵士たち。

 そのスピードは凄まじく、このままでいけばあと一時間で十万居た兵士が千を切りかねないほど、少女の周りには屍山血河がどんどん広がっていた。


「…………後方部隊に伝令だ」


 そのあまりにも絶望的な光景に今まで待機させていた後方部隊に向けて、俺は唇を噛みながら命令を告げる。


「今すぐ、あの女へ向けて魔法と弓を放て! 全力かつ集中砲火でだ!」

「た、隊長! それでは仲間に被害が!」

「分かっている! だが、これが一番被害が少ない方法なんだ!

 仲間を一人でも生き残らせたいのなら全力で撃って、一秒でも早くあの女を殺せ!」

「わ……分かりました。後方部隊に告ぐ! 今すぐあの女に向けて弓兵は弓を、魔導兵は魔法を全力で放て!」


 鎧から零れた唇の血に俺の本気が伝わったのだろう。

 伝令を聞いた副官は、そのまま発破をかけるように怒気を込めた声色で後方に命令をした。

 無論、彼らも自分の手で仲間を殺すのは気が引けるのだろう。

 戸惑いの声色が混ざっていたが、副官の次の言葉で全てが崩壊した。


「放てと言われれば、すぐに放て!

 命令に従わないものは敵前逃亡と同じと受け取る!!」


 その言葉に今まで味方に当たるのを避けるために攻撃を控えていた彼らの手から次々と放たれる弓と魔法撃。

 その攻撃はまるで雷雨の如き光景であり、不可避の弾幕に俺たちはこれで眼前の死神が確実に殺されると思っていた。

 しかし――――


「ふっ!」


 一息で自分の近くに居た人間の首を落とした死神は、足で死体が倒れるのを阻止するとそのまま、その死体をまるで人間大の盾にするかのように弓と魔法撃から自身の体を護る。


「がぁぁああああ!!」

「うわぁぁあああ!!」

「――――」


 無表情で死体を盾にする無傷の死神と、後方部隊の攻撃によって次々と血を吐き、肉を貫かれては倒れていく仲間たち。

 その光景は一見すると無駄に味方を殺しているだけに見えるだろうが、盾と言えど、肉盾である以上は何時かは肉が削がれ、盾としての役目は出来なくなるのは明白だ。

 ゆえに、心を無にしてでも攻撃をし続ければ勝機が見いだせると判断した俺は攻撃を止めずに、仲間の断末魔に涙をしながらその景色を見ていた。


「……このままじゃ、先にこっちがやられるか」


 そんな俺たちの不退転の決意を感じたのか、小さく呟くと同時に死神は盾に使っていた死体を全力で蹴り上げ、弓矢と魔法の攻撃を死体に浴びせることで、一時的な攻撃の空白時間を作り、その時間を使い、一気に弓と魔法の射程範囲外へと距離を取られ、俺は手を上げ攻撃を止めさせる。

 一見すれば、大量の味方を殺してでもやり続けた攻撃を止めるのは、彼らの死を無駄にする行為だろう。

 しかし、今まで一秒につき一人が殺される絶望しかなかった光景が止まったことで、荒れていた兵士たちの息が徐々に戻っていき、戦意が少し戻ったことを見れば、無駄どころか有意義な死と言えるだろう。

 普段ならこのように戦意が亡くなった人間は、一度戦線離脱させ、息と戦意を回復させてから戦場に戻すのが普通だろう。

 だがしかし、この敵を前に、息を整える余裕も、戦線離脱させる余裕も俺にはない!


「全軍、すぐに撃てるように準備を忘れるな!」

「了解!」


 ゆえに、俺は手を上げ、すぐにでも対処できるように周囲に命令をし、それに呼応して兵士たちが準備する。

 その量は射程圏内に一歩でも入ればすぐさまハリネズミなることが確実なほどであり、それを察したのであろう。まるで諦めるような溜息を吐いた少女は、小刀をしまう。

 その光景に更なる安堵の声が周囲を包むが、それでも俺はまだ警戒を止めない。

 あれほどの実力者。小刀をしまった程度で終わるわけがない。

 そう判断した俺だが、その予感は最悪の意味で当たっていた。

 ゆったりと両手の平を顔の前にあげる少女。その口はまるで何かに乗っ取られた可能にゆっくりと開く。


偽神創造(エンチャント)――――』


 少女が言葉を呟くと同時に手のひらからまるで血のような赤黒い魔力が地面へと流れていく。

 その不気味な光景に一瞬、射程範囲外にも関わらず、攻撃をしろと命令しようとしたが俺は唇を噛んで理性で恐怖を押しのける。

――――が、俺は次の光景を見た瞬間、その判断を後悔した。

 あの時、恐怖に飲まれてでも弓を、魔法を撃てばよかった。

 そうすれば、視界の妨害で相手の次の手を妨害して、少しでも兵を生き残らせることが出来たかもしれないと今なら分かる。

 しかし、現実は全く逆で、俺は弓も魔法も何も撃たずに案山子のように敵の次の手を待ってしまった。

 結果――――


付喪神(ガジェットソウル)


 少女が魔法を発動した瞬間、まるでものに魂が宿ったかのように、鎧が、刀が、甲冑が意思を持ったかのように独り出に動き出した。

 無論、それ自体は魔法を使ったと考えれば何も変ではないどころか、よくある魔法の一つだ。

 しかし、そのような考えは次の瞬間に変わり、今までの光景が天国だったのではないかと錯覚するかのような地獄の光景が広がった。


「うぐっ」

「あがっ」

「がはっ」


 ただ動いていただけの武具、防具たちは突如、狙いを定めると同時に俺たちを本気で殺しに来たのだった。

 手甲は顔面を潰しても足りないと言うかというかのように、延々と潰れた顔面を殴り続ける。

 刀は中空に浮かび、今まで血を飲ませ続けてきた持ち主の体を突き刺し、何度も何度も体を切り刻む。

 兜は持ち主ごと空高く飛ぶとそのまま吊るすか、突如転落し持ち主を殺す。

 臑当は独りでに走り出したと思ったら持ち主を転ばさせ、死んだ兵が持っていた剣に持ち主を貫かせていた。


 殺してやる。殺してやると言うかのような物たちの復讐と言う凄惨な光景に幸運にも射程範囲外に居た者たち全員が完全に思考が停止してしまった。


「さてと、これくらい近ければもうこの魔道具必要ないですよね?」


 そうのせいだろう。俺は少女が既に声を張れば届くほどの距離まで近づくまで接近を許していた。


「貴様!」


 反射的に刃を抜こうと腰に手を当てる。しかし……

 そんなこと許さないと言うかのように愛刀は持ち主の俺を裏切り、俺の首の皮を一枚切っていた。

 そして、それは俺だけではなく他のものも同じようで、全員が何かしらの武器で命を狙われていた。

 文字通り命を握られている俺たちを見て、満足したのだろうか先ほどまでの機械的な顔から一気に笑顔に変わった少女は、指を二本立てた。


「さて、あなた達には二つの選択肢があります。

 一つは私が死ぬか、帝国軍が全滅するか分かるまで殺し合うか。

 もう一つは、捕虜になって、王国民として働くか。

 もちろん、前者を選べば私はこのままあなたたち全員を殺して終わりになるので、私の残り三日間は楽になるんだけど、後者を選べばあなたたちの待遇等の準備などで面倒くさい事この上ないのよね。

 なので、出来れば私としてはさっさと楽になって遊びたいから前者を選んで欲しいんだけど……どっちにする?」


 朗らかに言う少女の言葉。

 しかし、その言葉は文字通り自分が生きるか死ぬかと言う選択であり、俺たちは全員指を二本立てるしか出来なかった。

 こうして俺たちの王国との戦争はわずか一日で全滅と言う最悪な形で終わったのであった。

戦闘中フレイヤは殺戮マシーンみたいになっていましたが、この理由は次の話に書く予定なので楽しみにしていてください。


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