第024話「国王に呼ばれた公爵令嬢と男爵令嬢(フレイヤ視点)」
色々と試行錯誤していたら、更新が遅れてしまいました。すいません。
■04月29日 午前:帝国第一大戦が起きる予定まであと2日
その日、私は朝からリリーの部屋のベットで寝転がりながら城下町で買った小説を読んでいた。
「ふん、ふふん、ふふふーん」
「鼻歌を歌うなんて珍しいですね。フレイヤ。
何か良い事でもあったんですか?」
「別に無いよー。
強いて言うなら、よーやく休めたなーって思ったから、鼻歌歌っているだけー」
「そんなにフレイヤの口調が変わるほど忙しかったんですか?
言われてみれば確かにフレイヤはここ最近忙しそうにしてましたけど、もしかしてジーク様のところに行っていたんですか?」
「そうだよー。一応自立するまで支援するって契約だし、私もジークを巻き込んだ責任があるからねー。
地域的に顔合わせる必要があったし、それに帝国との戦争が起きる場合の防衛策をお父さんたちと話したりと忙しかったからねー。
でも、それもよーやく終わって、こうして羽休めてるから気が楽ー」
まあ、実際にはタイムリミットギリギリとは言え、これから帝国に襲われる予定の村の住民を全員避難できたからって言うのが一番大きいんだけど、流石にリリーにはその説明をする訳にはいかなかったからね。
何せ、この計画のミスはイコール私たちソウル家がジークを誘拐した上で死を偽装したと言うことが知られると言うことで、いくらジーク自身がそれを望んでいたとしても、大なり小なりの責任はでかねない。
そうなった場合に、真っ先に疑われるのが、私……と言うより、私の容姿をしている人間で、言ってしまえばリリーが真っ先に疑われる可能性があるのだ。
何せ、ジークが誘拐された時の私は、リリーが眠っていたと言う状況も合わせてその時は自分の体で行動していたからだ。
だから、もし万が一、計画がバレた際に罰せられるのは私ではなく、私の体の中に居るリリーが捕まり罰せられる可能性があったのだ。
だからこそ私は、あえてリリーには村民避難の件は一切伝えず、その手伝いもさせずに、あえてジークが生きていることだけを伝えた。
そうすることで、リリーは普通の日常を過ごすと言う誘拐犯にしてはありえない行動をしてくれて疑われるリスクが減り、逆に私が行動しやすくなるからだ。
それに、もし捕まったとしてもその場合は本当に誘拐した私だけが罰せられるし、無実のリリーは何も傷を負わないしね。
とはいえ、罰せられる以上はこのリリーの体を多少なりとも傷つけられる可能性があると言う訳で……
「あははははは、この小説おもしろっ!
ふん、ふふん、ふふふーん」
「そんなに面白いんですか?」
「うん、あ、何なら見るー?
一巻なら、そこに置いてあるから好きに読んでいいよー」
「そうですか。なら、お借りしますね」
「はーい、いいよー」
完全に避難が完了し、確実に疑われていないと言うことが確定した私は今までの緊張の反動で心が完全に緩んでいた。
だからだろう。
■04月30日 午前:帝国第一大戦が起きる予定まであと1日
「はぁー、何で私があのクソ王に会いに行かなきゃいけないのよ」
その翌日、王城に来て国王と対談するようにとリリーと一緒に命令された私は反動の更なる反動でかなり荒んだ心で王城へと向かっていた。
「フレイヤ! 王にクソとは何ですか!
はしたないし、不敬ですよ!!」
「あ゛――――も゛―――――――!!
わ゛か゛っ゛て゛ま゛す゛。お゛か゛あ゛さ゛ま゛。
す゛い゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛!!」
「フレイヤ。今はリリー嬢の体を使っているんだから、もう少しお淑やかにしてくれないと彼女の評判が……」
「あら、そうでしたわね。ソウル公爵。
私としたことがいくら下劣ハーレム国王と言えど、節度はわきまえるべきでした。
お見苦しいところをお見せして申し訳ございませんでした」
「……相変わらず凄まじい速さの変わり身ですね。ソウル公爵」
「ああ、そうだな。リリー嬢。
まあ、あまりに凄まじすぎて、その変わりように私はその温度差で風邪を引きそうだけどね」
「あはははは、まあ、分かります。
変わりようが凄まじすぎてちょっと鳥肌立ちますよね」
「二人とも酷いですよ。
ちゃんと真剣にリリーの真似しているにそんなこと言うなんて」
そんな苦笑いを浮かべる公爵と私を注意する夫人、そしてリリーの計四人を乗せた馬車はかなりのスピードを出しながら、王城へと向かっていた。
「それにしても何でこの場で王城に呼ばれたんだ?
フレイヤ。リリー嬢。二人は死に戻り前にこのような経験はしたのか?」
「いいえ、していないですよ。
そもそもフレイヤと友達になったのはもっと後でしたから、今の時点で私とフレイヤが呼ばれる理由は無いですよ。
確かそうでしたよね。フレイヤ」
「そうだねー。
私の方もそう言った記憶は無いかな?」
「なるほど……と言うことは、これから起きると言われている帝国との戦争についてかな?」
「それも無いと思うよ。
正直、帝国と王国って、二年半くらい戦争していたけど相手の帝国が弱すぎて最後の掃討戦以外はソウル家に帝国との戦争の話は完全とは言えないけど、来なかったよ。
リリーの方は?」
「タイム家の方も同じですね。
父は領民を徴兵して戦争に行かせましたが、本当にそれ以外は私も帝国との戦争には関わっていなかったですし、話や呼び出しも無かったです」
なるほど、まあ公爵であるソウル家に話が行っていない時点で何となくタイム家の方は察していたけど……となると、ありうるのはあのこと関連か……いや、それも無いか。
死に戻りは偶然とはいえ、リリーが私の体の中に入ったことは決まっていたが、現状はまだそれだけで、リリーはまだ時の魔法を十分に使えない。
ならば、リリーに魔法の練習をすると言う話が来るならまだ話が分かるが、私も含めた二人を同時に呼ぶ必要はまだない。
と言うより、死に戻り前の帝国との戦争時の私はリリー……と言うよりタイム家のことが王族と同じくらい嫌いだったのだから、相当重要な要件でもない限り呼ばれても即踵を返しただろうし、国王の奴もそのことは知っていたはずだ。
「まあ、でも私たちが死に戻り前に特に何も無かったんだから、そんな重要な話じゃないんじゃないの?」
「そうですよね。
むしろ、ここで重要な話が来るんだとしたら王は私たちが未来を知っているとしか思えないですよね」
「あははは、そうだね。
まあ、流石に頭がいいだけの脳足りんのあいつでもそんなことありえないよね」
「フレイヤ! 言い方!!」
「す゛い゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛!!」
そんなことを話しながら、馬車の中を過ごす私たちだが、私はその時失念していた。
国王は私たちが未来を知っていることを知らないが、国王は私たちと同じく未来に起きることを知っていて、そしてその情報の中にはジークが死ぬことが入っていなかったことを。
今日はこの後20時くらいに、もう一話更新する予定なので、もし良かったらそちらも見てください。
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