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第021話「ジークの死(フレイヤ視点)」

「確信していたけど。まさか、そんな職業につきながら本当にお前がジークを殺そうとするなんてな。

 ねえ。宮廷医のハロルドさん?」

「お、王族を殺そうなんて、い、言いがかりにもほどがありますよ。フレイヤ様」


 少しでも変なことをすれば容赦なく殺すと言う私の無言の圧が伝わっているのだろう。

 震えながらもジークから離れたハロルドは両手を上げて、ゆっくりとこっちに振り向いた。

 その顔は、どこをどう見ても何の危険性も無い普通の人だった。


「そ、それに魚? でしたっけ? この呪いバチとしか思えない症状と魚が一体何の関係があるんですか?

 急にそんな意味の分からないことを言われたら誰だって驚いて混乱しますよ」

「だから、自分は関係ないと?」


 私の言葉に苦笑いを浮かべながら首を縦に振るハロルド。


「ええ、そうね。私も最初は呪いバチの症状と同じだと思っていたし、魚何て一切関係ないと思っていたわ。昨日までね」

「昨日? 尚更何を言っているんですか?

 それではあなたは前からジーク様が呪いバチに刺されることを知っていたのですか?」

「ええ、数日前からね。どうやって知ったかは内緒だけどね」


 まあ、正直に私が7年後の未来から死に戻りでやってきたからジークが殺されるのも何もかも知ってますなんて言っても理解できないと思うしね。


「で、では、私がどうやってジーク様を魚なんてもので殺したと言うんですか!

 まさかフグのような毒魚を使ったなんて言わないですよね!?」

「当たり前でしょ。そもそも毒魚なんて使ったところで、王族は全員食べるものは全て毒味係が先に食べる以上は毒味の人間が死ぬだけで王族は一人だって殺せないわ」

「なら、どうやって!」


 私の自信満々な表情から自分の手口が全てバレているのではないかと思っているのだろう。

 その顔は未だにぐったりと顔が赤くなっているジークと同じくらい赤くなっており、汗も大量にかいていた。


「そもそも私は一つ勘違いしていたのよ」

「勘違い?」

「ええ、護衛の方々も、毒味したことあると思うけど、食べ物に毒が入っていないかの判断ってどうやって判断している?」

「それは……銀の食器が変色していないかの確認とか、毒を食べた時特有の舌の痛みやしびれとか、後は……」

「少量食べた直後に体に異変が出ないかよね」

「はい、そうですね。特に銀は毒に反応して変色するので、そこは念入りに行っています」

「ほら、なら、毒なんて!」

「いつ私が食事に毒を入れたなんて言ったの?」


 むしろ、それが毒を入れた方法だったらどれほど簡単で、容易に防げたか。

 ゆえに、その方法こそがこの事件を一番複雑にさせたものだった。


「確かに、私も毒を入れるならどうやって毒味をクリアするかをずっと疑問に思っていた。

 でも、答えはもの凄く単純、ジークが起こしているこの症状は()()()()()()()()()()()

 ねえ、犯人のハロルド先生?」

「…………」

「沈黙は肯定と受け取られるわよ先生?」


 ま、沈黙するしかないわよね。だって、実際にその方法を取ったんだから。


「毒でも何でもないって言うのはどういう事ですか?

 まさか、ジーク様が起こしているこの症状は……」

「いや、これは正確にはハロルドが暗殺で使った方法じゃないわ。

 ジークの今起きているこの現象は単純にお酒に酔っているだけよ」

「お酒?」

「ええ、お酒よ。まあ、単純に演技をするためだけに取った手段だからこの事件にはほとんど関係ないから心配しなくて良いわよ。

 それで、話に戻すわね」


 そう言うと私は一本の焼き魚が刺さっている串をポッケから取り出した。


「まず、呪いバチの症状は二度刺されることで体の腫れ、頭痛、腹痛、痒み、発熱、嘔吐などが起きて死に至るのが呪いバチの症状だわ。

 つまり、逆に言えば、体の腫れ、頭痛、腹痛、痒み、発熱、嘔吐さえ、再現できれば死ななくても呪いバチに刺されたと判断されるわ」

「……その理屈は分かりますが、そんなもの簡単に出来るんですか?」

「ええ、私も最初はそんなの不可能だと思っていたわ」

「でも、調べてみると港町でそれらの呪いバチに刺されたと判断されたカルテが出てきたのよ。

 しかも、全員食事直後か、そう判断される時間にね」

「…………」


 何か隙は無いか必死に考えているのだろう。

 唇を噛み、汗を流すハロルドだが、その口は次の言葉を紡ぐことが出来ずにいた。


「そこで過去にその症状が出た人に症状が出る直前に食べたものを思い出してもらったのよ。

 その結果、ある店で焼き魚を食べたことが分かった。

 だから、私たちはその店の焼き魚を買い占めて、その魚を使って本当にその症状が起きないかを確認したところ、食後から一時間程度で呪いバチと同じ症状を発症したわ。

 このことから私たちは毒魚があるように、安全な魚でも条件次第では呪いバチと同じ症状が出ると判断した」

「待ってください、では、フレイヤ様は、死ぬかもしれないものを他人に食べさせたと言う事ですか!?」

「いいえ、港町でこの症状で死んだ人間は一人も居なかったことから、最初から私はこの方法では決して人が死なないと思っていたわ。そうでも無ければ人に死ぬかもしれない食べ物なんてそう簡単に食べさせないわよ。

 それじゃあ、話に戻るけど魚は条件次第では死なないにしろ蕁麻疹や熱、腹痛などを起こすものになる。

 それは同時にこの方法を使えば比較的容易に呪いバチの症状を再現することは可能だと言うことよ。

 だけどそれは逆に言うと魚ではジークを殺すことは出来ない。殺すなら別のもう一つの手間暇が必要になると言うことと同じになる。これらのことから、私はもう一つ、更なる仮説を立てた。

 ジークはこの症状を発症させられた後に、堂々と目の前で毒殺されたのではないかと言うことよ。

 まさに今のこの光景のようにね」


 そうして、全員の視線はハロルドが先ほどジークに使おうとしていた注射器に集まる。

 ここまでくれば、恐らく全員がこの中に毒が入っていると言うことは言わずとも伝わるだろう。


「……待って、ください。その推理には穴があります!」


 しかし、ここまで行けば否定など出来ないだろうと皆が思っている中で、ハロルドは大きく言葉を紡いだ。


「何? 好きなだけ自己弁護して良いわよ」

「た、確かに、その方法なら、ジーク様を暗殺するのは可能ですし、今現在それをすることが出来るのは自分だけでしょう。

 ですが、その魚を食べさせるのは私には不可能です!

 確かに私も港町で住んでいますし、以前はそこで働いて、それらの症状は良く起きていて、私も体感しました!

 だからこそ分かります! その症状が起きる魚は必ず唇や舌にピリピリとした感覚がおきます。

 加えて、食べれば蕁麻疹や熱などの症状が出るんですよね!

 そんな症状が起きたら毒味係がこれには毒があると思いますし、そもそも私は料理の提供なんて出来る立ち位置ではないんですよ!

 それなのにどうやってその魚を食べさせろと言うんですか!」


 よっぽど焦っているのね。

 その台詞は、魚の症状を知っているのに、先ほどジークが倒れた際に真っ先に呪いバチだと言ったのと矛盾しているわよ。

 まあ、このまま弁論できなければ王族を殺した疑いで最悪死刑になるからそうなる気持ちも分かるけどね。 


「なるほどね。

 唇や舌にピリピリとした感覚は私は知らなかったし、確かにそんな症状が起きるのなら毒味係が訝しむ可能性は高いわね。

 それに確かにあなたには料理の提供に口を出す立ち位置ではないし、実質ほぼ不可能ね」

「そ、そうですよね!」


 私を言い負かせたと判断したのだろうニヤニヤとするハロルドに若干イラっとしながらも私は口頭をあげつつ、口を開いた。


「どうやって、調理師でもないあなたがその方法を取るのか。

 でも、答えは凄まじく単純よ。あなたは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 いえ、もっと詳細に言うなら、あなたは王族に提供される食料のうち魚だけを症状が起きるものと入れ替えたと言うところかしら?」

「――――ッ」

「そうね……ここ一番で怪しい報告は二日前に、誰かが魚を外に置いて試食用の魚を腐らせ、見習いに買い物に行かせた報告かしら?

 王族が食べるものは、ほぼ例外なくその中で一番高価なもの。

 全員が右往左往し、なおかつその中で試食と言えど食料が減った状況。

 こんな状況じゃ。誰か一人がこっそり中に入って、王族用の魚を一匹入れ替えるなんて容易だわ。

 加えて言うなら、さっき言ったピリピリとした感覚も全員が同じ感想を感じているのだとしたら、全員がそういう味だったと言う感想を抱くんじゃないかしら?」

「……で、ですが、それでは全員がその症状を起こすのでは――――」

「いや、むしろあなたはそれが狙いだったんじゃないの?」

「――――ッ!」


 本当にこの人、分かりやすいリアクションするわね。


「ジークを除いた他の王族、毒味役、その人たちに共通するのは全員が呪いバチに刺された経験が無いことよ。

 いえ、呪いバチが生息していないこの国で刺されているジークの方が珍しいんだからむしろジークだけが仲間はずれな状態ね。

 ともかく、全員が呪いバチに刺されたと言う経験が無い以上、誰か倒れてもそれは一回目の症状だと言い切ることが出来る。

 つまり、全員にこの魚を盛っても、誰も自分自身を怪しむことは無いと言う事よ。

 加えて言うなら、この症状は過去の症例を見ても多少は辛いと感じても死ぬこともない比較的軽いものよ。

 その状態ならほぼ全員が多少の体の不調を感じても我慢して、パーティーに参加する選択肢を取るわ。

 特にジークの晴れ舞台だと思っている王族や毒味を行う予定の兵士は特にね。

 でも、ジークだけは状況が違う。

 四方八方から、全員が自分の位置を確認することが出来ると言う状況的に一番暗殺されやすい状態に居るうえ、しかも自分は既に一回目の症状を引き起こしている。

 そんな状態で二回目の症状が起きたら――――」

「暗殺にしろ、そうじゃないにしろ確実に呪いバチに刺されたと考えますね」

「ええ、そうね。

 そして、突如、何の前触れもなく自分がこれから死ぬと分かった人間が冷静になれるはずもなく、今の症状と合わせて、顔色や体調は悪くなる。

 あとは、ジークの体調を心配したふりをしたあなたが毒を持って、近づいて治療と称して……その先は言わなくても分かるわよね?」


 私の言葉に全員が頷く。


「そう、この事件にとって一番重要なのは、呪いバチの症状を再現することでもなく、ましてや毒を盛ることでもない。

 どうやって違和感なくターゲットの体調を狂わせて、そして狂った後にどうやってターゲットに近づき殺すか。

 これだけを考えた事件だったのよ。

 だからこそ、体調を狂わす手段さえわかれば後は犯人かどうかを判断する材料は大きく分けて二つ。

 まず一つ目がまず体調を狂わせた際にすぐ近くに行ける人物。

 この時点で犯人は私と毒味係をするために近くに居た護衛、そして緊急事態にすぐにジークの傍に居てもおかしくないハロルドの三人まで絞り込めるわ。

 そして、二つ目。これが一番の難所。

 どうやって、タイミングよく相手を殺すか。

 例えばだけど毒味を終えた直後にジークの容態がおかしくなれば真っ先に毒味係の人間が疑われるわ」


 死に戻り前のようにね。


「ゆえに、犯人は確実にジークの体調が悪くなりそして危険だと判断できるそのタイミングまで遠くに居ても不自然じゃない人間だけに限られる。

 それは、もうジークが呪いバチに刺されたと自己判断が出来て、倒れた際に近づくことの出来る唯一の人間。そう、あなたしかいないのよ。

 何か反論は?」

「――――」


 もう反論できない出来ないのだろう。

 ハロルドはプルプルと震えながら自分が殺すことの出来なかったジークを見つめるのだった。


 その後、護衛によってしばられ連れていかれたハロルド。

 その姿を見送った私は、まだ少し顔の赤いジークと共に自室に戻り、ジークをベッドに寝かせると、椅子に寄りかかり――――


「ふー、緊張した」


 私は緊張を晴らすように大きくため息を吐いた。


「後でアリスにお礼を言わなきゃね」


 私がこの事件の全貌を知ったのはアリスがジークの飲み物を毒味したことがすべての始まりだった。

 それまで私の頭には呪いバチの症状を再現させる毒はジークを殺せる毒でもあり、そんな猛毒をあの全員の視線が集まりやすく、毒味もする場所でどう行うのかに縛られていた。

 だが、そんなことを考えている中、あの時アリスは紅茶の味をはちみつで調え、一度毒味を終えた後、その後また味を調えるために再度はちみつを入れた。

 この光景から、私はジークを殺した毒の接種と、呪いバチの症状の再現をさせる毒の接種は別タイミングではないかと思い至った。


 そして、その後アリスの協力の元、症状の出し方まで引き出し、後は大きな二つの壁。

 どうやってタイミングよくジークを殺すかとジークに症状を引き起こす魚を食べさせる方法の二つだった。

 それを何とかギリギリとは言え、考えついてたが、そこで私は完全に思考が止まってしまった。

 何故なら私もジークもジークが殺されていることを知っているが、それは未来の出来事で言ってしまえばまだ起きていない事件で王族暗殺疑惑で逮捕など出来ないからだ。


 無論、公爵家の権限を使えばできなくは無いが、そうなれば確実に相手は逃げる。

 ゆえに、相手を捕まえるには、ジークが確実に殺される必要があり、それは同時に私たちの敗北を意味していた。

 そんな中ジークはあることを提案し、その内容を聞いて、ジークの覚悟を確認したうえで私とジークは今日、運命の日に挑んだ。


 パーティーの当日、ジークには一切魚を食べさせないことを注意させ、もしハロルドが近くに居て魚を食べざるを得ない状態になった場合は口に含ませるだけで、魚は食べずにトイレへの移動時に捨てさせた。

 そうすることで少なくともジークが魚の症状で苦しむことは無くなり、安全に行動できるようにさせた。

 しかし、それだとハロルドは魚の症状は起きなかったと判断し、犯行を行わなくなる。

 そのため、パーティー開始直前にジークに酒を大量に飲ませたうえでダンスをさせることで、体を赤くさせて、疑似的な症状を起こしてもらった。


 その後、万が一呪いバチを持ってきている可能性のあるタイム家の人間の妨害と、ハロルドがどうやっても呪いバチで刺されたと言う嘘を吐きやすくするための状況を作るために会場に煙を充満させた。

 あとは、ハロルドと共に私は会場から離れ、一目でも呪いバチよりも酒に酔っていると判断できるジークを宮廷医のハロルドと言う名医が誤診をさせ、ジークを殺す毒を出す直前で相手を捕らえることで、逃れられない状況を作る。


 これがジークが出した案だった。

 この案はかなり危険で、下手をすればジークが殺され、私たちが負けた可能性もあった。

 実際にハロルドはジークに毒を摂取される直前まで言ったし、あと数秒遅れればジークは確実に死んでいただろう。

 だが、結果はそうならず、この案は無事成功し、何とかハロルドを逮捕にまでこぎ着けた。


「それに私の推理は穴だらけだったからね」


 今回の事件で私の推理のメインだったのは魚ではなく、重要なのはあくまで呪いバチの症状の再現と殺す毒はあくまで別タイミングで接種させると言う方法だったからだ。

 その方法を取ったからこそ、ハロルドは死に戻り前は一切疑われずにまんまと逃げ伸びることが出来た。

 つまり、例えば、胃に解けずらい何かを使って毒の効力を遅らせることが出来ると言う言い訳をされたら私はもう反論することが出来なかった。

 加えてハロルドも注射器は効くかどうかわからないと言っていたことから、あれを確実に人を殺せる毒だ知ったうえで接種させたかどうかを裁くことは難しかった。

 ゆえに私は推理中は常にハロルドの首元に剣をさして脅し、下手な言い訳をさせないように気を付けてしゃべる必要があり……


「はー、本当に疲れた」


 そう呟いて、大きく伸びをする。

 すると、部屋の扉から数度のノック音がなり、入るぞ言うセリフと一緒に公爵が部屋に入ってきた。

 私と同じく避難誘導などいろいろしたのだろう。

 その顔色は疲れたの一色に染まっていた。


「はい、お疲れ様。お父さん。

 それで彼らは?」

「フレイヤもお疲れ様だな。

 彼らは、今のところ全員無事だな。

 念のために一週間は護衛を着けて置くが、ハロルドも捕まった今、恐らく問題ないだろうな」

「そう。良かった」


 公爵の言葉に私はほっとした声を漏らした。

 私が公爵に頼んだ調査。

 それは港町で魚の販売。それも高級魚を取り扱っている人の調査を公爵に頼んでいた。

 と言うのも、ハロルドの犯罪方法には欠点が一つあり、それはジークに食べさせるための高級魚。それも未調理のものを用意する必要があると言うことだ。

 料理を経営するでもない人間が高級魚を丸々一本買うと言うのは

 無論、自分でさばく可能性や未調理のものを持って行って店で調理してもらうと言う方法も無いわけじゃ無いが、それでも高級魚を丸々一本買ったと言う噂はたつだろう。

 もちろんそれだけなら何の問題も無いが、誰か一人でもそれに疑問を感じて、私のように捜査を始めたら自分が疑われる可能性は高くなり、そして殺した相手は王族だ。

 そうなれば自分の家族だけなら問題ないが、下手をすれば親族郎党もれなく全員死刑になる可能性がある。


 そんな可能性から私は、ハロルドが買った高級魚の店主とその店員を全員護衛するように公爵に頼んだ。


「まあ、元々事件は解決する予定だったし、必要は無いと思ったけど念のためにしておいて良かった」

「そうだな。尚更、お疲れさまだな。フレイヤ」

「ん。ありがとう」


 事件を解いた報酬だろうか。公爵直々の紅茶を受け取った私はそれを音を立てずに飲み、心を落ち着かせた。


「ふぅ、ようやく一息吐けたし、あともう少し頑張るか」

「ん? 何だ。フレイヤ。

 まだやることがあるのか?」

「ええ、と言うよりこれするために、今日頑張ったと言うか……」


 そう言って、私は猿轡にロープを用意し――――


「予定よりも少し早くなったけどジークが生きていることを知られると困るからね」


 私がそう宣言した約一か月後。


 町の新聞には、『第二王子、ジーク。死亡』の言葉が見出し一面で載っているのだった。

トリックの詳しい解説ですが、呪いバチの症状は魚で再現できると言うことについてですが、これは現実でも起きる症状で、ヒスタミン中毒と言うアレルギーとは違い誰にでも起きる症状です。

ヒスタミン中毒は常温で放置した魚を食べたりすると起きる症状なので、皆さんも暑いときの魚の扱いには気を付けてください。


因みにかなりのヒントを出したと言う12話と14話ですが、この箇所がヒントになっています。

■12話

①二人が呪いバチでの殺人が難しいと言った箇所

 ⇒そのまんまで殺人方法は呪いバチじゃないことを伝えています。

②「宮廷医の治療の甲斐もなく、ジーク様は十数分後に死亡してしまった」

 ⇒ジークが症状を起こしてから死ぬまで最後まで宮廷医は近くに居たことを伝えています。


■14話

①カルテの部分+その後のリリーの地の文

 ⇒呪いバチの症状を再現する方法があることを伝えている。

 ⇒死亡報告が無いことからその方法では人を殺せないことを伝えている=ジークを殺したのは別の方法しかない。

 ⇒ちょうどいいタイミングでジークに毒を摂取させられるのは最期まで近くに居た宮廷医のみ


②呪いバチで死者が出た情報を隠すために、死者が出たら別の病気をでっち上げて……いや、一体医者側にどんなメリットがある?

 ⇒逆説的に言えば、別の毒で殺すために呪いバチで死んだことを医者ならでっち上げられる


これらの情報からリリーは14話時点で犯人に気づきました。

この事件の解説は以上です。


第一章も残り一話で終わる予定ですが、最後までよかったら付き合ってください。

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