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第020話「好奇心(犯人視点)」

ギリギリですが、何とか更新できました。

■04月06日 午前:ジーク暗殺当日


 第二王子のジークと公爵令嬢であるフレイヤの婚約パーティー当日、俺は仕事の都合で前日の夜にパーティー会場に来た王族と共に朝食会場に来ていた。

 豪華絢爛な朝食会場。

 その中で王族でも無ければ貴族でも無い俺は王族に軽く頭を下げた後、邪魔にならないように彼らから数歩離れた場所に立った。

 そして、そんな俺とは逆に国王であるダヴィド・ブラッドが席に座るとその左右に彼の王妃と寵愛を受けている愛人のレイヤが座り、その二人の隣にはそれぞれ自身の子である第一のレイ、第二王子ジークが座る。

 そして、そんな彼らと一個椅子を離した箇所に第八王女であるノウビリティーと彼女の母親であるもう一人の愛人が席に座った。

 そんな二人を確認した後、かなり緊張した顔を浮かべながら給仕たちが朝食を彼らの前に置き、それらがすべて終わるとこの料理を作った料理長の右腕である副料理長が額の汗をぬぐいながら現れた。


「では、忙しいい料理長に変わり、わたくし副料理長が本日の朝食について説明させていただきます。

 本日の朝食ですが、スープはコーンスープ、サラダはカルパッチョ、メインは牛肉のスコッチエッグを用意いたしました。

 では、それぞれの料理について説明させていただきます。

 まずコーンスープについてですが、こちらは王国の高級のトウモロコシを大量に使用し、牛乳も新鮮な高級牛の牛乳を使用し、普段よりも濃厚な味を楽しんでいただくことの出来る味にいたしました。

 次のこちらのサラダについてですが、今回使用したカツオはよりその香りを高めるために軽くあぶらせていただきました。また、サラダについても一時間以内に収穫された新鮮な野菜を使用いたしました。

 そして最後のスコッチエッグについてですが高級な卵と牛肉を使用し、また中に入っている卵についてですが、王妃様、ジーク様、ノウビリティー様には皆様がお好きな半熟にさせていただきました。

 それでは、説明は以上となります。ごゆっくりと食事を楽しんでください」

「そうか。では、さっそくいただこう」

「そうですね。お父様。

 あ、そうだ。折角だし――――も朝食どうですか?」

「ノウビリティー様。第八王女であらされるあなた様の提案、とても嬉しく、光栄に思います。

 しかし、折角の提案についてですが、申し訳ございません。

 この後のジーク様のパーティーの準備の影響で私は既に朝食を食べてしましたので、遠慮させていただきます」

「そうですか。それなら仕方ないですね」

「はい、ですが、本当に今回はタイミングが悪かっただけですので、また今度誘っていただけると光栄です」


 ああ、本当にタイミングが悪かったよ。

 何せ、今日の――――は仕込みがされているから、食べたら大変なことになるかもしれないからな。

 いくら十年に一度も食べれない料理と言えど、そんな危険は犯せないよな。


「そうですね。では、また今度機会があったらお誘いしますね。

 それでは、毒見係の皆さん。

 申し訳ございませんが毒見をお願いいたします」

「承知いたしました。では、失礼いたします」


 その一言で、それぞれの王族の隣に居た毒見係の全員がそれぞれの担当されている王族に出されている食事をそれぞれ毒見をした。

 毒見を終えた彼らは約十分ほど棒立ちになり、そして目を開いた後、問題ないと答える。


「では、皆様。

 本当に問題ないかを確認いたしますので、ここに集まってください」

「はい、ハロルド様。

 普段通り脈拍で問題ないですよね?」

「いえ、本日は普段とは全く違う方が作ったものなので、念のために眼球や口の中も確認させていただきます。一人ずつ列を並んでください」

「はい、分かりました」


「充血は問題なし、口の中も問題なし、脈拍もよし。

 はい、全員問題ないです。国王、食事していただいて大丈夫です」

「ああ、分かった」

「それではいただきます」


 医者からの問題なしと言う言葉でそれぞれ食事を始める王族たち。

 俺はそんな彼らの食事と容態をずっと見つめるのだった。


 そして、食事を終え、自分の部屋でパーティーの準備をしていると不意に扉がノックされる。


「はい? 誰ですか?」

「……俺だ。クロム・タイムだ」

「ああ、男爵ですか? 入って良いですよ」

「失礼する」


 俺からの許可を貰った男爵は周囲に見られていないかを確認しながら、こっそりと部屋の中に入り、そして扉を閉めるとどすどすと威張るかのような動きで俺の目の前に現れた。


「それで? 本日は一体どのような要件ですか?」

「第二王子暗殺の件についてだ」


 第二王子暗殺の件? 何でこいつがそのことをと思ったが、瞬時に万が一のことを考え、暗殺に成功しても失敗してもこのタイム家に罪をかぶせやすくするために、色々と知恵を与え、暗殺を企てるように動かしていたいこと思い出した俺は、彼を椅子に座るように促した。


「それで? 第二王子の暗殺ですが、今日行うのですか?

 噂では、ここ数日で暗殺に協力していた貴族たちが突然あなたから離れたらしいのですが、やれるのですか?」

「あ、ああ、今日行う。

 他の協力者が離れたのも事実で、計画もその影響でかなり変えたが大丈夫だ。

 最初の計画よりも運が強い部分があるが、上手くいけば第二王子を殺せるし、それに殺せても事故で済む方法を取った」

「ほお、一体どのような方法ですか?」

「ああ、その方法と言うのはな」


 自信満々に自分の考えを語り始める男爵。

 その方法と言うのが、今回のパーティーで渡すプレゼントの中に生きた呪いバチを仕込ませ、そしてそれを献上品として彼に渡し、開いた瞬間中に入った呪いバチは、もっとも近くに居た第二王子を刺し、暗殺が成功する。

 加えて、刺されて殺されてもこれは帝国から購入した酒で、呪いバチは偶然入ったものだと言えば、疑われることは無いと言う素晴らしくくだらない案だった。


 はあ、この男は本当に馬鹿だな。

 第一運用素が強すぎるし、移動中の揺れなどによって、呪いバチが箱の中で死ぬ可能性もある。

 それに王族に献上品を渡しても、中に爆発物が入っている可能性があることから例え公爵家であったとしても、かなり離れたところから護衛者によって開かれることが通例になっている。

 そのことから考えるに、恐らく最初に刺されるのは護衛の人間で高確率で王族にはその針は刺さらないだろう。

 加えて、この計画では必ず一度は箱を開く必要がある。

 このことから、後日、箱を調査され護衛が開ける前に開けた形跡がないかを確認され結局バレる。

 まあ、違う人間が開けた可能性も無いわけじゃ無いと判断される可能性はあるが、それでも王族を暗殺しようとした可能性はあるから、最低でも監視対象にはなるだろう。


「そうですか。流石は男爵様ですね。

 そのような凄い案を思いつくなんて脱帽です」

「あはは、そうだろうそうだろう」


 だが、これは俺にとって都合がいい。

 こいつが監視対象になってくれれば、その分今後俺が王族を殺してもその疑いはこいつに向く可能性が高くなると言うことだ。

 そうなってくれれば、逃げることも証拠を消すこともより容易になってくれる。

 ゆえに俺は、頭の中で馬鹿にしつついい気分になっている男爵を褒めたたえ、そんな嘘にまみれた言葉に男爵はどんどん気を良くするのだった。


「はあ、本当に馬鹿の相手をするのは疲れるし、時間の無駄だったな」


 そんな男爵を褒めたたえ続けたことで、準備が終わらなかった俺はその後、パーティーの開始から少しし遅れて参加した。

 いくら自分の安全のためとはいえ、本当にあの馬鹿の相手をするのは今後は二度としたくないな。


「流石は公爵令嬢ね。

 まだ七歳なのに、ダンスも大人顔負けだわ」

「それを言うなら第二王子もそうよね。

 流石は次期国王だわ」


 感嘆の声を漏らす貴族たちの視線の先。

 そこには今日の主役であるその髪色と同じ黒いドレスを着たソウル令嬢とそんな彼女とは反対の白いタキシードを着た第二王子が居た。

 そんな彼らのダンスは確かに素人目の俺でも分かるほど優雅で、一切の淀みが無くその表情からも楽しそうだった。

 だからだろうか。ジークを暗殺し、楽しそうな彼らの表情を一気に無くせられるかもしれないと考えると……


「ああ、早く症状でないかな?」


 俺の口頭は思わず出た言葉と一緒に、好奇心と愉悦感で吊り上がるのだった。

 そして、そんな俺の言葉をかき消すようにダンスの音楽特有の最後の高い音が鳴り、それに合わせ、二人が深い礼を俺たちに向け、そんな彼らへの拍手がホールを包んだ。


「みな、今日は俺とフレイヤの婚約パーティーに参加してくれて、心から感謝する。

 我が国は建国から長いこと経ち、今もなお発展し続けている。

 それは全て貴殿たち貴族と、そんな貴殿達に従ってくれる民たちのおかげだ。

 しかし、今も我が国はまだ帝国などの様々な問題を抱えている。

 ゆえに、俺は婚約者であるフレイヤと共に、この国をよりよくするために生きていこうと思っている」

「私も一公爵家の娘として生まれ、公爵家の娘と恥じぬように、夫となる第二王子、ジークと共にこの国をよりよくするために、彼を支えたいと思っております」

「だが、俺たち二人ではこの国をよりよくすることなど出来ず、そのためには貴殿達含めた国民全員の協力と絆が必要だと俺は思っている」

「ゆえに、今日のパーティーは楽しむだけではなく、参加した皆様とよりよい関係を築く場にしたいと私は思っております」


 ほお、流石の破天荒の化身と呼ばれている例の公爵令嬢もこういう場では大人しくなるんだな。

 そんな俺の考えに連動するかのように、周囲の他の貴族たちも驚くような、感嘆の声を漏らしており、彼女の両親である公爵と公爵夫人など、感激で涙を流しているほどだ。


「さてと、王族のパーティーに必須な堅苦しいのはこれくらいで良いでしょ。

 それじゃあ、皆さん、今日のパーティー楽しんでください。

 かんぱーい」


 しかし、そんな俺たちの裏切るように一瞬で緩い雰囲気になった公爵令嬢に全員がずっこけるようなリアクションを取ると、全員がやっぱりこの子は変わっているなと苦笑いを浮かるのだった。


 それから適度に仕事をしつつ、ワインを飲んだり、適当に食事をしながら第二王子を俺はずっと見ていた。

 今日朝に仕込んだ効果はまだ出ないかと今か今かと待ち構えていると……


「――――よ。今から行くぞ」

「声かけないでくださいと言ったでしょ。男爵。

 ですが、応援していますよ。頑張ってください」

「ああ」


 私にそっと近づいた男爵の耳打ちに嫌悪感を感じつつも、俺は恐らく呪いバチが入っている男爵に激励を送り、失敗する方に年収一年分だなと、心の中で対戦相手の居ない賭けを始めた。


「じ、ジーク様。

 お初にお目にかかります。わたくし、第一王子のレイ様の婚約者候補であるリリー・タイムの父親のクロム・タイムと申します。

 今回の公爵家とのご婚約、おめでとうございます。

 そのお祝いと申しますが、葡萄酒を用意いたしましたので、ジーク様とフレイヤ様にご献上したいと思います」

「そうか。護衛。献上品をここまで」

「はい」


 その掛け声と同時に献上品の箱を受け取るジークだが、俺の視線は献上品ではなく、その首元を痒そうに何度もかいているジークの姿に注目が集まっていた。

 まさか、ついに症状が!


「そうか。献上品、感謝する。

 開けても?」

「はい、もちろんです。

 今すぐにでも開けてください」

「あ、ああ、では護衛。少し離れたところで……」


 どんどん顔が赤くなっていくジーク。その姿についに殺せるか? と言う興奮が脳に満ち溢れる。


「じ、ジーク様!

 で、出来れば、ジーク様が開けて」

「す、すまないが、爆発物が入っている可能性がないわけじゃ、無いから……」

「ジーク? 大丈夫? 顔赤いわよ」

「ああ、さっきのダンスで熱くなったのかな?」


 ジークを心配するフレイヤの様相に俺は思わず心の中で拳を握りしめる。

 ここからもう少しすれば、呪いバチの症状が再現され、あとはもうひと手間加えれば、確実にジークを殺せる。

 そう判断した俺は最後の準備と言うかのように一歩ジークの元へ向けて歩を進めると――――


「なんだ? 何か焦げ臭い……って、煙!? 火事だ!?」


 瞬間、まるで爆発したかのように扉から大量の煙がパーティー会場を包んだ。

 不味い! 呪いバチはその習性から煙を嫌う。

 加えて、ジークはまだ箱に手を一切触れていないうえに、開封もされていない。

 それでは呪いバチに刺されたなんてことは言えない。

 想定外のことに焦り始める俺。


「フレイヤ! 隣の客室からの火事だ!

 フレイヤ! ジーク様と一緒に避難しろ!」

「では、公爵様! 私がお二人を避難場所まで誘導します!」

「――――さん。ありがとうございます。

 他の貴族の方々は、我々公爵家で、避難させますので、娘をお願いします!」

「はい! ソウル公爵。承りました!

 ジーク様! フレイヤ様! こちらに」

「――――さん。娘たちをよろしくお願いします!」

「――――さん。よろしくお願いします!」

「はい! 道案内をいたしますので、ついてきてください!」


 そう言って、俺は二人と二人の護衛の合計五人でパーティー会場を後にした。

 クソッ! 最悪なことになった。

 ()()()()()()()()()()()()()()とは言え、避難が完了するまで、少なくとも煙が完全になくなるまで、ジークを殺すなんてことは出来ない。

 だが、同時にこれは千載一遇のチャンスだ。

 既に顔を真っ赤で苦しそうなジークの様子から見るに毒は既に回っている。

 ならば、後は安全な場所まで行けばいいし、それにここ数日間はずっとこの会場で寝泊まりしていんだ。人目につかず、かつ煙もでない場所を見つけるの何て簡単なことだ。


「ふう、ここまでくれば問題ないでしょうね。

 皆さま、気持ち悪いとか体の方の調子は――――」

「――――さん! ジーク様が先ほどから!」

「ジーク様!? どうしたんですか!?」

「さっきから、体の痒くて、熱くて、腹も痛くて……」

「痒みに、熱に、腹痛……って!?

 まさか呪いバチの!?」

「呪いバチって、ちょっと待ってください! ジークは既に一回刺されているんですよ!?」

「本当ですか!? フレイヤ様!

 それじゃあ、ジーク様はもう……いや、ちょっと待ってください。

 もしかしたら、この薬が使えるかもしれないです」


「薬? 呪いバチの呪いは解けないんじゃ?」

「はい、そうですが、偶然その呪いを解ける聖水を作ることが出来たのです。

 まだほとんど実験していないので、本当に効くかどうかわからないですが……」

「そ、それでもお願いします!」

「わ、分かりました!」


 医療鞄から出した注射器と薬を取り出すと、その中身を注射器に追加する。

 そして、その注射器をジークの静脈に刺そうと静脈を探し、針をそっと肌に添える。

 その光景に俺は思わず、喉を鳴らした。

 その瞬間――――


「手を挙げろ。お前、今ジークを殺そうとしたな」

「ふ、フレイヤ様。一体何を!? 犯人って私何もしていないですよ。なんのですか!?」


 瞬間で、隣に居た護衛から剣を奪ったフレイヤは俺の首元に剣を添え、今すぐに切らんと薄皮の一枚を切っていた。


「ふ、フレイヤ様! おやめください!」

「護衛は黙ってろ!」


 その様相に慌てだす護衛の二人だが、フレイヤの剣幕に恐れ、黙ってしまう。

 だが、俺の心はそれ以上に何でばれたと言うことで占めていた。

 確かにあと数秒あれば、俺はジークを殺せる。

 だが、俺はまだジークを殺していない。

 しかも、俺の方法は分かったとしても、殺した後に気づく方法を取っている……って、待てよ。

 そうだ。こいつがどんなに頭が良くても、ジークに呪いバチの症状を再現させた方法までは気づいていないはずだ。

 ならば――――


「ふ、フレイヤ様!

 この症状はどう見ても呪いバチの――――」

「魚。これで、全て分かるでしょ? 犯人なら」


 な、何でこいつそのことを!?

 想像しえなかったその言葉に俺は思わず驚いた表情を浮かべてしまい、そして同時にそれは完全な失敗だった。

 何故なら、その単語に気づき、驚くのは間違いなくジークを暗殺する犯人しか取れない言葉だからだ。


「確信していたけど。まさか、そんな職業につきながら本当にお前がジークを殺そうとするなんてな。

 ねえ。()()()()()()()()()()?」


 そう呟いたフレイヤの目は正に死神のようだった。

あと2~3話くらいで一章は終わる見込みなので、良かったら最後まで付き合ってください。


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