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第018話「色気のないデート(ジーク視点)」

「それでそろそろ説明してもらおうかフレイヤ」

「ふぁ? ふぁあ、ひゃかった」

「喋るか食べるかどっちかにしろよ」

「うめ、うめ、うめ」


 コミュニケーション放棄して、カレー食べ始めたぜこいつ。

 そんな事を思いながら、俺はそっと水の入ったグラスを渡し、それを飲んだ彼女は再びカレーを口に運ぶのだった。


 それから待つ事数分、カレーを綺麗に食べ終え口の周りを拭いたフレイヤは食後のデザートと言うかのように定員にパイを注文した。

 山のように積まれた皿の山に頬をひくひくとしながら、注文を受け取った店員がいなくなったのを確認したフレイヤはようやく口を開いた。


「ふぅ、腹一分目だけど満足満足」

「ここに来る前も結構食べてたのにまだ腹一分目って、相変わらず凄い食事量だな」

「えー、これでも普段に比べたら全然食べてない方でしょ。

 むしろこれくらいしか食べてなくて、死に戻り前の私のナイスバディがまな板ボディーにならないか心配になっちゃてるくらいよ」

「え? フレイヤ。お前、将来相当なナイスバディになるのか?

 だとしたら、確かに心配になる気持ちは分かるが」

「ええ、そうよ。

 七年後の私はこーんな感じのナイスバディなるのよ」


 ケラケラと笑いながら両手で死に戻り前の自分の体型の輪郭をなぞるフレイヤ。

 確かにその輪郭通りなら将来は相当良いスタイルになるし、元から整ってる顔立ちも合わせてかなりの美人になるのは確定だろうな。

 って、そんなふざけてる暇は無いよな。

 少なくともこのまま行けば俺は明日死んで、それを皮切りに王国で様々な事件が起きるらしいしな。


「そうか。なら、将来のためにもっとたくさん食べないといけないよな。

 でもそんな話や飯を食べるために俺と港町に来たんじゃ無いんだろ?」

「ええ、そうね。今日、ジークを呼んだのは、明日起きるジークの暗殺事件の方についてだわ」


 そう言って、フレイヤは赤い丸のついた港の地図を広げる。


「まず、この事件についての私とリリーの行動について再度説明するわ。

 私たちは死に戻り前の七年前。

 要するに明日ね。

 あなたはその日、突然体を搔き始め、その少し後に、赤い粒粒が浮かぶと体が痒いと叫び出し、その後、医者も甲斐も無く死んだわ。

 そのことから私たちは当初、貴方が死ぬ直前の症状から死亡原因は誰かに操られた呪いバチに刺されたことで殺されたと想定して、行動したわ。

 例えば、呪いバチを使って暗殺を企てているタイム家の協力者を脅迫したりとかしてね。

 でも、時間が経つにつれて羽音で気づかれやすい呪いバチを使用しての暗殺はかなり無理があるなじゃないかと言う疑問が浮上きたのよ」

「……確かに言われてみると蜂の羽音は結構うるさいよな。

 多少はうるさいパーティー会場と言えど刺されるくらいまでの距離なら流石に気づくし、その可能性は高そうだな」


 実際に俺が過去に刺された時も近くに滝があったにも関わらず、羽音が聞こえてたし。

 俺の言葉にフレイヤは大きく頷く。


「ええ、それでここから先は少し妄想の域になってしまうけど、その事実からリリーは恐らく呪いバチの症状を再現する毒が作られたのではないかと言う仮定を昨日、私たちと離れた後に立てて恐らくその調査をしたんだと思う」

「呪いバチの症状を再現する毒?

 そんな都合の良い毒って、本当にあるのか?」


 それよりも、普通に魔法とか使って羽音を消したりとか、その可能性の方が高いと思うのだが……


「私も最初は貴方と同じ意見で、その方面で考えていた。

 でも、その可能性が確信に変わったのが、セバスが港町のカルテのみを図書館から借りた真実とリリー、セバス、そして宮廷医のハロルドさんの記憶が魔法によって書き換えられた事実。

 この二つの事実を基に考えると恐らく私に扮してセバスにここ数年で王国内で起きた呪いバチの症状が出た履歴がないかを調べるように命令し、そこから港町で呪いバチの症状が出てることを知って、恐らくリリーは犯人まで辿り着いた。

 そして、そのことを犯人に知られて、リリーとセバスはその事実を隠すために、ハロルドは上書きした内容に信憑性を持たせるために記憶を書き換えたのではないかと私は判断したのよ」

「なるほどな。その二つの事実を聞かされるとその可能性はかなり高くなるな」


 確かに呪いバチがまだ生息してないこの王国では症状を探すだけなら輸出品の中に入っていたと言う可能性もあるから多少のカルテは見つかるだろうな。

 だが、それならわざわざ三人の記憶を改竄させる理由は無いし、その可能性が一番高そうだな。


「となると、今日はこれからこの丸がついた箇所にそれぞれ向かって、図書館にあったカルテの原本を借りれないか交渉しに行くと言うことか?」

「ええ、その通りよ。 それに公爵家が使いを送っても、個人情報だからって断る医者も公爵家の令嬢と王族の二人の命令なら断れないと思うしね。

 貴方を呼んだのはそう言う理由からよ。権力はこう言う時に使わないと」

「それは……そうだが」


 こいつ、現在進行形で王族のことを嫌いでそのことを俺に知られてるのになんとも無い顔で俺を使うなんて凄い度胸だな。


「まあ、それで俺の命が助かるなら別に良いか。

 それで、なんでお前は今()()()()()使()()()()()()()()()()()()

 お前はタイム嬢が処刑されないことが確定するまで戻らない予定じゃなかったのか?」


 俺の言葉に()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()はため息を入れたあと、口を開いた。


「私もその予定だったわ。でも、リリーのことを考えるとこうせざるを得なくなったのよ」

「こうせざるを得ないって、どんな理由ってなんだ?」

「理由は大きく分けて二つあるわ。

 一つはリリーの改竄された記憶は十中八九事件に関することよ。

 そんなリリーに事件の捜査をさせると何かの拍子で記憶の混乱が起きて、後戻りできない状態になりかねないわ。

 そのことを考えるとリリーにはしばらくの間。少なくとも結果に関わらず、事件が終わるまでの間は眠ってもらう方が安全なのよ。

 だから、今、リリーはセバスの魔法で強制的に眠ってもらってるわ」


 確かに、そう言う理由なら確かにタイム嬢はここから先、事件に関わらせずに眠ってもらった方が安全だな。


「と言うことは、もう一つの理由は体が入れ替っている状態のままだと明日のパーティーに参加出来ないから体を元に戻したと言うことが理由か。

 なるほどな。確かに強制的に眠ってもらっている今なら、体をすぐに戻せることも知られないし、ちょうど良いな」


 それにタイム嬢、またはフレイヤと親しい人間と出会った時に変装してパーティーに参加するよりも、本来の体に戻った方が確実にばれないしな。

 何せ、本人の体そのものなんだからな。

 などと思い、俺はうんうんと大きく頷くと……


「へ?」

「え?」


 何だ? その素っ頓狂な驚いた顔は。

 普通に考えれば……ってそう言えばフレイヤはさっき、ナイスバディがどうのこうのって言っていたが、もしかして……


「まさか、お前自分のスタイルの維持が出来ないから入れ替わったなんて――――」

「そうだよ?

 だって、昨日のお昼リリーが食べたの、パン一枚なのよ!?

 それ程度の食事だなんて……私の将来のナイスバディが無くなってしまうじゃない!!

 だから、リリーが眠っている今のうちに食いだめしておこうかと」

「まじか……こんな状況でそんなこと考えるなんて思わなかったよ」


 ああ、いくら明日、自分が殺されるかもしれないのに、そんなこと言われて何か一気に気が抜けた。

 でもまあ、そのおかげかどうかは分からないが、変に気が抜けたことで体に残っていた明日殺されるかもしれないと言う恐怖が殆ど抜けたな。

 これもフレイヤの狙い……でもなさそうだな。その本気で力説するその感じから。

 なんてことを思っていると、いつの間にか俺の隣に来ていた定員がテーブルの真ん中に焼き立てのホールのパイを置いた。


「と言うわけで、このパイを食べ終えたら、さっそく医者に話を聞きに行くわよ」

「ああ、分かったよ」


 そう呟いて、俺は一切れだけ貰ったパイをフレイヤと一緒に食べるのだった。

GW中に20話まで行けるように頑張って投稿してみます。


感想、評価があるとやる気につながるのでもしよかったらお願いします。

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