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第015話「リリー捜索(フレイヤ視点)」

「リリーは何処に行ったのかな?」


 話し合いを終え、ジークがパーティー会場から居なくなるのを見送った私は、リリーを探しに歩いていた。


「うーん。セバスを使った方が早いと思うんだけど。でもな~」


 でも、あの子は今の私をリリーだと思っているからな。

 私が頼んでも罵倒するだけで首縦に降らなそうなんだよな。


「でもリリーと逸れたことを言えば、あの子なら素直に話聞くか」


 多少何で逸れたとか変な罵倒されるかもしれないけどね。

 まあ、罵倒も別に気にしてないし、それで素直に命令を聞いてくれるなら喜んで受け入れても良いだけどね。


「セバスさーん! フレイヤのことで緊急事態発生です!! 早く来てください!!」


 大きく息を吸って、出来る限りの大きな声量で私はセバスを呼んだ。

 まあ、あの子なら一分あれば来るってところかな?

 そう思いながら、私は食堂でこっそり盗んできたクッキーを一つ食べながらあの子が来るのを待つのだった。


 しかし……


「遅いな……セバス」


 十分経ってもセバスは私の前に来ず、盗んできたクッキーを全部食べ終えた私は変な胸騒ぎを感じた。

 あの子がそこら辺の盗賊や暗殺者に殺されるとは思えないが……

 でも、あの子が忠誠を誓っているソウル家で一番恩を感じている私に緊急事態が発生したと知ったら、いくら嫌いなタイム家からの言葉だとしても、何よりも優先的に来るはずだ。

 だとすると……


「何も起きないでよ! セバス!!」


 もしかしたらセバスに何かが起きているかもしれないと、私はセバスと別れた場所へ向かうのだった。


「セバス! セバス居る!?」

「タイム様? そんなに息を切らして何かありましたか?」

「何かって、そんなセバス……さんを呼んだのにセバスさんが来ないので、何かあったのかと。

 すいません。急いでいて、口調が荒くなりました」


 全力で走ったせいで息を切らしながら別れた場所に向かった私だが、そこにセバスの姿は無く、居たのは馬の世話と馬車の整備をしているソウル家の運転手しか居なかった。


「いえいえ、お気になさらず。

 それにしてもセバス様ですか? セバス様なら数時間前に突然お嬢様に呼ばれたと言って、走っていきましたが……まだ帰ってないみたいですね」

「リリ……いえ、フレイヤ様に呼ばれた? 本当ですか?」

「はい、私には何も聞こえなかったので勘違いと思ったのですが……」

「そうですか……」


 でも、あの子の身体能力ならありえない話じゃないけど……だとすれば何でリリーはセバスを呼んだ?

 リリーは死に戻り前からセバスのことが苦手だった。

 それは、単純に日常的なあの子の罵倒ではなく、タイム家が関り私が巻き込まれたあの毒殺冤罪事件が原因による罪悪感によるもので、リリーはそのことに関わっていないにも関わらず未だなお罪悪感を抱いているからだ。

 だから死に戻り前も出来る限りリリーはセバスに命令をするようなことも、必要以上の関りを持とうともしなかった。

 そんなリリーがいくら私の体を使っているとは言え、私の真似をしてまでセバスを使うか?

 そんなことがあるとすると……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……


「まずい、リリーが危ない……」

「へ? お嬢様。なんて?」

「説明している暇は無いわ! この屋敷にいる人間に今すぐリリ……いえ、フレイヤ様とセバスさんの身が危ない可能性があるわ! 今すぐ彼らの捜査をしなさいと命令しろ!!」

「は、はい、分かりました」


 その一声で、私たちはリリーの身柄を探し始めたのだった。


「フレイヤ様! 何処にいる!?」

「セバス様! 居たら声をかけてください!」


 パーティー会場に居た全ての人間で始まったリリーの捜索は夕方になり、夜になっても一向に進まず、私たちは焦りを感じ始める。

 合流地点にたどり着くと、泥だらけになり、汗だくになりなった彼らだが、彼らの様相から進捗が一切良くないことが伝わる。


「どうだ? フレイヤ様は居たか?」

「いえ、セバス様含めて見つかりませんでした。やはりこの人数では厳しいですよ」

「公爵家の方に連絡は……」

「私が事前に連絡しましたが、距離的に捜索者の増援はまだ時間はかかるでしょう……」

「そうですか……」

「あの……もしかしてですけど、本当にフレイヤ様は危険なのでしょうか?」

「と言うと?」

「あのご令嬢はその……中々奇抜な方ですし、もしかしたら遊びで隠れているとは……」

「例えそうでもセバスさんが居なくなるのは変なのでは?」

「リリー様のおっしゃる通りです。我らソウル家で真面目で最も強い彼が何の理由もなく消息を絶つのはありえないです」


 使用人の方に私は大きく頷く。

 それに彼らは知らないとはいえ、今の私の中にはリリーが居る。

 真面目なリリーが私たちに何の連絡もなしに消息を絶つこともあり得ない。

 それこそ誰かに襲撃されて、身柄を捕らえられたりでもしない限り……

 と言うか、奇抜って彼らに対して私どんなイメージを感じているのかしら?


「おーい! フレイヤ様見つけたぞ!!

 バラ園の噴水だ!」


 その時、不意に一人の男の声が耳に入り、私たちはその声に向かって走り出した。

 バラ園にたどり着くとここだーと手を振る料理長がおり、そこへ向かうと――――


「すーすーすー」

「全くこのお嬢様は。寝ているなんて噂通り傍迷惑な方だ」

「はぁ、見つかってよかったですね。リリー様」

「ええ、そうですね」


 気持ち良さそうに椅子をベッドにして寝ているリリーがそこに居た。


「リリー様。お嬢様は……」

「取り合えず馬車に運んできてください。

 まだセバスさんが見つかってないですから」

「いや、その必要は無い」


 その声に反射的に振り向くと、私の視線の先にはソウル公爵と公爵夫人そして両手に手錠を付けられたセバスが居たのだった。

勘が良い人はもう犯人が分かる時期だと思いますが、出来るだけネタバレは遠慮していただけると助かります。

20話までに犯人にたどり着く予定なので、それまで考察など楽しんでください。

因みにヒントとしては12と14話がかなりのヒントを出しています。


感想、評価があるとやる気につながるのでもしよかったらお願いします。

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