異世界からの聖女様にご注意!!!世界を救う博愛主義ってよくよく考えたら、ヤバいんです!
ペロリストって何????
このハイデルヒア王国に異世界からの聖女が降臨した。
美しい黒髪の慈悲なる者。
世界を導く尊き人。
愛を教える方。
様々な国が残してきた文献には聖女を称える内容ばかりだ。
瘴気を打ち払い、世界を浄化する役割を持つ聖女は本来なら旅に出るのが決まっていた。
しかし、今回の聖女、彼女は若く、無知であった。故にハイデルヒア王国が誇る学園へと入学された事から問題が発生したのだ。
「うぅ…どうして…ジルドレ殿下…」
「あぁ、お嬢様、そのように泣いてはいけません」
「シエル、でも、でも、ジルドレ殿下が…近寄るなと…婚約者の私に…!」
「お嬢様、きっと、殿下は少しお疲れだっただけですよ」
「あぁ、確かに聖女様は素晴らしい方ですけれど…何かがおかしいわよ!学園の殿方全員が聖女様のお側に侍っているのよ!」
花が散るようにハラハラと涙を流すのは赤毛が美しい公爵令嬢、アリエス・ローズベルトある。
それを痛ましげに見つめるのは、お付きの侍女、シエルだった。
そう、聖女の側には、男爵子息から王族に連なる高貴な方々までべったりなのだ。
皆、婚約者を寄せ付けず、異国から取り寄せた贈り物を聖女に貢いでいる。
学園の子女達は涙に暮れていた。
それにアリエスも心を痛め、王太子殿下に嘆願しに行った結果がこれだ。
そう、遂には、王太子殿下までその毒牙にかかったのであった。
シエルは、悲しげに涙を流す主人の背を撫でてやりながら、決意をする。
アリエスお嬢様は心根が真っ直ぐだ。傷つきやすいが、その代わり、貴族としての高貴なる義務を果たしている。
だからこそ、王太子殿下のなさりように忠言されるだろう。
そうなれば、王家と公爵家の間に深い溝が出来る。
それは、きっと、アリエスお嬢様が悲しむ。
ならば、自分が言おう。
不敬罪など、可愛い可愛い妹のようなお嬢様の涙に比べれば、大した事はない。
そう、シエルは決意をしたのだ。
そして、その時はすぐに来た。
昼休み、中庭で聖女を中心に座る殿方に向かって、アリエスは静々と近寄ったのである。
王太子は聖女を庇うようにアリエスの前に立った。
「アリエス、近寄るなと言ったはずだ」
「殿下、お願いです。私の話を」
「…後で話を聞く」
「殿下!」
婚約者の話も聞く気もないのか!
もう、殺すなら殺せ!
シエルは不敬を承知で声を上げた。
「王太子殿下!アリエスお嬢様の話をお聞きくだ」
「くっ!!!殿下!!!!アリエス様をお守りください!!!!目標!!!!逃げます!!!!」
言い切る前に緊迫した護衛騎士の声が王太子の後ろから飛ぶ。
その瞬間、王太子は顔を真っ青にして、アリエスを抱き寄せた。
「あ〜〜!!!もう、我慢出来ない!!!!は〜!!甘くて可愛い匂いがするね!!!!あ〜!!!!たまらん!!!!女の子は砂糖菓子!!!!ひゃ〜!!!可愛い可愛い女の子ペロペロしたいんじゃあ〜!!!小さくして口の中でペロペロペロペロ!!!!」
「え!?キモっ!」
シエルは普通に後ずさった。
聖女が舌をペロペロしながら、アリエスの居た場所で深呼吸していたのだ。
めちゃくちゃペロペロしていた。
空気にエアペロペロしまくりである。
下手に見た目が清楚な美少女だから、めちゃくちゃ普通に気持ち悪い。
アリエスが思わず、恐怖に目を潤ませた瞬間、聖女のボルテージが上がる。
「ひゃ〜!アリエス様、マジ可愛い!!!!おっきな聖杯に涙をいっぱい貯めて、毎晩啜りたいくらいきゃわわ」
王太子は自分の体で小柄なアリエスを隠しながら、絶叫した。
「さすまたを持ってこい!!!!早くしろ!!!!!!!!この聖なる変質者を捕まえてくれ!!!!」
「はい!!皆の者!!!!行くぞ!!」
護衛騎士の号令が飛ぶ。
聖女の周りに侍っていた筈の男子諸君は目を血走らせながら、刺又を取り出し、聖女を追い立て始めた。
すると、やはり、妙に身体能力が高いのか、聖女は舌をペロペロさせながら、校舎を逃げ回る。
それに悲鳴を上げるのは、学園の子女達だ。
可憐な彼女達は大事な大事な箱入り娘。真綿に包んで大切に育てられた彼女達は、変質者なんて知らないのだ。
しかも、見た目は可愛い化け物が自分をエアペロペロしてくるのである。
普通に阿鼻叫喚。
ここが地獄の三丁目。
しかし、聖女がすり抜けざまにガチペロペロしようとするのを、子息達が必死に庇う。
「早く捕まれ!!!!その子の髪に触るな!!僕の婚約者、泣いちゃうから!!!!」
「俺の幼なじみに手を出させるわけねーだろ!!!!A班は先回りしろ!!絶対に抜けさせるな!!!!素早いぞ!こいつ!!!!」
「うわぁあ!!!!四足歩行になるなぁあ!!!!気持ち悪い!!!!あぁあ!!!!私の可愛い妹に近寄るなぁあ!!!!」
「ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」
学園中の大捕物に悲鳴と怒号とペロペロが鳴り響く。
中庭に残された王太子と公爵令嬢が祈るように抱きしめ合うのを見ながら、侍女は鳥肌を摩っていた。
カサカサって四足歩行していたぞ、聖女。
「…アリエス、あれに君を近付けたくなかったんだ」
「あれは一体…」
遂に、王太子と公爵令嬢は聖女をあれと呼び出した。完全に扱いが名前を読んではいけないGから始まる昆虫と同じだ。
「聖なるペロリストと本人は言っているが…大変博愛主義な変質者なんだ」
「博愛主義の変質者…」
「うむ、毛深過ぎて、南国のゴリーラと言う動物そっくりなゴリ将軍が居るだろう…その…あの方すらペロペロされてしまったのだ…男も女も老いも若きも、ついでに種族も気にしていない聖なる変質者を我が国は…呼び出してしまったっ!!」
「あ、あのゴリ将軍までですか!?」
ゴリ将軍はちなみに領地に帰って、乙女の如くシクシク泣いているらしい。心の傷は深い。
是非、療養してくださいと聞き耳を立てている侍女は思った。
ゴリ将軍は非常にゴリーラにそっくりで、人間離れした方なのだが、それをペロペロしたとは王宮も大混乱。
しかも、この聖女、有能は有能だから、瘴気はしっかり払ってくれる。だから、帰せない。
だが、このまま、王宮で働く貴族がペロペロされては国が滅ぶと学園に入学が決まったのである。
しかし、流石に平民をペロリストの餌食にするわけにもいかず、貴族達の学園に入学させたのだ。
だから、婚約者や家族、大切な相手を守ろうと王太子が男性貴族に呼びかけ、聖なるあれの周りを固めていたのである。
自分がペロペロされても、可愛いあの子がペロペロされるよりはマシ。
皆、前線に赴く兵士の如く覚悟を決めていた。
異国から取り寄せた刺又を胸に孤独な戦いに身を投じていたのだ。
「ジルドレ殿下、私、殿下を信じ切れず…申し訳ございません」
「いや、私もあれから貴女を守ろうとするあまり、貴女を傷付けてしまった…こんな愚かな私を許してくれるかい?アリエス。聖なるペロリストをこの世界に呼び出してしまった私を、君は…許せるかい?」
「ジルドレ様…アリエスは!アリエスは!最期までお供いたします!ペロペロされようとも!!ジルドレ様、お一人にペロリストの原罪を押し付けるような事はいたしません!!」
「アリエス!」
「ジルドレ様!」
ペロリストの原罪って何?
悲鳴と怒号とペロペロを背景に響かせながら、未来の国王と王妃が抱きしめ合う。
まさに感動的な姿。
いつの間にか帰って来ていた護衛騎士が男泣きをする。
そして、死んだ目をした侍女はこの世界、ペロリストに救われるのかとひっそりと絶望した。
「いや、そもそもペロリストって何??」
「ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ」
「さすまたぁあ!!もってこぉおおい!」
「突き落とせ!!簀巻きにしろ!!!!!」
窓から校舎に張り付く聖女の見た目は美しい。
その舌がペロペロしていなかったら、さらに良かったけど。
「いや、本当にペロリストって何!?!?」
侍女は思わず、叫ぶ。
聖女が壁を這い回るのを見ながら、博愛の深淵を覗くのである。
世界を救っちゃう聖女様の愛って凄いんだろうなぁと思いながら、書きました。
まだまだ、投稿などのシステムをよく分かっておりませんが、お読みいただきありがとうございます。
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