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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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衣装部屋

 着替えが欲しい、と思って扉を開けたので、前に開けた時と違い、ナーガラージャが衣装部屋と呼んでいた部屋につながった。


「我はここにあるものを適当に着ている。シンロク達もそうだ。」


「ん、シンロクの衣装もここにあるの?それも貢物として届いているってこと?」


 ナーガラージャの話によると、最初、シンロク達は人化しても衣服を着ていなかったため、裸だったそうだ。『はじまりの王』ゲオルギウスはそれを見て、使用人用の服を作らせた。元々、人間の使用人の真似ごとをさせるため、人化させたからだ。ところが、シンロク達は人化が初めてだったため、最初の頃は人のように器用に手足を動かすことができず、ボタンや金具のついた服をうまく着ることができなかった。そこで、今着ているような、着物のようにゆるやかな東洋風の衣装になったらしい。


 華は二人が着ている服を観察した。ジェイドは、上は着物風で下は長いスカートになった衣装を着ている。腰のところで紐を結び、はおったものを整えている。奈良時代の女性の衣装に似ている。


 一方のナーガラージャは、シャツを着た上に長い袖なしチュニックを重ね、腰のところで帯を結んでいる。チュニックと帯は、全面に刺繍がほどこされていて、見事だ。まっすぐな黒髪にサークレットをはめているせいか、どことなく日出処の天子風で、王子様っぽい。一度角髪(みずら)に結ってみたい、と華は密かに思った。


 ここに収納されている衣装は、『はじまりの王』とナーガラージャ、シンロク用。ということは、ここに収納されている衣装は多分、全部大人用のものということ。ならば、サイズの小さいものは期待できない。


 そう思った華は、融通のきく衣装を組み合わせたり、あるものを利用して作り変えたりすることにした。袖なしのチュニックの丈を短くして、ウエストのところに紐を結べば、簡単なワンピースになる。切り落としたチュニックの裾は、筒状にして袖にすれば長袖のワンピースに変えられる。


 作っている間は、ジェイドが着ているような着物タイプのものを着て、紐でも結ぶことにした。どうやら、シンロクが身につけているスカートの下は、腰のところを紐で結ぶ、ズボン型の下着らしい。大人用なのでかなり大きいが、裾を切ってウエストで紐を結ぶことにした。


 そんな風に工夫しても、大人のウエスト部分が子供には胸のところにくる。裾のところもかなり幅広だ。そこで華は、裾に適当にギャザーを寄せた。足が通せる程度に縫い縮めてやるのだ。ウエストも、本来の位置に紐を結べるように紐を縫いつけ、上のところを折り返す。とりあえずのものなので、これと今あるものを交代で着ればいいだろう。何事も、創意工夫だ。


 ジェイドが、収納されている衣装から適当に取り出し、華に見せてくれる。どれも精魂こめて作製された感がある。生地は上等に違いなく、縫製も丁寧な手縫いだ。オートクチュールと言ってよい。


 前面に凝った刺繍のあるものは、鋏を入れることがためらわれる。比較的飾りのないもの、刺繍のないものを選び、ジェイドに選り分けてもらった。帯は、そのまま使えるが、どうしても長さが長いので、結び方を工夫することにした。小さなナーガラージャに使おうと思っていたリボンも、使えそうなものを見つけてきた。


「裁縫道具が欲しいな。鋏とか、針とか糸とか。そういったもの、ある?」


 華がそう言うと、ナーガラージャもジェイドも首を横に振った。鋏は貢物として送ってこられた文房具の中にあるそうだが、針や糸は貢物にふくまれていない。王の為にあつらえられた物は、どれもサイズが決まっており、新品で直しの必要がない。それに、王は裁縫などしない。だから、小物の中に入っていないのだ。


「糸は、魔物が吐き出すものですが、ちょうどよいものを知っております。他に、繭を紡ぐ魔物もおりますので、工夫すればなんとかなりそうです。」


 糸の説明を聞いたジェイドが、そう言ってくれた。明日にも、入手してくれるそうなので、糸はなんとかなりそうだ。となると、あとは針だ。


「む、ハリは我が作ろう。」


 ナーガラージャが、どこからか金のブローチを取り出してきた。留め金のところを外して、ピンの部分を引っ張ろうとしている。


「ナーガ、もしかして、それを壊す気?」


「む、だめなのか?」


 華の言葉に、彼は動きを止めた。


「なんかもったいない。とても綺麗なブローチなのに。」


「そうか。では、これはそなたにやる。」


 そう言って、ナーガラージャはその金のブローチを華に渡した。華は、ブローチをもらったものの、宝石のついた金のブローチは、今着ている孤児院のワンピースにつけるわけにもいかない。


「ありがたいけれど、これはしまっておいて。この服には全然似合わないから。」


「む、使わないのか?」


 彼はブローチを何処かへ収納し直し、今度は自分の鱗を取り出し、それを小さく加工し始めた。それを見た華は、もしかして金のブローチを壊したほうがずっと安上がりな針だったのかもしれない、と心の中で思った。


「ナーガの鱗って、たくさん収納してあるの?」


「うむ、時々生えかわるからな。落ちているものも、全部シンロクが拾って収納しているから、たくさんあるぞ。使うのか?」


「使う時は、お願いするね。」


 華はそう言ったものの、彼の鱗はあまり世に出回っていいものではないので、使う時は慎重にしないといけない、と思った。


「む、これでどうだ。ハリとは、このようなものか。」


 華の説明を聞いたナーガラージャは、ぱぱっと鱗で作ってくれた。


「そう。あとは、先端の片方を尖らせて、反対側に糸を通す穴が必要。」


「むぅ、穴か。よし、こんなものか。」


「すごい。こんな小さな穴、よく開けられたね。すごいよ、ナーガ。」


 同じものを何本か作ってもらい、華はナーガラージャ特製の針を布を丸めたものに刺しておいた。これで、衣装のリメイクができそうだ。華は二人にお礼を言い、集めた衣装と小物類を持って移動した。



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