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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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部屋

 光の洪水を浴びた華は、再び動き出した。まだ見ていないところがある。


 とはいうものの、あの万華鏡のように美しい広間を見た後では、どの部屋を見てもそれほど心は動かない。あとはおまけのようなものだった。


 円形の広間の奥は、王の為の部屋が並んでいる。すでに使っている食堂や寝室の他に、書斎、浴室など、日常使う部屋が並んでいた。使われたことのないという客間や、全くの空き部屋もあった。家具は置かれていたが、物は置かれていない。


 建物の地下部分は、いわゆる使用人用の部屋だったり、本来の倉庫だった。ここにもたくさんの空き部屋があった。そこは、シンロク達の控える部屋になっており、ナーガラージャの寝る部屋である、あの洞窟へと通じる通路につながっていた。


 ナーガラージャが拡張した倉庫は、王の部屋の並びにあった。広間に近い所に、入口の扉が作られている。転移陣から送られてきた貢物を収納しやすいよう、そこに作られたのだろう。その扉が、彼の収納につながっていた。


 収納倉庫の扉は一つきりだ。だが、そこは開く人の用途に応じて、別々の収納場所につながっていた。扉は一つだけなのに、部屋は無数。つまり、食品を収めたい時は食料用の部屋に、衣類を収めたい時は衣類用の部屋へとつながる、とても不思議な扉になっているのだ。


 実際のところ、扉のあるところは、ただの壁らしい。壁をくり抜いて別の建物があるわけでもない。華には理解できない仕組みなのだが、扉を開くとナーガラージャの収納に入ることができる、という仕様だ。扉を開くと、そこではないどこかへつながっている。どこかって、いったいどこなの?と華は聞いてみたが、返ってきた答えは、わからぬ、の一言だった。だから、不思議という他ない。


 どこだかわからない、とにかくたくさんある部屋。だが、そうはいっても、誰もがその扉を開けるわけではないようだった。その扉の開閉には、ナーガラージャの許可がいる。華はすでに許しをもらっているので、どの扉を開くのも自由だった。ところがシンロク達は、扉を開いて物を出し入れする許可は持っていたが、願っても開けない扉もあるようだった。


 一通り、建物をぐるっと回ってきた。


「なんだか、どの部屋も広いね。私、ワンルームみたいなところでいいんだけれど。」


「む、ワンルームとはなんだ?」


「ええと、寝る部屋と書斎と台所とバスルームが一つの部屋になっているの。」


「?なんだそれは。狭い上に、ややこしいではないか。」


 どうやらナーガラージャには、よくわからないようだ。うさぎ小屋と称された日本の家事情など、彼には理解できないだろう。本来の姿がとても大きいため、狭い部屋には入れないだろうから。


「ややこしくなんかないよ。狭いかもしれないけれど、何をするにも便利だもん。ここみたいに、いちいち部屋を移動しなくても、一つの部屋ですむんだよ。」


「む、華は王であろう?王には王にふさわしい部屋がある。ゲオルギウスの使っていたところを使えばよい。」


「でも、ナーガだって、洞窟に寝ているじゃない。」


「我の眠るところは確かに洞窟だが、我にとっては、この山と森が家のようなものだ。この小さな建物では、我は本来の姿で眠れぬ。水浴びも、湖に行ってすることがあるのだ。」


「湖?湖もあるんだ。」


 山の上から眺めた時は、高い山に隠れていたのか、鬱蒼とした森の木々にさえぎられていたのか、華は湖があることに気付かなかった。


「うむ。天気の良い時に、連れて行ってやろう。」


「行ってみたい。湖に舟はある?」


「フネ?フネとは何だ?」


 森と山の主は、舟を知らないのか。無理もない。あれは、人間の使う道具だ。ナーガラージャは、本来の姿だったら水辺でそのまま浮くのかもしれないし、移動も翼を使えばいいのだから、舟など知っていても乗ることはないだろう。


「舟は、ええと…。筏はわかる?」


 筏もわからないようで、彼は首を横に振った。


「筏はね、何本か切りそろえた丸太を横に並べて、縄でくくったものだよ。水の上に浮かべて、人が乗るの。舟も同じようなもので、一番簡単なのは、太い丸太を半分に割って、中をくり抜いたものかな。やっぱりそれも水の上に浮かべて、人が乗って移動するのに使うんだよ。」


「む、華は水の上に浮かびたいのか。」


「水の上に浮かびたいというか、筏や舟は、そういう乗り物。人はそういうものに乗ってのんびり過ごしたり、釣りをしたりするんだよ。川や海を渡る移動に使ったり、荷物を載せたりもする。」


「む、そうか。では、今度湖に行った時に木を切って作ってみよう。我も舟とやらに乗ってみたい。」


「うん、それいいね。一緒に作ろう。」


 部屋の話をしていたのに、なぜか湖と舟の話しになってしまった。だが、どのような場所なのか楽しみだ。華がここでやることが、また一つ増えた。


 結局、部屋は華の希望通りにはならず、『はじまりの王』が使っていた部屋をそのまま使うよう、ナーガラージャに言い渡されてしまった。おまけに、カーデュエルの森と山の主である彼の契約者にふさわしい部屋でないといけない、とジェイドにも諭された。彼の眷属に、華の立場を示さねばならないのだ、と言われてしまったら、華は彼の面子のことを思い、断ることはできない。


 与えられた部屋の家具は、とりあえずそのままだ。他にどのようなものが収められているかは知らないが、今必要なものをそろえることのほうが大事だと思った。さしあたって一番必要なものは、着替えだろう。


 華は、ナーガラージャが衣装部屋と呼んでいた、収納倉庫の扉を開けることにした。

 


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