神殿
「む、さて、中に戻るか。」
「うん。」
華達は建物の入り口へと向かう。
神殿の正面には、高さのある巨大な柱が縦横に何本も並んでいた。なぜこれほどの数が縦にも横にも並んでいるのかよくわからないが、それらはとにかく巨大な屋根を支えている。
ただ、屋根の中に進むと、真中にはぽっかりと空間が開いていることがわかった。たくさん大きな柱が並んでいるので、なんとなくパルテノン神殿のようにも見える。ここが地上にある建物なら、人が集まって集会を開いたりするのに使えそうだが、あいにく山の上である。飾り気もなく、柱に囲まれた、屋根のあるだだっ広い土間にしか見えない。
その後ろに、丸く円を描くような壁が見えてきた。ローマにある、パンテオンに似た形だ。外側から見た時、丸くなっているところの屋根が、巨大なドーム状になっているのが見えていた。
屋根を支える柱の並びを通り過ぎると、ナーガラージャに反応する仕掛けになっているらしい、大きな入口の扉が音を立て、開いた。
その瞬間、華は息をのんだ。
「きれい……。」
そう呟いたきり、華は言葉を失う。
高いドームをいただく円形の大広間は、燦然と輝いていた。光りものの好きなナーガラージャにあわせたのか、どこもかしこもだ。彼の黒い身体にチカチカと瞬く光を表現すれば、それはきっと、こんな形になる。そんな光で埋め尽くされていたのだ。
その部屋の光は、銀色を帯びていた。
ドーム屋根の中央から、巨大なシャンデリアのようなものが下がっている。屋根にはところどころにガラス窓がはめこまれ、日中の光をとりこむようになっていた。そこから入ってきた光が、壁という壁に細かくはめこまれているモザイクというモザイクを反射し、光が洪水を起こしているのだ。
銀色の鏡のようなもの、クジャク色や瑠璃色の色石、そして金。人の手によって砕かれ、また集められた欠片達。それらが、効果的に組み合わされたモザイクになっていて、光を反射している。研磨し、複雑にカットされたダイヤモンドのように、本来持っている輝きを更に増幅させながら輝いている。
正面奥には、祭壇のようなものが設けられていた。そのあたりは少し、高くなっている。その祭壇の後ろの方に、三柱鳥居が見える。そこが、転移陣になっているのだろう。
まるで、強大な万華鏡の中に入っているみたいだ、と華は思った。昼間の光の中も美しいが、夜もまた、幻想的な様子を示しそうだ。上を向いて、口をぽかんと開けたまま、華はそんなことを考えていた。
そのうち華は突然、ドームの真ん中へと走りだした。そして、いきなりその場に座り、仰向けに横たわった。自分でも子供みたいだと思ったが、そうしたくなったのだ。
「あらあら。」
ジェイドがクスクスと笑っている。
「む、面白いのか?我もやる。」
そう言って、ナーガラージャまでもが華の真似をして床に横たわった。
華は、降り注ぐ光に向かって手を伸ばす。キラキラと輝く光。建物外の頑丈そうでそっけない石の姿からは、中のこの光を全く想像できなかった。
ここで眠ったら、いったいどんな夢を見ることができるのだろう?
美しい。なんて美しい神殿。
まさに、神殿と呼ぶにふさわしい円形広間。
華は横にいるナーガラージャの顔を見て、馬鹿みたいにクスクス笑っていた。




