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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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通路

「ここではない。上にある部屋の一つだ。」


「え、ここって部屋があるの?」


「この上には、神殿が建っているからな。」


「へ?」


 今、神殿って言った?


「何で神殿がこんなところにあるの?」


 華が疑問に思って聞くと、ナーガラージャは説明してくれた。


「ゲオルギウスがくれたのだ。昔、あやつが遊びに来た時に持ってきた。神殿といっても、元はゲオルギウスの部屋だ。遊びに来た時に、食事したり、寝る部屋が欲しいから作ったと言って、山のてっぺんに置いていった。」


「山のてっぺん?ここって、森じゃなくて山の上?」


「そうだぞ。」


 知らなかった。この洞窟の中しか見ていなかったので、全く気付かなかったのだ。ここって、カーデュエルの山の中だったのか…。華が魔法による転移を選ばず、地道に歩いて帰る方法をとっていたら、森の入口でうろうろすることになっていただろう。


 それにしても、食事したり寝る部屋が欲しいから建てたって、神殿とは名ばかりの、別荘みたいな感じなのでは?『はじまりの王』は、ナーガラージャの為ではなく、自分の為に建てたような気がする。持ってきたものを置いていった、と彼はなんでもないことのように言っていたけれど、いったいどうやってそんなことを…。


 そう思っていると、急に大きな音が鳴った。


 グゥ〜〜。


「わっ、わっ、わわわ。」


「なんじゃ、今のは?」


 お腹が鳴ってしまった。そういえば、青騎士の寮で食事をしてから、何も食べていない。目の前のことにかまけるあまり、そういったことをすっかり忘れていた。


「ごめん、お腹がすいちゃったみたいでお腹が鳴った…。」


 そういえば、食事のことなど全く考えていなかった。森におりて、自分で食べられそうなものを取ってこないと、ここには何も無いかもしれない。狩猟採集生活かぁ。やったことないけど、うまくできるかな?食べられるものかどうか判断するところからやらなきゃならないけど。


 華がこれからを思い考え込んでいると、ナーガラージャが手招きをした。


「む、そなたは子供ゆえ、食べねば大きくなれぬな。確かあやつも、一日に何度か食事をしておった。ふむ、ついて来るがよい。」


 歩き出した彼の後を、ちびサイズのナーガラージャがぱたぱたと翼をはためかせながらついて行く。人型の不遜な態度の彼と違い、ずいぶんかわいらしい。


 おチビの姿に少しほっこりしながら、華はとりあえず彼の後をついて行く。ナーガラージャの物言いだと、何か食べられそうなもののあてでもありそうだ。


 金ぴかだらけの広い洞窟の隅に、他の場所に通じているらしい道が何本かあった。ナーガラージャが進んでいくその道は、どうやらゆるやかに上の方に向かっているようだ。通路はまっすぐではなく、ゆるやかに蛇行している。それでいて道幅がかなりあるので、もしかしたら元々あった道を通りやすいよう拡張したのかもしれない。


 壁には足元が暗くならない程度に、ところどころ明かりが灯っている。ただ、その明かりは普通の明かりではない。電球にあたる部分が、薄く水色がかったような色になっていて、かなり形が変わっている。丸でも四角でもない。透明の結晶石のようだ。大きな石英を集めたみたいに先がぎざぎざにとんがっていて、壁から生えているのだ。それが、明かりのように光を発している。


 その光は、蛍を集めたような優しい明かりで、蛍光灯のように目をさすような眩しさはない。そういった結晶石とは別に、光る苔やキノコのようなものもある。ぼうっ、と光るそれは、黄緑色っぽい色を発している。そういった暗闇を優しく照らす明かりを頼りに、華はナーガラージャのあとを追った。


 一本道をしばらく上ると、急に視界が開け、広々とした天上の高い広間のような場所に出た。どうやらそこから上は、石造りの建物のようだ。普通に廊下や部屋の扉がある。ナーガラージャが神殿と言っていたのは、この建物のことだろうか?


 その廊下をうろうろと動き回る人影がある。人型をしているが、人ではない。


「あれは…。」


 角を持つ、人型だ。顔も人ではなく、鹿に似ている。ただ、角が一角獣のような角をしている。しかも、お尻のところからは狐のようにふさふさとした、翡翠色の尻尾が何本かはえている。それらの人型が、昔の胡服のような、上が着物に似た、ゆったりとした衣装を着て歩いている。鹿のような顔をしているため、東洋風の衣装に見えるだけかもしれないが、華はとても興味をひかれた。


「ああ、あれは我の眷属だ。この間、そなたを拾って来たものの仲間だ。」


 眷属、とナーガラージャは言ったが、血の繋がった一族という意味ではなく、家来か召使いのようなものなのだろう。


 彼らは手に何かを持って運んだり、働いているようだ。あの翡翠色した不思議な麒麟みたいな生き物の仲間は、かなり特殊なものなのか。


「シンロクは、十人ばかりおる。交代で、森や山を見回ったり、送られてきた貢物を仕分けしたりしておる。」


 シンロク?神鹿?麒麟かと思っていたけれど、鹿だった?それとも、全く知らない未知の生き物なのか…。


 華はつい、自分の知っている動物に当てはめてしまいがちだが、ここにいるのは幻獣、魔獣の類だ。姿は似ていても、全く違うものだと思ったほうがよい。


「シンロク?も人型になるんだ。」


「うむ。まあ、ほとんどの魔物はなれぬ。人型になれるのは、魔力の多いものだけだ。必要な魔力がなければ、人化はできぬ。」


「そういえば森で見た時、背中から木がはえてきて、丸い鏡のようなものが見えたけど、あれは何だかわかる?」


「む、あれはそなたを映しておったのだ。シンロクは、あれに相手を映して相手を計る。計ったものを仲間同士、伝えることもできる。我も見ることができる。」


 映したものを伝える?鏡に映して、それを仲間内で共有できるってことかな?


「私も見られる?」


「見ることができる。だが、見れば気分が悪くなることが多い。我はしばらく見ておらん。」


 見ていないというより、かなり長い間眠っていたせいだろう、と華は思った。それにしても、見れば気分が悪くなるとはどういうことなのだろう?


「計るって、何を計るの?」


「そのものを。」


 人そのもの?例によって例の如く、ナーガラージャの説明はよくわからない。


「む、あれらは悪しきものを排除するのだ。」


 悪しきもの…。森に入ってきた侵入者を区別、選別しているという意味だろうか。でも、華のことを助けてくれた。悪いものではないと思ってくれたからなのか。


「私を助けてくれた人は、ここにいる?」


「むう、今はおらぬ。外にでておるようだ。」


「また会えるかな。」


「うむ、そのうち帰って来る。」


 そこからさらに階段をあがり、扉を開けると、急に光を感じた。


「眩しい。」


 いつのまにか夜が明けていたらしい。大きく壁を切り取るように開かれた窓から、朝の光が差しこんできている。華は思わず手で光を遮った。


「ここだ。」


 ナーガラージャはドアを開け、華をとある一室に導いた。











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