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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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似姿

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ。その目でしかと見るがよい。どうだ、我の似姿だ。小さいが、威厳があるであろう?」


 そう言ってナーガラージャは、それまで背後に隠していた手を華の前に突き出して見せた。


「くふふ、なんという素晴らしい出来栄えだ。さすが、我。だが、もう少し工夫が必要なのだ。どうせやるなら、もっと完璧にせねばな。ふむふむ、これで我も華と一緒に、カンコウとやらに行けるぞ。」


 彼は得意げにそっくりかえりながら言った。


「え??」


 カンコウ、という言葉にも引っかかったが、それ以上に華は、目の前に差し出されたものを見て、驚きのあまり呆然としていた。


 ナーガラージャは、自分の似姿を小さくしたものと言った。確かによく似ている。だが、それはどう見ても、孤児院で華に挨拶してきたトビトカゲそっくりの姿だった。


「えっと、トビトカゲ?」


「なんだと?!華は目が悪いのか?むう、それはいかん。我が今、そなたの目に癒しを与えて。」


 ナーガラージャが華の顔に手を近付け、何かをしようとしてきたので、華はあわててその手をさえぎった。


「違う違う、違うからやめて。」


 せっかくの親切を断られた彼は、不服そうだ。


「私、目はそれほど悪くないの。少し近眼だったけど、ナーガと契約したせいか、とってもよく見えるようになったから。」


「うむ、そうか。だが、我とトビトカゲとやらは、全く違うぞ。もっとよく見るがよい。偉大な我の似姿なのだぞ。」


 言われてみれば、確かにナーガラージャ本体を元に、小さく精巧に作られている。おまけに、本体の持つオーラのようなものがある。小さい身体なりに、迫力みたいなものも持っているのだ。トビトカゲに姿はそっくりなので一見間違えそうだが、並べてみたら全く違うとわかるだろう。


 しかし、華が驚いたのは、そこではなかった。トビトカゲに似ていることもそうだが、おチビサイズのナーガラージャが、あまりにも金ピカだらけの眩い姿をしていたからだ。


 なぜだかわからないが、王冠だけでも頭の上に三つのっかっている。首にじゃらじゃらとかけられたネックレスは、あまりにたくさんかけてあるので、エリマキトカゲ状態だ。身体には鎧。腰のところには剣が、金のベルトでとめてある。手と足にはバングル。ご丁寧に指の一つ一つにまで、指輪がはめられている。


 チビナーガは、顔と翼、尻尾のところ以外、どこもかしこも金と宝石で埋もれていた。その宝飾品の重みで、身体がつぶれてしまわないのが不思議なくらいだ。それでいて、ナーガラージャの手の上で姿を崩すことなく、ちんまり座っている。


 なんだってまた、こんなてんこもり状態に…。


 しかも、観光に行くと言った。この格好で??


 華は溜息をつく。小さくなったその姿は、とてもかわいい。二人の会話に耳を傾け、首をかしげる仕草など、華は思わず、ぎゅっとしたくなるほどだ。それだけに、残念すぎる。


「ナーガ……。こんな格好して歩いていたら、皆に標的にされるよ。」


「む?我に挑んでこようとするものがいるのか?別に我は気にしないぞ。」


「いや、違うって!」


 そりゃ、ナーガラージャは気にしないだろう。誰が挑んでこようが、魔物が突進してこようが、どうってことはないのだろうから。


 でも、この姿では間違いなく、トビトカゲと勘違いされる。トビトカゲは、子供のペットにされるようなメジャーな魔物だと、孤児院で聞いた。簡単に人に捕まえられ、餌を与える主人に飼いならされてしまい、メッセンジャー代わりに使われる。そんな魔物とよく似ていたら、絶対それと勘違いされるに決まっている。そんな弱っちい生き物が、これだけのお宝をまとっていると勘違いされたらどうなるか…。


 鱗のネックレスだって、すぐに目をつけるものがいた。こんな小さなトビトカゲっぽい姿に、これだけの財宝を身につけさせていたら、まともに街歩きなどできたものではない。鴨がねぎを背負っているようなものだ。


 華がアランと街を歩いて何事もなかったのは、隣にアランがいたからだけでなく、二人が貧しく見える身なりだったからだ。奪ってお金になりそうなものなど、何も持っていないように見えたからだ。


「ナーガは気にしないかもしれないけど、私は気にする。絶対、人が集まって来る。」


「むう、我を崇めに来るというのか。それは仕方あるまい。」


 華は頭を抱えたくなった。


「ナーガ、それも違う。」


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