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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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孤児院を05

「今日は、あなた方にお話があります。」


 華の肩には、おチビのナーガがとまり、ある一点を見つめて若干の威嚇をしている。


 目の前には、子供達がいた。薬草採取の為にさらわれ、ドーム一号にとどめられている子供達だ。ナーガラージャが睨んでいるのは、以前、華に向かって石を投げ、転移させられた少女。


 華は、なだめるようにおチビの足をトントン、と軽く叩いた。睨まれている当の本人は、そんな威嚇など必要ないほどしおれている。目に、あの時のような反抗的な光はない。別荘で再び会った時に命を救われ、少しは反省したのか、それとも教育がきいているのか…。


 華がこの少女に石を投げつけられたことは、シンロク達もよく知っている。毎日、世話してもらい、ちゃんとした食事や清潔な衣類を与えられたせいか、今ではかなり、見た目だけは普通の子供らしくなっている。


 シンロクによるカウンセリングという名の教育は、ずっと続いている。華にとってはどのように行われているのかわからない、謎の洗脳教育。


 おかげで子供達の視線が痛い。何をどうしたら、あんな風になるのか、華にはさっぱりわからない。子供達の目は、まるで新興宗教の教祖かアイドルでも見つめているような熱がある。だから、ちょっとひねくれている子供がいて、こちらをうさんくさそうに見ているのがわかると、華はかえってほっとした。


 だが、中には少し反応の鈍そうな、感情を表に出さない、ぼうっとした子供もいる。別荘の地下で監禁され、強制的に森に出入りさせられていた事だけでなく、口にはできない何かを抱えているのかもしれない。


「あなた方はこれから、孤児院で暮らすことになる予定です。ですがその前に、そのことについて言っておきたいことがあります。


私がこれから話すことについて、何か聞きたいことがある人は、あとで手をあげて質問してください。わかる範囲で答えたいと思います。」


 子供の数は、十三人ほど。青騎士がかなりがんばって貧民街で聞き取りをしてくれたようだが、消えた子供の数はもっと多いという。あの子供のように死んでしまったのか、もしくは別の理由で違う場所に連れ去られたのか、そのあたりはよくわからず、闇が深い。


 華の目の前には女子が七人、男子が六人いる。女子一人については、母親が引き取りを強く希望していたので、しばらくしたら、条件付きで引き渡されることになっている。


 その母親は針子らしいが、魔力が少ないためドレスメーカーに雇われておらず、店の下請けで内職仕事をしていた。収入は、仕事の出来高により左右されるため、身体を壊したりするとすぐに困窮してしまう。そのせいか、かなり借金を抱えていた。


 青騎士の調べによると、子供は売ったわけではなくさらわれてしまったようだが、この調子では、母親のところに帰してもすぐに生活に行き詰ってしまいそうだ。子供のほうも母親の元に帰ることを希望しているが、同時に母親の生活が苦しいことも承知していた。


 そこで、ある程度借金を返し終わるまで、様子を見ることになった。幸い、針子としての腕は悪くなかったため、担当した青騎士が彼女に就職を斡旋してやったようだ。


 小さな店ではあったが、店主は新聞記事を読んでいて、さらわれた子供について知っていた。おかげでその母親に同情的で、店の屋根裏でよければ住みこみで雇うと言ってくれたらしい。こんなところにもアランの作った新聞の影響がでているのかと思い、華はうれしくなった。このぶんならこの母親は、しばらくしたら生活を安定させて子供を迎えることができそうだ。


 しかし、この子以外の子供達の行き先は、孤児院だ。


「今度私は、新しく孤児院を作ることになりました。この孤児院は、教会附属のものではなく、私個人が作り、運営するものです。


あなた方には、従来の孤児院と私が作る孤児院、二つのうち一つを選ぶ権利があります。」


 華に突然そんなことを言われ、多くの子供達はぽかんとしていた。



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