別荘の始末
「うわ…。」
華の目の前で、次々と更地が出来ていく。それはもう、豪快だな、としか言いようがない状況だ。
ナーガラージャは今、カーデュエルとアルゼ村の境で、結界によって分断された別荘を『収納』している。
ここいらの別荘は全て、前村長の個人資産だった。かなりの大金を投じて次々と大きな建物を建て、村にやってくる貴族や金持ちに貸していた。それらは今、全て差し押さえられ、華が自由にできる不動産と化している。
ここを借りていた人間は、すでにどこかに移動していった。結界ができたことにより、別荘は分断され、整備されていた道路はカーデュエル側にあるため、全く使えない。
別荘の住人達は、突然起こった現象に度肝を抜かれ、アルゼ村の出入りが解禁となると同時に出ていってしまった。結界ができた時に起こった現象への恐怖と、今後何が起こるかわからないという懸念で、とても落ちついて暮らせないと判断したようだ。
おかげで華は、建物に住んでいた住人に移動を促す勧告を行う必要もなく、簡単に接収できる。道路がなく馬車が使えなかったせいだろう、中には食料や生活用具が残っている建物もあった。建物内には家具もついているので、趣味の良し悪しはともかく、そのまますぐ使えるというわけだ。
とはいうものの、別荘は結界によって分断され、どちらか半分しか使えないような状態だ。このままでは不便この上ない。そこで、ナーガラージャの出番になった。
彼は簡単そうに、ひょい、ひょいと大きな建物を収納していく。面倒な工事も何もないまま、建物の基礎部分からごっそりだ。それらがこの地上から消え失せていく様は、まるで大がかりなマジックでも見ているようで壮観だ。次々と更地になっていく様、建物によっては地下室部分があるので大穴ができる様に、華はわくわくさせられた。
こんなことが可能なのは、魔力量が豊富なナーガラージャならではだろう。一つ建物が消える度、華が大喜びで拍手をしていたこともあって、ナーガラージャも得意そうだ。
以前、カーデュエルの山の上にある神殿が、『はじまりの王』によって持ち込まれたと華は聞いたことがあったが、ナーガラージャが別荘を収納している様を見ていると、さもありなん、と納得させられてしまった。
ナーガラージャに別荘を収納してもらっていたのには、わけがある。人の住まなくなった建物は、傷みやすい。いつまでも空き家にしておくと、勝手に入り込む連中が出て来る。住むだけならともかく、悪いことに使われたらかなわないし、かといって何軒もの空き家をそのまま管理するのも大変だ。
だったら有効利用するに限る。これから華がやろうとしていることに、建物を使えばいい。ナーガラージャの収納を介して、必要な時に取り出せばいいのだから、建設費用も必要ない。
だが、一軒だけ、収納しなかった別荘がある。例の、さらわれてきた子供を閉じ込めていた屋敷だ。
無駄を嫌う華も、さすがにあの屋敷を使う気にはならなかった。再利用するにしても、忌まわしい気がするのだ。すでに現場検証も終わり、証拠物件は残さず持ち出されている。無駄に広い屋敷の中は、荒んだ空気もあり、すでに幽霊でも出てきそうな雰囲気だ。
「点火して。」
華は、その屋敷を火葬することにした。文字通り、火をつけて燃やして失くしてしまう。火で清め、浄化させ、区切りをつけるためだ。被害者からすれば、二度と見たくない建物だろう。残しておいてもよいことなど一つもない。




