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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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騎士

「騎士は白、黒、青の三種類いるんだ。白は、魔境王の親衛隊で、これは本当に各領から選抜されたような、いわゆるエリートで、貴族が多い。


黒は、総主教様直属の部隊。こちらは実力が伴うエリートで、貴族も平民もいる。


それから青は、この王都の治安を主に守ることを仕事にしている。青いのは、昔の平民が青い服を着ていたからで、ここはほとんど平民出身者が多い。


兄貴は優秀で、黒騎士にもなれたんだけど、黒はあちこち遠くに行ったり魔物の駆除とか、危険なことも多い。俺のことが心配だったみたいで、兄貴は青騎士になったんだ。本当、気にしなけりゃいいのに。」


「青騎士か…、なるほど。」


 騎士とはいうものの、警察のような仕事をしているということか。


 そういえば、総主教に会いに行った時、建物中にはいろんな制服を着た人がいた。確かに、白、黒、紺の三種類の色がついていた。


「それで、さっきの子供がさらわれる話なんだけど。」


「ああ、噂話ね。実は私もよく知らないの。話した本人だって、噂話だって言っていたのだから。」


「知っている範囲でいいよ。教えてくれる。」


「いいわ。私が話せる範囲で、起こったことを話すね。」


 華は、この時点でアランのことをかなり信用できると感じていた。


「どうやってそこまで来たか、どうしてそうなったかは言わないわよ。」


 そう前置きをして、華は話し始めた。ゴミ箱をあさっていた老人、追いかけて来た二人組の男。建物の中に華を招き入れた女。その女から聞いた噂話。女が実は娼館の店主で、華に焼き印を押そうとしていたことなどを。


 アランは、華が話している間、しばらく黙ったままだった。


「それは君…、それでよく無事でいられたもんだね。もしかして、魔法が使えたの?」


「それは…。」


 華は、お守りのネックレスのことを言うべきかどうか、迷った。が、彼には少しだけ話すことにした。


「お守りを持っているの。ネックレスの。それが、守ってくれた。」


「お守り?魔道具のこと?」


 魔道具?このお守りって、そういうものなのかな?


「そうか、それでなんとか逃げることができたんだ。でも、危なかったね。魔道具を持っていても、魔力がなくなったら発動しなくなる。だから君は、運が良かったんだ。」


「魔力がなくなると、魔道具は動かないの?」


「それも知らないのか…。うーん。君のこと、先生になんて説明したらいいんだろう。」


 彼は困ったような声を出した。


「先生?」


「うん。孤児の面倒を見ている人だよ。一応、先生に許可をもらわないと、勝手に服を持ち出したり、風呂に入ったりもできないから。」


 なるほど。それは仕方がない。税金や寄付金で運営されているのだ。誰にでも物を配ったりしていたら、すぐに金も物もなくなってしまうだろう。


「最初に先生のところに行くよ。これは決まりだから、仕方ないんだ。そこで、いろいろ話を聞かれると思う。


まあ、君の格好を見ればすぐに訳ありだってわかるから、多分、仮登録みたいな扱いで受け付けてもらえるんじゃないかな。」


「ええと、しばらく様子を見ましょう、みたいな感じ?」


「そうだね。少しの間、孤児院で保護して、身元の確認をしてから本登録になるかな。


君の場合、着ているものがいいから、貧民が子供を捨てに来たとは思われないだろうけれど、金持ちなら親戚がいるはずだと思って調べるかも。


あと、何か事件にまきこまれているかもって、調べられるかもしれない。でも、引き取り手がいなければ、孤児院預かりになる。」


「ふうん。」


 華にとって、親がいないことを証明することは不可能だ。この姿だって、説明できない。まともに説明しても、わかってもらえない可能性だってある。だいたい、召喚を行ったクラーラだって、女だから間違いだったと思ったくらいだ。子供の姿で魔境王として召喚された、などと言えば、嘘つきだと思われかねない。


 それだけじゃない。中途半端に説明して、ドラクール公のところから迎えが来るのも困る。華はあそこで毒を飲まされ、殺されそうになったのだ。連れ戻されても、命の危険がある。


「ええと、とりあえず、記憶喪失の子供が変な男に追いかけられていた、とでも。」


「記憶喪失か…。先生は悪い人じゃないけど、君はいろいろ事情があるみたいだし…。うん、それがいいかも。下手なことは言わないほうがいいね。」


 こんなところで演技力を求められるとは思わなかった。そう都合よく記憶喪失のふりができるかどうかはわからないが、そこはすっとぼけるしかない。


「うん。なんとかする。」


「まあ、とりあえず保護はしてもらえると思うよ。君はそれで、いいんでしょ?」


「そう。それでいい。」


「それでさ、さっきの話なんだけど。」


「さっきの話?」


「うん。男に追いかけられたり、娼館での話。それ、兄貴に話してもいい?」


「青騎士をしているお兄さんに?」


「そう。明日、休みなんだ。俺、会いに行くつもりだったんだけど、一緒に行って、その話、兄貴にしてくれない?」


 すぐに返事をしなかった華を気にしたのか、アランはこう続けた。


「もちろん、全てを話す必要はないよ。君が話せるところだけでいい。子供がさらわれるっていう話は、今のところ噂でしかない。


けれど、薬を作っているなんて話は、はじめて聞いた。きっと何かあると思うんだ。」


「そうね。火の無いところに煙は立たないものね。私もどうして薬を作る話になるのかって、疑問に思ったわ。


だって、わざわざ子供をさらって薬を作らせるより、そのへんの大人を雇って作らせたほうが効率がいいのに決まっているもの。


もし、その噂話が本当なら、何か、子供でなくちゃいけない理由があるはずなのよ。」


「俺もそう思う。変な噂には、きっと何かあるんだよ。君が変な連中に追いかけられていたのも事実だ。娼館の女もひどい。


子供相手に、薬をもって借金奴隷を偽装しようとするなんて。奴隷でなくたって、あんなところで子供を働かせようなんて。」


「そうね。白昼堂々子供を誘拐しようなんて、普通じゃないもの。私は捕まらずに助かったけれど、子供がさらわれること自体が解決したわけじゃない。


さらわれた子がどんなことをさせられていたのかも、興味ある。きっとあいつら、似たようなことを何度もやっているはずよ。叩けばいくらでも埃が出そう。いいわ。これで少しでも捜査の助けになるなら、話すわ。」


「頼むよ。あ、見えて来た。あそこが聖魔教会付属の孤児院だよ。」



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