お守り
ナーガラージャは、きょろきょろと周囲を見渡すと、急に金の山からネックレスや鎖のようなものを引っ張りだしはじめた。
金の先には、赤や青、緑、黄、白、様々な色石が揺れている。いずれも値打ちのある宝石に違いない。だが、彼は河原の石ころでも拾っているように無造作だった。鎖がからまりあおうが、石に傷がつこうがいっこうに気にならないらしい。
一つ引っ張り出してきてみては、これは違う、とばかりに、ぽいっと、またもとの山に放り投げる。それを何度か繰り返していたが、そのうち、どうやら彼のめがねに適ったものがあったのだろう。一つのネックレスをじっくりと検分しはじめた。
と思ったら、何を思ったのか彼は、突然ぶちっと、ネックレスの鎖を手で引きちぎった。
「ええっ?!」
次に、彼は板のような鱗を手のひらにのせ、両手でぱんっ、と軽く叩くようにしてはさんだ。すると、ノートくらいの大きさだった鱗は、大人の親指の爪ほどの大きさになった。
「すごい、小さくなった!」
ナーガラージャは、にや、と笑った。華を驚かせたことでとても気をよくしたらしい。
「見ておれ。」
得意げに華の前に片手を差し出し、四枚の鱗をまたどこからか出してくる。そして、先ほどと同じように、さらにぱんっ、と小さくしてみせた。
「すごいすごい。それに、なんて綺麗。」
思わずそんな言葉がもれた。まるで手品を見せられているようだ。
小さくなった鱗は、黒真珠のように艶々とした中に、チカチカと細かに瞬く花火のような輝きを見せていた。
美しい鱗とナーガラージャの魔法に、すっかり華は魅了されていた。
彼は、手のひらに作った五枚の鱗を並べ、先程無造作に引きちぎった金の鎖をその横に添えた。そうしておいて、空いていたもう片方の手で、上から蓋をするように押さえた。何かを念じるように唸り、そっと合わさった両手を開いた。
するとそこには、細かな金細工が、植物の蔓のように絡まる美しいネックレスが出来上がっていた。鱗は、三日月のような金に抱かれるようにして、最初に小さくした鱗を真ん中に、左右に二枚ずつ、バランスよく並んでいる。
「ふん、こんなものか。」
「うわぁ。そんなこともできるんだ。ナーガ、すごい。」
華は、パチパチ手を叩いた。
「む、我は、なんでもできる龍なのだ。」
そういうと、ナーガラージャはネックレスを華の首にかけた。
「え、私に?」
「そなたにやる。お守りだ。我の鱗は、どんな攻撃も弾く強い鱗だぞ。小さきものどもの悪意程度など、ものともせぬ。
身につけている限り、そなたは守られる。そなた専用だから、そなたの意思がない限り、他のものは使用できぬ。」
強い鱗だと、ナーガラージャは得意げに自慢するが、華は思いがけず、とてもきれいなアクセサリーをプレゼントされてびっくりしていた。まさか自分のために作っていたとは思わなかったのだ。
「うれしい。ありがとう、ナーガラージャ。これ、ナーガの手作りだから、世界に一つしかないネックレスだね。」
首にかかったネックレスの黒い鱗を手でそっとなでながら、華ははにかんだ。こんな贈り物、今まで誰からももらったことなどない。
「む、礼はよい。今度毒を飲ませられたら、それを口に含んでおけ。解毒できる。」
華は、ネックレスに触れていた手をあわてて離した。
「解毒のできる鱗?薬なの?それじゃ私、さわったりしないほうがいい?さわったら、溶けてなくなってしまう?」
「む、大丈夫だ。溶けるどころか、傷一つつかぬ。」
「よかった。」
「さて、それでは取りに行ってくるがよい。」
「??取りに行く?どこに?」
「決まっておろう。王都だ。」
ナーガラージャは、当たり前のことをなぜ聞くのか、といった表情だ。
「いったい何を?」
「ブックを。」
次の瞬間、華はどこかに飛ばされていた。




