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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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収納

「そうだ、ナーガ、これ。」


 華は、ポケットにもどしていた銀紙を取り出した。


「チョコレート、あげる。」


「む、よいのか?世界中に、これしかないのであろう?」


 ナーガラージャの目は、たちまちチョコレートの銀紙に吸い寄せられている。だが、その言葉に思いやりを感じて、華はうれしくなった。


「いいの。ナーガにあげたいから、プレゼントする。ちょっとずつ食べて、楽しんでね。」


 そう言って、華はナーガの手をとると、その上に銀紙をぽん、とのせた。


「確かにそれと同じものは、この世界にはない。でもね、もしかしたら似たような味のものが、こちらにもあるかもしれないでしょ?それを探してみるのも楽しいよね。だから、いつかそれを見つけたら、また一緒に食べよう。」


「む、そうか。うむ、そうだな。我はこれをいただこう。そして、チョコレートを探したら、また華と一緒に食べよう。うむ、それはとても楽しみだ。」


 そう言って、ナーガラージャはチョコレートの入った銀紙をさくっと消し去った。


「え?」


 消えた…。一瞬でチョコレートが消えた。


「む、どうしたのだ?」


 華は、ナーガラージャの手を指さす。


「今、消えた…、チョコレートが、そこから…。」


「ん?ああ、収納しただけだぞ。」


「収納?」


「ほれ。」


 ナーガラージャが華の前に手を突き出した。手の上には、銀紙に包まれたチョコレートがのっている。


「え、今の、どうやって?」


「どうやって、と言われても…。」


 彼は、再びチョコレートをどこかに消すと、今度は別のものを取り出してきた。


 薄くて黒い、ノートくらいの大きさの板みたいなものだ。黒色の中に、螺鈿細工のような輝きを持つ、美しい板だ。その輝きは全くランダムに、パチッ、パチッと独特な間隔でもって、内側から湧き出るような光を放つ。


「これ、なあに?」


「我の鱗だ。」


「え、これ、鱗なの?」


 華は目を皿のようにしてじっと見つめた。確かに、よくよく見ると、細かい線や溝が年輪のように入っている。それでいて、時々、線香花火のように光るのだ。先ほど、彼の本体を見たばかりの華は、あの身体はこれで覆われていたのか、と納得した。


「きれい…。」


 華が見とれていると、ナーガラージャは板を華のお腹にあてて、ぐいぐい押しこもうとする。地味に痛い。


「そうであろう。我の鱗は美しいに決まっておる。ん、入らぬ。なんでだ。そなた、入れ物はないのか?」


 どうやら、その板のような物を華に突っ込もうとしていたようだ。


「入れ物?持ってないよ。この寝巻のポケットじゃ入らないし。」


「そうではない。収納のための空間だ。」


 収納のための空間って、なんのこと?華は首をかしげた。


「どうやら持っていないようだな。では、魔法で作るがよい。」


「ええと、入れ物を作れってこと?魔法で?そんなの、どうやって作るの?材料もないのに。」


「魔法で作るのだから、材料などいらないだろうが。適当に作ればよい。」


 なぜそんな当り前のことを聞くのか、といった顔を彼はしているが、華にそんなことがわかるわけがない。


「適当って、いったいどうやって?」


「むむ。」


 ナーガラージャは小さく唸ると、少し考え込んでいた。


「む、そういえば、小さきものどもは皆、魔法式を書きこんだ、ブックとかいうものを使うのだったなぁ。面倒な。」


 ブック?魔法式を書きこんだ、ブック?


 本のことだろうか。そういえば、クラーラやゾルタンが指揮棒みたいな杖で叩いていた。あの本のことか。


「それがないと、魔法が使えないの?」


「そういうわけではない。我らは皆、そんなものはなくとも魔法を使っておる。だが、人間どもにはそれが難しいらしい。確実にわかりやすく使えるように、魔法式というものを使うのだそうだ。そうすれば、皆、同じような魔法が使えるからな。」


 それはつまり、万人向けになっている、ということだろうか。誰でも使えるように、統一された記号式みたいなものを使って。そうすれば皆、同じ魔法を使えるし、たくさんの人に教えることもできる。


 確かに、そんな便利なものがあるのなら、それを使うだろう。あんな風に、本に書かれたページを杖で叩いただけで魔法が発動するというなら。


「魔法式で書かれたものに魔力を通せば魔法が発動する。内容はわかっておらずとも、使えるらしい。全く、魔法一つにしても、はじまりの王は小賢しいことを考える。」


 その言い方から察するに、はじまりの王との間に何かあったのかもしれない。それなのに、よく華を助ける気になったものだ。


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