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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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箱庭

 ユリウスが指さしたのは、島の中央より少し西側にある山だった。


「この大陸のことを、我々はアステール大陸と呼んでいます。


 こちらのカーデュエルの土地は、他の五つの領及び王都のあるシオン領、計六領と境を接しています。


 この土地の北西に、ドラクール領、北にシオン領、北東にエミル領、続いて東にドーアー領、南にカーロン領、南西にヴェート領です。


 私がこちらに参る時に通ったのが、このドラクール領のアルゼ村です。なぜ王都のある領から直接こちらに入らなかったのか、不思議に思われるかもしれません。


 他の領も地図の上ではカーデュエルに接してはいるのですが、このように高い山脈、火山、砂漠などに阻まれ、簡単に侵入できない状態なのです。


 一番、こちらに入りやすいのが、このドラクール領とヴェート領です。


 ですが、ヴェート領のものは獣人が多いせいか、大変こちらのカーデュエルを神聖視しております。


 先祖が魔物と人間の混血と言われていることもあって、他領のものが魔の森、魔の山と呼ぶところを、昔から聖なる森、聖なる山と呼んで崇めています。


 農業を主たる産業にしていますので、こちらの主様のことを龍神様と呼び、怒らせては雨が降らなくなるという話もあるのです。


 そのため、彼らは独自に龍神を祀る祠を作り、カーデュエルに入ることを禁忌としております。


 ですから、こちら側から入ってくるものがいるとしたら、それはよそ者がほとんどですね。


 侵入しようとする前に地元の者に注意を受けても、聞かなかった者だろうと思います。」


 彼がそう言うと、ジェイドが同意した。


「そのようです。確かに、こちら側から入ってくるものは滅多におりません。たまに入ってきても、大人ばかりです。」


 華は頷く。ならば、ヴェート領側のほうはとりあえず放っておいてもよいだろう。それにしても、龍神様を怒らせると雨が降らなくなるとは、まるで東洋の水神のようだ。それはそれで、干ばつの時は生贄でも捧げてきそうでこわい。


「四方を海に囲まれているようですが、この他に島とか大陸はないのですか?」


「ここに描かれているもので全部です。この通り、この大陸の周囲に小さな島が点々とある他に別のものはありません。


 昔、この海の向こうに何があるか知ろうと船を出したものがいます。他にも島があるのではないか、別の国があるのではないかと考えたものがいるのです。


 そこで、海の果ての先に行こうとしました。ですが、海の果て目指した船がたどりついたのは、海の終わりでした。


 ある所まで進むと、そこで海が途切れているのです。途切れた海の水は、滝が高いところから流れるように世界の外縁から水を流し続けていました。


 船はいきなり、そんな大瀑布のような場所に出て、その水の流れに押しやられ、滝を落ちていきました。


 その後、気付けば船はさらに別の海にたどりついていました。果ての向こう側に来たのだと思っていた船は、さらに同じ方向を目指しました。


 すると、とうとう陸地にたどりついたのです。ですが、そこはこの大陸のこちら側、北側でした。


 船はどういうわけか、この地点から、別のこの地点へ移動していたのです。


 おかしいと思い、何度か同じような実験を繰り返しました。


 すると、同じように移動しているはずなのにもかかわらず、たどりつく場所は毎回違う場所でした。


 つまり、北だったり、南だったり、どういうわけか全く別の場所に移動しただけだったのです。


 そして、とうとう他の大陸、島などは見つかりませんでした。」


「はぁ?!」


 華は、思わず間の抜けた、珍妙な声をあげてしまった。


 信じられないようなことを聞いたからだ。この一つしかない大陸の西側から船で出港し、西へ西へと進むと海の果てがあり、そこは滝になっていた。滝を落ちて行くと、いきなり北の海の果てにワープしていた、というのだ。


 つまり、この大陸と海のあるこの世界は、地球のような丸い形をした星ではない、と彼は言っている。華はそこで、孤児院で見た月のことを思い出した。あの月の、妙な移動の仕方。華のよく知っている、滑るように軌道を描く移動ではなく、教会の鐘が鳴る時間毎にぽん、とはじかれたみたいに移動する月……。


 華は頭に片手をやり、目を閉じた。


 ここが別の世界であることは知っている。でも、星ですらないってどういうこと?それはつまり、同じ宇宙のどこかに存在する、どこかの星ではない?確かに、丸くない星なんて、いくらでもある。歪な形をした、壊れた状態で空間を彷徨う欠片とか。粉々になった星の欠片が、またぶつかりあったり、引き寄せあったりして、新しい自分を作るように形を求めて。


 だけどここは違う。世界が海の果てで突然途切れ、滝になっている。まるで、水盤の上に船を浮かべ、水を入れ続け、こぼれるにまかせているみたいに。そのくせ、水盤からこぼれ、滝から落ちたものを別の場所に出現させる。落ち続ける水はどこに?ポンプで循環させる水槽のよう。滝から落ち、どこかへ消えてしまうこともなく、その世界の中だけで、永遠に循環させるように。


 それじゃあここって、いったいどこ?ここは何?それではまるで、まるで…。


 まるで誰かの作った箱庭ーーー?



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