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101(ワンオーワン)   作者: 叢雲弐月
101人目の魔境王
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言霊縛りの石

「場所を変えましょう。ナーガ、おなかがすかない?そろそろ夕食の時間だと思う。皆で夕食を食べながら、話したいんだけど。」


「む、そうだな。我も食べるぞ。そなたらも来るがよい。」


 ナーガラージャがそう言い、ユリウスとクリシュナを誘ってくれた。

 

 華はジェイドと共に、一度寝室のほうに引っこむことにした。言霊を縛る石を部屋に持ち帰るためであったが、もう一つ別の理由もあった。


「ごめん、ジェイド。何もかもが重くって、もう、無理。この貧弱な子供の身体に、フリフリだらけの重い服と王冠のコンボは、きつすぎる。」


 つまり、華には耐えられなかったのだ。確かにデザインは可愛いし、豪華だ。頭にのせた、小さな王冠だって色石がついていて素敵だと思う。


 でも、重い!何もかもが重すぎる。


 特に頭にのせていた王冠。これは、大人サイズのものを小さく凝縮させたものなので、重さ自体は元と全く変わっていない。世の中の王様達は、よくこんなに重いものを頭にのせていられるものだ、と華は思ったが、大人サイズの王冠が小さくなった結果、より狭い範囲に重さがズシリとくる。つまり、頭全体にのるはずの重さが、子供の拳大くらいのスペースに集中することになる。しかも、金の重みプラス、個々の宝石の重さがある。そのせいで、地味に華の頭を攻撃してくるのだ。


 加えて、フリルとか、レースとか、フリルとか、レースとか…。


 見るのに美しい服や物は、見るだけで心が浮き立つ。着ることで自分の自信にもなる。けれど、身体に負担になるほど重いとなると、話は別だ。華は元々、ジーンズにシャツ程度しか着ていなかったため、おしゃれのために、気合いでなんとかしようという気概もない。


 それに、話し合いはこれからが本番といっていい。なるべく頭をすっきりとさせておきたい。身体に負担を抱えながら色々なことを考えるのは大変だ。


「とても素敵だし、ジェイドが一生懸命作ってくれてうれしかったけれど、ずっと着続けるには重くて私には負担が大きい。私が魔法を上手に扱えるようになったら、こういったものも魔法で軽くして着れるようになると思うけれど、今はできそうにない。ごめんなさい、着替えさせて。」


 華はジェイドに向かって両手を合わせ、お願いした。


「承知いたしました。今回のことは、華様のお身体のことを考えなかった私の落ち度です。次からは重量軽減化を心がけます。その為には、素材から革新しないといけませんね。どうしても譲れないデザインの時は、魔法で重さ自体をなんとか出来るように、根本から鋭意工夫いたしてまいります。」


 いや、気を使ってほしいところは、そこじゃなかったんだけど…。ジェイドの努力の矛先は、どこまでも華の希望とは別方向へと向かって行きそうだ。そのうち、機織りでも始める気だろうか?


 華は別に、着るだけならジャージでも一向にかまわない。いっそのこと、こちらからジャージのようなものを作らるよう提案したほうがいいのだろうか?しかし、今のままではそのジャージにもフリルや刺繍が入って、別のものになってしまいそうだ。


 華は、とりあえず軽くて着心地のよいシンロクの上着を羽織り、ジェイドに帯をリボン結びしてもらった。


「はぁ、すっきりした。」


 本当なら、主賓を迎えての晩餐会だ。要人に対し、軽装は失礼だろう。さっき無理やり忠誠を誓わせたばかりの者を軽く見ていると、相手は気分を害すかもしれない。


 だが、それでも相手はテーブルにつかざるをえない。ユリウスは、このカーデュエルでの華の発言権の大きさを目の当たりにしてしまったのだから。


 華は別にそれを意図したわけではなかった。結果として、そうなってしまっただけだ。でも、華にとって大恩あるナーガラージャが、かなりコケにされているらしいことがわかり、それを見過ごすことができなかった。話をしているうちに、熱くなってしまったことは認める。ユリウスによる一方的な華への契約は、その延長上についてきた、おまけのようなものだ。


「さて、どうするかな…。」


 肝心なことの話し合いは、まだはじまってもいない。こんな契約で一方的に人を縛ることがいいこととは思わない。華は、ベッドの上に座り、広間で渡された記録の石を手のひらで転がす。


 アメジストの大きな結晶のような石は、透明感があり、濁り一つない。自分の宣誓を破ると呪われる、言霊による縛り。自分の言霊によって、自分の魔力で作られる石。言霊縛りの石…。


 こんなものをもらおうとは思っていなかった。本当は、そう言って相手に返したほうがいいのかもしれない。華は、一方が他方にする契約とはいえ、これまでの契約と同じ延長線上にあるものだと思っていた。


「ジェイド、この石を相手に返したら、どうなる?ユリウスの私に対する宣誓は、なかったことにできる?」


 ジェイドは、後片付けをしていた手をとめ、華を見つめた。


「華様は、あの者を信用しているのですか?」


 その言葉を聞いて華は、彼女がユリウスに対し、不信感を持っていると改めて思った。ナーガラージャも同じなのかもしれない。彼は最初、ユリウスが華にひどいことをした仲間かもしれないと思っていたから、追い払おうとしたのだ。


「信用できるかどうかは、まだわからない。でも、話をしていて、悪い人間とも思えない。」


「さようですか。人は魔物と違い、移ろうものです。今は信頼できるとしても、明日はわかりません。私は長年、森に入って来る人間共を鏡に映してまいりました。鏡に映し、その人間がどのようなものか、見てきました。華様は、私のしたことが気に入らないかもしれませんが、どうかそれは、お持ちになっていてください。」


 あの、鏡。あれに人を映し、人を計り、ジェイドはいったい何を見たのだろう?ナーガラージャも、言葉を濁していた。見ても、あまり気持ちのよいものではなかったみたいだから。


 だとしたらジェイドは、自分を見て何を思ったのだろう?自分の中身が、とても人に自慢できるようなものでないことくらい、わかる。それでもジェイドは、わざわざ拾って助けてくれた。


「ごめんね、ジェイド。私がジェイドに、そうさせたんだね。心配かけて、ごめん。とりあえずこれは、私が持っておく。ただ、置き場所に困る。壊したり、なくしたりしちゃいけないと思って…。」


 つまりはそういうことだ。ジェイドがわざわざ鏡でユリウスを映し、記録をとったのは、華を心配したからだ。華が他のものに騙されないように、酷い目にあわされないように。保険をかけるように言質をとり、華の代わりに憎まれ役をやってくれたのだ。


「華様があやまられるようなことは、何もございませんよ。石は、とりあえず主様の収納に収めておきましょう。」


「そうだね。それが一番安心だと思う。私も早く、そういった魔法を覚えたいなぁ。」


「わかりました。では、一応、お預かりします。」


 華は、ジェイドに石を渡した。


『華、何をしておる。夕食の用意は出来ておるぞ。琥珀の間に早く来い。』


 急に、肩に乗っていたおチビのナーガラージャから声が聞こえて来た。


「あ、ごめんごめん、着替えをしていた。これからすぐ、そっちに行くね。」


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