‡~約束~
ここにて挿絵を付けます。
(覚醒現象伝説シリーズ物には全部、挿絵を付ける予定です)
下手ですが、これで少しでも感じが分かってもらえると幸いです。
思い出した……。それはレンが死ぬ1週間前だった。その時、レンは体調を崩し、倒れてしまい、ベッドに横たわっていた。私はレンのことが心配でたまらず、ずっとレンの看病をしていた。でも、レンの容態は悪化するばかりで、もう駄目かもしれないと思うと、胸が痛み、獣になって狂いそうになった。
「レンが死ぬ……死ぬ……死ぬ……死ぬ……!!!!」
ある日、ついに私は獣になってしまった。思いを抑えることが出来ずに、ただ暴れ回った。だけどレンは傷付けなかった。レンが大切だとあの時……暴走してても分かったから……。私達の家(レンの研究所だけど)の外で密かに暴れ、人を襲った。レンに気付かれないように……静かに人を殺した。それは夜まで続いた。人が通らない時間帯は動物を襲っていた。自分が血で汚されていくことに気付かずに。
「ナニモカモ……壊レテシまえ……!!」
そんな思考が私の頭を支配した。
「……!!」
何か痛みを感じた。すると視界は大きく歪み、倒れる。
……アレ……力が……入ラ……ナイ……? ドウ……シ……テ……。
「やっと見つけた……。これが覚醒人間か……。しかもこいつ……子供の姿だが相当長生きしているらしい……。面白い、俺の研究材料にしてやる。ぐへへへ……」
コノ人……私ヲ実験台ニスル……ツモリだ……。ウゴケ……ワタシ……。
「ソウは……させなイ……」
私はフラフラながらも立ち上がり、男を睨む。
「そんなに怪しむなよ……覚醒人間。ちょっと俺の研究に協力してもらいたいだけなのさ」
ソンナの嘘だ……。アァ……だからこういう人間ハ……。
「モウ動けない……トデも?」
そう言うと、目を真っ赤にし、高く飛び木の枝に着地する。
「さすが覚醒人間だねぇ。ますます欲しくなったよ……」
男はニヤッと気味の悪い笑みを浮かべ、鎖で繋いだ鉄球をこちらに向けた。
「貴方……タダ者ジャ……ナイのね」
私は再び高く飛んで急降下し、男に爪を立てた。
「そう来ると思ったよ。それならこちらは……!!」
男は鉄球を離し、銃を出した。
「さぁ…これで終わりだ……。覚醒人間……!!」
「……!!」
モウ駄目……。ヤラレちゃう……。レン……ゴメンね……。
『やめるんだ……!!』
声が聞こえ、そして止まった。時間が止まった。
「……!? レン……!?」
私は今のうちと思い、急降下し、男に傷を入れ、1回転して着地した。
「レン……いるの?」
この能力は心の赤を持つ者の力だった。そして近くにいる心の赤を持つ者と言えば、ベッドに寝ているレン……。だけど彼は体調を崩していて、そんな力を出す体力なんてないはず……。
「とりあえず……逃げなきゃ……!!」
私は急いで家まで飛んだ。飛んでいる途中、見覚えのある人物像を見かけ、そこに着地すると……
「……やっぱり!! レン!!」
「留美……無事……だったんですね……。良かった……」
力を使ったせいか、レンは激しく息を切らしていた。そう、あの時みたいに……。
「そんな体調なのに……力を使っちゃ駄目だよ……」
私は後悔した。病みに負けて暴走して……勝手に傷を負って……レンにも迷惑をかけてしまった。私は自分が情けなかった。
「命に別状がなくて……良かったです……」
レンはこんな私の頭を撫でて、そっと抱き締めてくれた。かなり弱い力で。レンの息が私の近くで鳴る。あぁ……レンは必死だったんだ……。動けるような体調じゃないのにも関わらず、私を守ろうと……。レン……ごめんなさい……。
「留美……聞いてくれ。この件で新たに分かった……。覚醒人間になると感情移入しやすくなる……。そして、それが限界まで行くと……今みたいに暴走してしまう……。だから……留美……今後は話を聞く時、気を付けた方がいい……。じゃないと……大切な人まで傷付けてしまうから……。出来るだけ気を付けて下さい……。無理するのは良くないですが、暴走してしまっては元も子もありません。……分かりましたか? 留美」
立つのも辛いのに、レンはずっと立ち続けていた。その姿に私は泣きそうになった。
「……分かった……。なるべく冷静にいくね……」
そう言うと、レンは微笑み、私の頭を撫でた。
「さぁ……帰ろうか、私達の家へ……」
「レン!! 支えるから、無理しちゃ駄目だよ!!」
私は溢れる涙を拭って、姿を人間に戻し、レンを支えた。
――――そして数日後レンは息を引き取った――……。




