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彼女が中心で  作者: 星沢 遼
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相談と相談

「それは出来ない」

 朝、やはりと言ったように川井は僕に話しかけてきた。一緒に話に行こうと誘ったら答えは僕の予想とは違った。高山さんに話しかけに行くなら喜んで来てくれそうなのに。

「どうして?川井は話したことあるんだろ?」

「あるにはある。でも、一回だけだ。おまけにもう話せそうに無い」

 はっきりとわかったようにそんな事を言う。

「何かした?」

「転校初日に彼氏いる?って聞いたんだ」

「なるほど、川井はバカだな」

「違うんだ。俺はクラスの情報源として聞かなきゃいけなかったんだ」

 必死に必要な行動だったことを説明してくる。

「で、その答えはどうだったの?」

 そこはとても気になる。

「答えは返ってこなかった……」

 悲しそうな顔する。僕も色々な意味で悲しくなった。

「というわけで俺はあの日からなんだか怖くて近づくことすらしなくなったんだ、残念だけどな」

 お互い言うことも思いつかず沈黙が流れる。クラスは騒がしいのに僕らのとこだけはお葬式だった。

「おはよー、どうしたの?朝から元気ないじゃん」

 元気な声と笑顔で松本さんが沈黙を破った。昨日と一緒で息を切らしていた。

「あ、松本さんおはよう」

「おはよう……そうだ、崎川。さっきの松本さんに相談すればいいんじゃないか?」

 川井がこの手しかないだろと言った風に僕を見る。

「え?何々?なんのこと?」

 何をさせられるのかわからない不安と、楽しそうなことへの期待半々と言った表情で聞いてくる。

「ちょっと待って」

 川井だけに聞こえるように声をひそめる。

「どうやって説明するんだよ。僕が高山さんと話したいなんて言ったら好きだと思われちゃうじゃないか」

「あー、そうだな……。じゃあ、俺が話したいってことでいいぜ。話したいのは本当だし」

 親指を立ててこれで大丈夫だと言ってくる。

「あのさ松本さん」

 言おうとしたところでチャイムが鳴る。

 また後でということになり、みんな自分の席に戻った。



「ごめん、それは無理かなあ」

 昼休み、再び三人で集まり事情を松本さんに説明した。答えは無情にも川井と同じだった。

「高山さんと話したことなかった?」

「あるにはあるんだけど」

 朝も同じようなことを聞いた。

「どうも話が合わないっていうか、苦手っていうか」

 ノリが合わないってあるよね、と彼女は言う。

「それよりもなんで高山さん?川井くん、高山さんのこと好きなの?」

 直球で聞いてくるのは彼女の性格かな。ちなみに、そうなのは僕だけど。

「いや、そういうわけじゃないんだ」

 おい、そこは好きってことにしないと話が続かないじゃないか。どうするんだよ。

「じゃあどういうこと?」

「あー……」

 川井が答えに詰まり困る。そして、僕にだけに聞こえるように言う。

「なあ、もうお前が話したいってこと言っちまおうぜ。そっちのほうが話が早く進む」

 僕はそれが嫌でやめようと言ったのに。

「それはちょっと恥ずかしいんだけど」

「いやいや、今さら転校生に話しかけに行こうってやつがこんな事で恥ずかしがるなよ」

「それはたしかにそうだけど」

「松本さんならきっと大丈夫だ、俺の直感がそう告げている」

 無責任なこと言うもんだ。でも、たしかにここで隠していても意味が無い気がする。

 相談が終わり松本さんの方を向く。

「実は話したいのは僕の方なんだ」

 隠さずストレートに言う。ここまで来たら勢いでなんとかしたい。僕の顔は真っ赤になっている気がする。

「へえ、崎川くんなんだ、へえー」

 松本さんはどう反応していいかわからないような顔をしていた。

「だから頼む松本さん。この一週間以上経っても好きな子と話せていないかわいそうな崎川に救いの手を」

「好きじゃないって。ちょっと話してみたいだけなんだって」

「うーん、いいけど崎川くん話に行くにしても何話すのか決まってるの?」

 まさか何も考えているわけはあるまいといったような顔で見てくる。

「え?」

「いきなり言っても困っちゃうだけじゃないかな。どこから来たとかそういうのは転校初日ならまだしも今さら聞くわけにもいかないし」

 そういえばそうだった。ずっと話すことを目的としていたけど、内容は一切考えてなかった。

「えーっと、自己紹介とか……あとはずっと話してみたかったとか、綺麗ですねとか」

「崎川それは告白してるようにしか聞こえないんだけど大丈夫か?いきなりすぎて引かれるかもしれないぞ」

「崎川くんさすがにそれは早まりすぎだよ。向こうもビックリしちゃうよ」

 二人が止めてくる。たしかに今のでは告白しに行ったようなもんだ。危なかった。

「どうしよう。何も思いつかないんだけど」

「よし、松本さんさっきの話は無かったことに」

 川井があっさり諦める。

「そうだね……。さすがにこれで話に行くのは無理があるかなあ」

 まさか、こんな課題が出てくるとは思わなかった。しばらくはどういう話をするか考えなくちゃいけないのか。

「どういうことを話せばいいのかな?今は話に行っても不自然になるようにしか思えないよ」

 挙動不審なやつと思われるに違いない。

「これはきっかけが必要だな」

「きっかけ?」

 そこでチャイムが鳴った。詳しい話は放課後ということになった。

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